人財への投資&コスト最適化
事例に見る「オペレータ支援」施策
Part.1 <提言>
脱・人海戦術こそが次世代センターの最適解
全プロセスを効率化するIT投資の“視点”
人手不足と自動化の副産物である“対応難度”の向上──現場の負荷は、際限なく重くなっている。離職増による悪循環を止めるためにも、オペレータの業務支援は欠かせない。とくに必要なのが、業務の負荷軽減を目的としたIT投資だ。「問い合わせ内容を把握」「ナレッジを検索」「分かりやすく伝える」「応対履歴を残す」など、一連の業務に自動化できるプロセスは数多くある。また、ストレスを軽減するためのITも存在する。
マルチチャネル化や「サブスクリプション」に代表される提供サービス/プロダクトのデリバリーモデルの転換によって、オペレータの業務は急激に高度化している。(1)知識を覚える、(2)顧客の意図を汲む、(3)解決策を提示する、(4)応対履歴を的確に残す── 一連のオペレータ業務はすべて難易度が上がっている。業務負荷軽減を軽視していては、採用難時代を乗り切ることは不可能だ。
オペレータの業務内容は、AIに代替、あるいはAIで支援する必要がある(図1)。
例えば、生成AIによって、着信後に顧客の発話内容を要約しコールリーズンを特定する仕組みがある。さらに、特定したコールリーズンに対し、解決策を探す──ナレッジ検索も、AIが代替するセンターが増えている。AI活用まで踏み込めなくても、社内に散在するナレッジを集約、容易に検索できる仕組みを構築するだけでオペレータの業務負荷軽減は実現できる。
複雑な内容を顧客にわかりやすく伝える力も、ノーコードで管理しやすいスクリプト管理ツールを活用しフォローする事例がある。
オペレータにとって意外とハードルが高いのが応対履歴の入力だ。現在、生成AIに要約文を作らせる動きが急激に活発化している。
従来、コールセンターは労働集約型の職場であるがゆえ、あらゆる課題をマンパワーで乗り越えようとする傾向が強かった。しかし、AIをはじめテクノロジーに置き換えることで、負荷が減り、ミスもなくなる。オペレータの業務をITで補うことは、人手不足時代に欠かせない施策だ。
図1 コール対応プロセス上でのデジタルツールを活用した打ち手(例)
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Part.2 <ケーススタディ>
「覚える」「書く」「手を挙げる」を自動化
オペレータの業務負荷軽減を図る5社の挑戦
Part.2では、返信文の作成支援や応対内容の要約といったオペレーションの省力化や、スクリプトやナレッジの提示で“詰め込み型”の人材育成からの脱却、SVに対する手挙げをデジタル化し心理負荷を軽減するなど、きめ細やかなオペレータの業務支援を実践する5社の取り組みを検証する。生成AIの活用やツールの開発、異業種向けツールの活用など、アプローチは多種多様だ。
CASE STUDY 1:ニッセン
返信文のテンプレート管理を部内で徹底
対応工数削減でAHT3割短縮
カタログ通販大手のニッセンは、自社通販サイトに加え、楽天市場やYahoo!ショップングなど外部ECサイトに21店舗を出店。自社通販サイトのメール返信対応はRPAで自動化しているものがあるのに対し、外部ECサイトについてはすべてオペレータが対応。運用ルールや返信ポリシーが異なるうえ、メーラーや基幹システム、受注管理システムなども使い分けなければならなかった。
そこで、オペレータの業務負荷軽減を目的として、カラクリのチャット/メール返信対応支援ツール「KARAKURI assist」を導入。Google Chrome拡張機能として運用でき、あらゆる店舗サイトと連携可能な点が導入の決め手となった。
図2の楽天市場での活用を例示すると、オペレータはテンプレートを呼び出すだけで、最短ワンクリックで返信文を作成可能。結果、1件あたりの平均問い合わせ完了時間が大幅に短縮された。
図2 ECサイトごとに異なる対応を定型文で管理
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CASE STUDY 2:JR西日本カスタマーリレーションズ
生成AIで応対内容の要約を自動化
効率化とVOCの品質向上を実現
JR西日本カスタマーリレーションズは、鉄道を利用する顧客からのさまざまな問い合わせに対応する窓口を約300名のオペレータが担当。問い合わせ対応だけでなく、VOCの活用にも注力、自社サービスの改善に活かしている。
同社は、業務負荷軽減とともに、要約内容の品質向上を図るため、大規模言語AIを活用した要約の自動化に着手(図3)。導入したツールはAIベンダーのいELYZAが提供する大規模言語AI「ELYZA Brain」およびMicrosoftの生成AI「Azure OpenAI」。2023年中に本格運用を開始し、電話・メール要約業務の自動化を実現している。
図3 生成AIを活用した顧客対応業務の高度化
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CASE STUDY 3:スカパー・カスタマーリレーションズ
複雑なフローもスクリプトで管理
「見るだけで話せる」環境を構築
スカパー・カスタマーリレーションズは、セルフサポートの充実を図った結果、オペレータに着信するコールは比較的高難度な内容が集中するようになった。
そこで、スクリプトの管理方法を見直した。同社は、オペレータとSVの双方からの視認性を追求し、トークスクリプト管理ツール「TALKZ」の開発に至った。
活用イメージは図4の通り。ヒアリング項目が、画面の左側に整備され、トークの概要を直感的に把握できる。内容をスクロール形式で追いかけることができ、どこまで話したか迷うことがないように設計。また、「問い合わせの確認」や「特定FAQサイトの参照」など、応対時のポイントを表記することで作業漏れを防ぐことができる。
図4 トークスクリプト作成支援ツール画面例
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CASE STUDY 4:アサイアン
FAQ応対アシスト、端末画面共有──
「新人でも解決できる環境」を確立
携帯電話の端末補償や使い方の有償サポートを請け負うアサイアン。テクニカルサポートはオペレータの経験に依存し、新人の課題解決に時間を要することに頭を悩ませていた。
そこで、オペレータが参照するFAQの活用傾向を分析・レコメンドする応対支援ソリューション「ポラリス+」を開発。音声認識ツールでテキスト化した内容をもとに、端末の状況やヒアリングすべき項目を自動入力。入力情報に基づき、解決策を過去の履歴から解決率が高い順に明示する。
図5 『ポラリス+』の活用例
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CASE STUDY 5:WOWOWコミュニケーションズ
ヘルプを「震え」で感知
手挙げの心理的負担を軽減
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、座席間に設置されるようになったパーティション。WOWOWコミュニケーションズでは、手挙げ対応時にパーティションに遮られ、SVが挙手に気付かずに対応が遅れるケースが多々見られた。
そこで、手挙げの代替手段として、ウェアラブルデバイスを組み合わせたアラートシステム「デジベル」を導入。図6で示す通り、リクエスト内容が書かれたブロックを倒すことで、その内容をSVが装着したリストバンドに通知。対応がスムーズになっただけでなく、オペレータは声を出して呼ぶ必要がなくなったことで、エスカレーション時の精神的負担が軽減された。
図6 「デジベル」の活用方法と、導入前後のエスカレーション方法の変遷
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2024年01月31日 18時11分 公開
2023年11月20日 00時00分 更新
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