国内コンタクトセンターの「現在地」から考える
脱・コスト部門に向けたCX施策
デロイト トーマツ グループ
パートナー
住川 誠史 氏
「コンタクトセンターはコストセンター」という認識は、いまだに根強い。この認識こそが、「イノベーションを阻む大きな要因」と指摘するのが、20年以上、コンタクトセンターやCRM領域のビジネスコンサルタントとして活躍する住川氏だ。現場と経営層の“視点の違い”や“距離”を埋める方法、CX向上を実現する道筋を聞いた。
Profile
住川 誠史 氏(Seishi Sumikawa)
デロイト トーマツ グループ パートナー
複数のコンサルティングファームを経て現職に至る。20年以上従事しているCRMのビジネスコンサルティング業務は、その半数以上がコンタクトセンター関連のプロジェクト。現在はCRM部門のカスタマーエクスペリエンスチームのリーダーとして、CX戦略策定、顧客ロイヤルティ向上、顧客接点トランスフォーメーションなどのプロジェクトを推進している。
──20年間以上におよぶCRMやコンタクトセンターのコンサルティング経験から、運営企業、ITベンダー、BPOベンダーにとっての“現状と課題”を整理してください。
住川 運営企業の課題をまとめると、コストセンターという位置づけから脱却できないので、投資がなかなか認められない、その結果、新しいITソリューション分野の導入に際するスピード感が不足している──と見ています。ITベンダーに関しては、新しいソリューションは続々と開発、展開してはいるものの、パッチワーク的な提案・導入が目立ち、顧客接点としてのトータル設計ができていないこと。BPOベンダーは、最前線でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できる立場でありながら、従来型の「1人あたりいくら」という人工(にんく)型ビジネスに終始し、結果的に労働集約型ビジネスから脱出できないという点が挙げられます。
──すべての課題の根源が、経営者にコスト部門であるという認識が強すぎるということにありそうですね。
住川 経営、現場マネジメント、現場のスタッフといったレイヤー間で明らかな意識の乖離を感じます。「カスタマーエクスペリエンス(CX)向上」という目標は、すべてのレイヤーにおいて正しい方向性として認められていますが、コンタクトセンター内ではチャネル単位での取り組みに終始してしまいがちです。サービス全体の価値ではなく、例えば応答率の良し悪しで右往左往してしまう。結果、なかなか成果が出ずに経営貢献を証明できない状態が続きます。また、経営側もCX向上の必要性は理解してはいるものの、現場が報告してくるKPIに関心を持たないケースが散見されます。これは、経験者以外にはなかなか理解してもらえない、コンタクトセンター独自の世界観があるためです。例えばAHT(平均対応時間)など、一般には使わない用語が頻ぱんに飛び交い、外部と共通理解が深まりにくい状況が長い間、続いています。
──課題が巨大すぎて、なかなか解消が難しいと思われます。
住川 ただ、コロナ以前を含めたここ5〜6年間でCXや顧客エンゲージメントの重要性は急速に浸透してきていると感じます。素晴らしい体験がロイヤルティを高め、不快な体験は下げるという認識を現場も経営も共有しつつあるので、「CX向上」をさらに共通認識とするような活動が必要だと感じています。
(聞き手・生嶋彩奈)
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2024年01月31日 18時11分 公開
2022年02月20日 00時00分 更新