脱・属人化がもたらす
チャット対応の“理想形”
Part.1 <現状と課題>
CXと生産性を両立する
ルールとKPIに基づく「組織対応術」
リクエストが急増すれば窓口を非表示にすればいい──こうした“アバウトな運営”も目立つ有人チャット。結果、リアルタイム性が極めて高いチャネルにも関わらず電話ほどの科学的な運営が実践されず、品質も生産性も属人的になりやすいという課題が浮上している。「CX視点で、無駄のない理想のチャット対応」を実践するポイントをまとめる。
長らく、企業と顧客のコミュニケーション手段の中心だった電話(有人対応)は、その存在感を徐々に失いつつある。今や日常のコミュニケーション手段は、公私問わずテキストが主流になりつつある。家族や友人とはLINEやInstagramのメッセンジャー、仕事関係ではSlackという生活者は多いはずだ。
企業の顧客接点でも、従来のメール/問い合わせフォーム対応はもちろん、WebチャットやLINE窓口を設けるケースが増えている。編集部が毎年、実施している「コールセンター実態調査」では、2022年の調査で「(コールセンターで)有人チャット対応している」という回答は30.7%。2017年は16.2%だったため、この5年間でほぼ倍増した(図1)。
高い顧客満足とともに、メリットとして期待される向きが強いのが「1対n」の対応による生産性の高さだ。しかし、運用次第では必ずしも期待通りの効果が出ないことも判明している。
LINEを含めて、今後、処理件数の増加がほぼ確実なチャネルだけに、品質、生産性の両面で必要不可欠なポイントとなるのが、「いかに属人的な対応から組織対応に脱却するか」である。つまり、早急にルールや体制づくりに着手すべきチャネルといえる。事例企業の取り組みなどをベースにそのポイントをまとめる。
図1 チャット対応は本当に生産性が高いのか?
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Part.2 <ケーススタディ>
導線の見直しからインサイドセールスまで
トライ&エラーで最適化目指す4社の取り組み
チャット対応は、数々のクラウドサービスが存在するうえに、「混んだら窓口を閉じればいい」という手軽さもあって、「とりあえず始める」ことが比較的容易なチャネルだ。それだけに導線、ナレッジ(FAQやテンプレート)、他のチャネルとの連携ルール、応対品質を平準化するための仕組みなど、組織対応の成熟度が低い。BtoB、BtoCそれぞれにおける「組織対応」のケーススタディから、生産性や品質に対するアプローチ術を検証する。
CASE STUDY 1:ベネッセコーポレーション
80種類のテンプレート、デュアルモニターの活用
LINEの「1対3」対応にミス防止を徹底
・電話、LINE(チャットボット、有人チャット)、メール、FAQなどを用意し、ユーザーが問い合わせる手段を選択できる体制を準備
・メッセージでは、LINEならではの親しみやすさを出すため、会話“口調”やスタンプを活用
CASE STUDY 2:ソニー銀行
チャット対応の全件対象に自動品質評価
チーム力を高めるクオリティマネジメント術
・月2000件のチャットによる問い合わせに、約2名での対応が可能な生産性の高さ
・自動応対品質評価をチャットにも採用。応対品質を向上させ、他社との差別化を図る
図2 電話とチャットの品質評価項目の比較
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CASE STUDY 3:STORES
コンタクトリーズンとKPI分析を徹底
「CX」重視のチャネル設計で高い生産性を実現
・顧客がサービスを利用するカスタマージャーニーを描き、プロセスごとに最適なチャネルを提供
・チャットボットまたはFAQで、ほぼ自己解決が可能な環境を整備。しかし、解約防止とオンボーディングのカスタマーサクセス効果を考慮し、有人への導線もユーザーが分かりやすい場所に配置
CASE STUDY 4:ランサーズ
サポート&サクセス業務にフル活用
チャットでの「インサイドセールス」を試行
・問い合わせ内容を初期の段階から、カスタマーサポートとカスタマーサクセスのそれぞれの部門に振り分けて応対
・カスタマサクセス部門では、インサイドセールスへのチャット活用を開始。サービスを検索しているユーザーに対し、サイト上に設置しているチャットを通じてメッセージを送信
2024年01月31日 18時11分 公開
2023年08月20日 00時00分 更新
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