
タクシーは、仕事に観光にと、利用される目的はさまざま。
日本交通 新木場営業所でタクシーに乗務する中川大輔さんは、その役割について、「タクシーは、社会インフラのひとつだと思っています。ですから、頼っていただける存在でありたい。その気持ちを胸に仕事をしています」と話す。
中川さんは約1年半前、この仕事を選んだ。「(同営業所の)友人に勧められ、接客の好きな自分に向いている」と思ったと言う。それまでの仕事でも、運転する機会は多く、道にも詳しかった。
しかし、タクシーは“走れればいい”仕事ではない。「安全と接遇、その両方が求められます。どちらも、お客様に向き合うことにつながると思います」。
だからこそ、営業所を出る前の車両点検をとても慎重に行う。そして、乗車時の大切な仕事道具(写真左上)も携帯する。接遇の高さと、運転技術の確かさを評価する、同社の品質グランプリ受賞者のみがつけられる特別な名札、必要なときにレシートをきれいに切るためのハサミ、何度も読み込んでいる乗務員マニュアルなど。「準備ができていると、予期せぬ事態が起きても、落ち着いて対応できるものです」と中川さん。
中川さんは接客をはじめる際に、乗車してきた客の様子を観察する。
「座席に座り、すぐスマートフォンを触る方は、静かに過ごしたいのかもしれない。こちらに話しかけてくださる方なら、会話を広げてみます。最初の数分で“車内の空気”が決まりますね」。
中川さんにも、接遇の難しさを痛感した出来事がある。
乗務員を始めて少し経ったころ、ある利用客から「道順が違う」と強めの指摘を受けた。その客がいつも利用しているルートと、異なる道順を通ったことが原因だった。
「目的地までの行き方を確認した際、ルート上にある通りの名前を伺いました。しかし、その方は通りの名前まではご存知なく、そこで、私の思う最適なルートを通りました。しかし、道順がいつもとは違っていたため、不安を与えてしまったようです」
この出来事をきっかけに、中川さんは、確認の仕方を改善したという。「建物といった目印をお聞きすることでも、道順は確認できると反省しました」。
さらに、確認の仕方も工夫する。
「お客様によっては、説明を面倒に感じる方もいらっしゃいます。ですから、“ご面倒おかけしますが”といったクッション言葉を添えます。また、一度お伺いしてから、少し間を置いたりもします」
“少し間を置いて聞く”方法を聞いてみたところ、「信号を2つ分ほど走ってから、もう1度よりやわらかい言い回しでお尋ねしてみます」と教えてくれた。
中川さんは、接客の高さだけでなく、安全運転もタクシーに必要な要素だと考える。
「酔いやすい方もいます。急ブレーキやカクンとした止まり方は、お客様の不安につながります。“スーっと静かに止まる”、それだけでも印象は変わります」。そして、乗客に安心してもらうため、“怖くない運転”を心がける。急ぐ必要がある時は、「少し急ぎますね」と伝えて安心してもらう。
こうした積み重ねは、乗車後のアンケートに表れてくる。タクシー配車アプリには、高評価やコメントが残されることも多く、励みになっているという。「『言うことなし』と書かれていると、やっぱりうれしいですね」。
そんな中川さんの目標は、条件をクリアした優良乗務員のみが運転できる「ゴールドタクシー」(写真右上)へのステップアップだ。安全や品質が認められた“選ばれた乗務員”の証でもある。さらに、日本交通のEDS(エキスパート・ドライバー・サービス)®の中の、子どもの送迎を担う“キッズタクシー”にも挑戦したいそうだ。「私に子どもがいて、子どもが好きなこともありますが、仕事の幅も広げたいです」と笑顔を見せる。
中川さんは今日も、タクシーという“ライフライン”を走らせ、人々の暮らしを支えている。

2026年03月20日 00時00分 公開
2026年03月20日 00時00分 更新
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