本格運用後、AIが一次対応することで受電率は100%に改善した。件数にして月間平均1万6400件強の着信を受電。AIによる対応完結率は45.5%だ。
この結果、オペレータは場所特定が難しい依頼、問い合わせ、クレーム、例外対応など、人間が担うべき業務に集中できるようになった。
一方で、課題も明確になっている。2025年11月時点では、応答はしたものの通話切断率が28.6%あった。原因は、AI音声の不自然さ、固有名詞や難読地名の聞き取り精度など。同社は、前記したように国産AI音声モデルであるVoiceCoreの検証を実施。ブラインドテストでは、話し出しやすさの支持率が既存モデル(Gemini)の25%に対し、VoiceCoreは42%。固有名詞の発音や人間らしさの面でも改善が確認されている。
ただし、本番環境への投入には至っていない。クラウド環境での安定性確保や採算面が壁になっている。AI活用は「技術的にできるか」だけではなく、「事業として継続できるか」が問われる段階といえそうだ。
また、AHT(平均対応時間)は98秒で、有人対応とあまり差はない。「当初はかなり短い仕様を目指しましたが、現場のフィードバックを受けた結果、確認事項を増やしました。もっとも避けたいのはお客様に迷惑をかけるトラブル。ドライバーの収入機会を失うことにもつながりかねないので、安全を重視しています」(熊谷氏)
地方の移動手段の確保は、高齢化が著しい日本における大きな社会課題のひとつだ。免許返納後の移動手段としてタクシーの重要性が高まる一方、小規模なタクシー会社では、大きな設備投資もできず、かつ人的リソースも逼迫している。「社長自ら電話に応対している事業者も多い」(熊谷氏)という。
また、高齢者の多くにとっては、アプリ操作は正直、難しい。主流である電話を起点とした配車をAIで支援できれば、地域交通の維持にもつながるだろう。もっとも、横展開は簡単ではない。配車には“土地勘”が必要であり、地域ごとに独特の呼び方の地名、そして文化が異なる。同社でも、maidoを外販する可能性についてはかなり慎重だ。
maidoの本質は、「人をAIに置き換える」ことではない。限られた人員で、より多くの移動需要に応えるための業務再設計にあるといえる。タクシー配車というレガシーな現場に、AIが実利をもたらし始めている。
2026年07月21日 12時00分 公開
2026年07月21日 12時00分 更新
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