コールセンター新入社員の心を育てる 6つのヒント 第4回

2026年3月号 <コールセンター新入社員の心を育てる 6つのヒント>

松下公子

実践編

第4回

接客の質は「商品理解」×「企業マインド」
“自分の言葉”で語れる力を育てよう

本連載ではこれまで、第1回で「マインドセットの必要性」、第2回で「自己肯定感の育て方」、第3回では「クレーム対応における心の構え」を扱ってきた。第4回では、それらすべての土台となる「自社のビジネス・サービスをどう現場に落とし込むか」というテーマを掘り下げる。オペレータが“自分の言葉”で話せるようになるアプローチを解説する。

PROFILE
STORY 代表取締役
STORYアナウンススクール 代表
松下公子
1973年茨城県鹿嶋市生まれ。佐渡島のケーブルテレビ、愛媛朝日テレビ、ラジオNIKKEI、メーテレと4局でアナウンサーを経験。2019年、STORYを設立。たった1人、たった1社に選ばれる話し方、伝え方を指導している。

 接客の質を左右するのは、商品理解と企業マインドです。「対応は丁寧なのに、どこか機械的に感じる」「マニュアル通りではあるが、心に残らない」。コールセンターや接客の現場で、こうした違和感を覚えたことはないでしょうか。

 差を生んでいるのは、話し方の上手・下手ではありません。多くの場合、その原因は自社のビジネスやサービスが、現場で“自分事”として落とし込まれていないことにあります。

 接客の質を左右するのは、商品理解×企業マインド、この掛け算です。

 商品知識が豊富でも、企業として大切にしている価値観が共有されていなければ、対応は人によってバラつきます。逆に、理念や想いだけを語っても、商品やサービスへの理解が浅ければ、言葉に説得力は生まれません。顧客は、オペレータの言葉の端々から、「この人は本当に分かって話しているか」を敏感に感じ取っています。だからこそ必要なのが、自分の言葉で語れる状態をつくることです。

マニュアル暗記では深まらない

 多くの現場では、「この場合は、この言い方」「この質問には、このフレーズ」といったマニュアル暗記に力が注がれがちです。

 もちろん、一定の品質を保つためにマニュアルは必要です。しかし、想定外の質問や感情を伴う場面に直面した瞬間、暗記した言葉だけでは対応しきれなくなります。一方で、「なぜこのサービスが生まれたのか」「誰の、どんな困りごとを解決したいのか」「自社ならではの価値は何か」など背景まで理解している人は、言葉が多少変わっても軸がブレません。

 「何を言うか」ではなく「なぜそれを言うのか」。ここまで落とし込めて初めて、接客は血の通ったものになります。

 私自身、新人アナウンサーとして現場に立ち始めた頃は、「正確に話すこと」「原稿通りに伝えること」に必死でした。ところが、取材を重ねる中で、ある違和感を覚えたのです。同じ内容を伝えているはずなのに、「伝わるとき」と「伝わらないとき」がある。その違いは、話し方や声の出し方ではありませんでした。どこまで、その内容を自分自身が理解し、納得しているかだったのです。取材対象の背景や想いを深く知り、「なぜこの話を今、届けたいのか」が自分の中で腹落ちした瞬間、言葉は自然と変わりました。この経験は、現在の指導の現場でも強く生きています。

 コールセンターの研修においても、商品説明を完璧に暗記している新人より、「このサービスがあって助かったお客様のエピソード」を自分の言葉で語れる新人のほうが、圧倒的に信頼を得やすいと指導しています。

 つまり、接客の質を高めているのは、話し方の技術ではなく、サービスをどこまで自分事として理解しているかという点なのです。

 さらに言えば、目の前で起きている問題を「自分事」として捉え、状況に応じて柔軟かつ適切に接客できるようになることにあります。

 しかし、現場の一人ひとりに「自分の言葉で語れ」と求めるだけでは、限界があります。その前提として必要なのが、企業として「私たちは何者で、何を届けたいのか」という自己紹介が、現場まできちんと共有されていることです。

 商品説明や対応フローを教えるだけでは、この土台はつくれません。

現場を迷わせない「企業の自己紹介」

 前回の連載では、クレーム対応において「感情をどう受け止めるか」「自分を守りながら対応するとはどういうことか」を扱いました。

 実はこの視点は、今回のテーマとも深くつながっています。企業として、「どんな存在でありたいのか」「何を大切にしているのか」「どんな価値をお客様に届けたいのか」。こうした“企業の自己紹介”が曖昧なままだと、現場は常に「正解が分からない状態」に置かれます()。結果、「ここまで踏み込んでいいのだろうか」「この対応はやりすぎではないか」と、判断に迷いが生じてしまいます。

図 自分の言葉で語れる接客が生まれる仕組み
図 自分の言葉で語れる接客が生まれる仕組み

 ラグジュアリーな接客を目指すのか。おせっかいなほど親身な対応を良しとするのか。お客様と長く付き合う“友達のような関係”を大切にするのか。

 どのマインドにセットするかは、企業の顧客戦略次第です。正解は一つではありません。だからこそ、どのようなサービスを目指しているのかを言語化し、研修で落とし込むことが不可欠になります。この軸が共有されていれば、現場は安心して判断できるようになります。

自分の言葉で語れる3ステップ

 スタッフが自分の言葉でサービスを語れるようになるために、有効なのが次の3ステップです。

① サービスの原点を知る
② お客様視点に変換する
③ 体験と言葉を結びつける

 このプロセスを経ることで、マニュアルは「守るもの」から「使いこなすもの」へと変わります。

 マインドセットとは、気持ちの問題ではありません。判断の基準であり、行動の質を左右するものです。企業としての自己紹介が明確になり、自社のビジネスが自分事として理解できたとき、スタッフは初めて、「このお客様には、今、何が必要か」を考えられるようになります。それは同時に、「何を話すか」以前に、「何を聴くべきか」が見えてくる状態でもあります。

 次回は、自社のサービスを本当に理解し、顧客に寄り添える人材を育てるために欠かせない「聴く力」にフォーカスしトレーニング方法を交えてお伝えします。

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会員限定2026年02月20日 00時00分 公開

2026年02月20日 00時00分 更新

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