千客万来 百鬼夜行 第20回

2026年9月号 <千客万来 百鬼夜行>

多和田 元

コラム

第20回

“解決”を求めてさまよった休日

 やっと自宅に帰れた。しかし調理器具は、2階に退避させた段ボールの「山」の中だから、当初は毎食コンビニ弁当。休日になって「山」を1メートルほど捜索し、「遭難」していた電子レンジを「下山」させた。

 テレビも見つけたのだが、つないでも契約しているインターネットTVが映らない。インターネット接続はできるし、メニュー画面も表示されるのに、なぜかTV番組だけが不調。取り外すまでは正常だったし、機器も新しい。サイトにあるFAQで修復をいろいろと試みたが解決せず、問い合わせることになった(ここからスタート)。

 最近のコンタクトセンターの多くで、一次対応はWebサイト上にある自動応答チャネルだ。電話窓口の表記がないところも多い。だが、AIチャットにいくら聞いても、サイトのFAQ以上の内容は出てこない。すべて試したうえで問い合わせているから飛ばしたいところだが、やむなく最後まで進み、電話案内を探した(30分経過)。

 ここで問題になったのは、IDとパスワードがわからないことだ。もちろん保管してあるのだが、退避した段ボールの中なので、すぐには探し出せない。やむなく「IDが不明な場合」に進んだが、自動応答の折り返し電話予約も、電話番号の入力時にエラーになる。そのたびに最初からやり直したが、再び、はねつけられた(110分経過)。

 諦めかけ、終了間際のアンケートが終わったところで、ようやく有人チャットにたどり着いた。再び状況を最初から説明し、IDが不明な場合の電話予約もうまく機能しなかったと訴えて、ようやく契約を確認し、ネットワーク接続を調査してもらえた。接続に異常はなく、「業者にTVチューナーを交換してもらってほしい」と言われた。「IDが不明でも交換可能ですか?」と尋ねると、大丈夫だと言う(150分経過)。

 チューナーを扱う業者は通信機器メーカーで、Webサイトにはプロバイダーとは異なる自社IDを入力させる画面が出た。だが、登録した覚えがない。またもFAQをさまよい、出てきた連絡先を次々と試して、電話窓口にたどり着いた(180分経過)。

 やれやれと思ったら、オペレータに自社IDが分からないなら対応できないと拒絶された。「では、なぜ登録せずに利用できたのですか?」と質問して、ようやくID登録がない場合もあるとの回答があり、「その場合はネットから」とのこと(210分経過)。

 再びWebサイトをさまよい、個人情報を入力すれば、ショートメールに仮認証番号が届くと案内された。だが、いくら待っても、何度繰り返しても、メールが届かない。ここで、さすがに力尽きた(280分経過)。

 サイト誘導も、FAQも、AIチャットも、本来は顧客の利便性のためのものだ。だが、スクリプトが企業側の想定や都合に偏っている場合、顧客にストレスを与える。ニーズをくみ取りにくいし、サービスも細やかさに欠ける。途中の有人チャットでの「それはお困りでしょう」の一言に、どれほど気持ちが救われたことか。有人窓口の大切さを痛感した。しかも、こちらが断念したのだから、今回はクレーム数にカウントすらされなかっただろう。

 貴重な休日の午後を返せ、とつぶやいた。

PROFILE
多和田 元
Receptech代表。報道記者として取材・編集部門を経て、コンタクトセンター部門へ。オペレータ、SV業務と同時にシステムも担当。現場経験を生かした新しいシステムの構築や、カスタマーハラスメント対策などに長年取り組んでいる。

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会員限定2026年08月20日 00時00分 公開

2026年08月20日 00時00分 更新

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