市界良好 第174回

2026年10月号 <市界良好>

秋山紀郎

コラム

第174回

ミスを繰り返さない

 配送業者と思しき軽自動車の後部に山ほど積まれた荷物を見ると、暑い中、時間に追われながらも、安全運転で配達するドライバーの苦労が想像できる。しかし、先日のこと、私宛の大切な荷物が玄関先に「勝手に置き配」されていた。住宅街での置き配は、不在を周囲に知らせるようなものだから防犯上良くないと私は考えているので、置き配指定をしていない。今回は、在宅していたにもかかわらず、インターフォンを押されることもなく置き配されてしまった。たまたま玄関先に置かれた荷物にすぐに気が付いたので、盗難されることもなく、ことなきを得た。ちなみに置き配指定をしたのであれば、盗難された場合の責任は利用者にある。利用者が指定していないにもかかわらず置き配により盗難された場合は、発送元の業者または配送会社の責任となる。

 今回、勝手に置き配されたことについて、通販サイトのカスタマーセンターにチャットでクレームを入れると「配送業者に厳しく指導します。地域を担当するドライバーに周知します」という回答が来た。しかし、それでは納得できなかった。同じようなことがこれまでに5回以上起きており、いつも同じ回答だからである。「不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」とも謝罪されたが、私が不快になったかどうかは論点ではない。恐らくテンプレートを駆使して返信しているのだろう。なおのこと、私のモヤモヤは収まらない。ここまで同じミスが繰り返されるということは、これまでの対策では不十分であることは明らかだ。もしかすると配送業者にまったく指導していないのではないか。その場しのぎの回答をしているのではないかとすら感じてきた。

 ネットを検索してみると、同じような置き配に関するトラブルは少なくないようである。宅配ボックスの普及率も高まっているが、それが解決策ではない。このような目に遭わないよう、置き配NGという玄関先に貼るステッカーが通販サイトで売られているのは、何だか面白い。以前、宅配手渡しには追加料金が発生するという報道がされたこともあるが、最近は、そのような議論や報道は見られない。今回のような事象を単に配送業者の問題だと片づけず、根本原因の特定と、カスタマーセンターとその先まで含めた再発防止策など改善策の実効性を高める活動が重要である。

 ミスを繰り返さないためには、仕組みやシステムなどハード面での再発防止策は理想だが、ソフト面での対策は容易ではない。業務マニュアルに注意事項を追加し、教育を繰り返したとしても、その効果には限界がある。また、確認手順を増やすだけでは、やがて形骸化し、十分な再発防止につながらない。担当している仕事の重要性を理解し、ミスをしたときに起きることに想像力を働かせる必要がある。つまり、人間性を磨かなければソフト面の対策にならない。

 人とAIの役割分担が議論されている。コンタクトセンターなどの現場において、画一的な対応に終始するのであれば、顧客対応はAIに任せたほうがよい。人が対応するのであれば、顧客の声を真摯に受け止め、業務やサービスの改善につなげるところまで実行してこそ、その価値がある。

PROFILE
秋山紀郎(あきやま・としお)
CXMコンサルティング 代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

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会員限定2026年09月20日 00時00分 公開

2026年09月20日 00時00分 更新

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