2023年5月号 <インタビュー>

パルコ 安藤 彩子 氏

安藤 彩子 氏

「うちのCRM」でブランド価値を高める
“分断しない物語”を紡ぐデータ活用の要諦

パルコ
デジタル推進部 部長
安藤 彩子 氏

CRMを見直す動きが加速している。データから“顧客”を知り、長期的な関係を築くためには、「自社の戦略に基づいた“うちのCRM”を定義することが必要」と、CRMプランナーの安藤彩子氏は強調。現場が目的を見失わず、LTVを向上させるには、データを分断させないこと、目標から逆算して施策を確認することがポイントだ。

Profile

安藤 彩子 氏(Ayako Ando)

パルコ デジタル推進部 部長 代表弁護士

化粧品やアパレルなどのメーカー、小売企業でCRM戦略の策定をはじめ、ロイヤルティプログラムの構築、顧客コミュニケーションプランニング、顧客データ分析などを経験。2018年にパルコに入社し、現在はデジタル推進部部長として、デジタルとCXを掛け合わせたプロジェクトを統括。副業ではCRMプランナーとしても活動。

──データ活用の技術が急速に発展するなか、CRMに注力する企業が増えています。約15年前からCRMに関わる安藤さんの経験を踏まえて、これまでの潮流の変化をお聞かせください。

安藤 パルコに入社する前は、化粧品メーカーやセレクトショップを運営するアパレル企業などの小売り企業に在籍していました。営業という立場で商流を見るなかで、マーケティングが十分に機能していれば、定価販売期間に値下げをしたり、急な販売促進企画の実施といった現場の負荷が軽減されると考え、マーケティングへと転身しました。当初は販売促進業務に携わり、ポイントカードサービスを担当したのが2008年ごろです。当時、ポイントカードの入会は紙ベースでした。また、ポイントを使って、次回の購入につなげることのみが主な目的でした。それが、個人情報保護法の施行もあり、デジタルで管理するWeb入会へ転換し、CRM領域への活用に発展していきました。

──ポイントカードのデジタル化は、マーケティングにどのような影響をおよぼしたのでしょうか。

安藤 顧客データや、購買履歴といった各種データとの連携と活用が、容易になりました。その一方、顧客とのコミュニケーション手段は、当時はまだメールとDMくらいしかありませんでした。顧客セグメントの手法も、購入商品や購買単価、購買時期などで分類する程度と、活用範囲は限定されていました。

 そのころ、ある機関と共同でデータ分析を行うことになり、分析について学ぶ機会を得ました。データサイエンティストとまではいきませんが、自らデータ分析ができるようになり、取得した顧客データから、メインブランドの商品を定価かつ高頻度に購入する「高ロイヤルティ」、セカンドラインなど手ごろな商品を購入する「低ロイヤルティ」、主に値下げ商品を購入する「バーゲンハンター」の、3つのロイヤルティ・セグメントを発見しました。それぞれの特性に合わせたメールを送る施策を実施し、さらに分析を続けると、バーゲンハンターが高ロイヤルティになり得る可能性が見えてきました。バーゲンハンターは、セール価格で購入しているだけで“メインブランドへのロイヤルティは高い”との仮説を立て、新製品を販売するタイミングでメールを送るなど、“メインブランドを買いたい気持ち”の醸成を図りました。その結果、高ロイヤルティへと顧客の変容を図ることができました。

(聞き手・荒木 世理子)
続きは本誌をご覧ください

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年04月20日 00時00分 更新

CRM

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