先週のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」のスタートです。1回目の今回は、2本のニュースを取り上げます。
zapath、Verbexと提携し自由診療クリニック向け音声AIエージェントを開発
Recustomer、Shopifyとの連携機能を大幅強化し、返品・返金業務の完全自動化を加速
昨年(2025年)は「AIエージェント元年」だったと言われている。確かに、従来の生成AIのようなアウトプットに特化したソリューションではなく、「指示に基づいて自律的に稼働する」というソリューションが多数、登場したことは間違いない。しかし、これだけなら従来のRPA(Robotic Process Automation)と大差はないという指摘もある。
AIエージェントは、「複数のシステムをまたいで指示を自動処理する」ことが定義とされている。ここが従来の生成AIやRPAと大きな違いである。

しかし、日本企業のITソリューションは、「データ連携」の面で大きく遅れを取っているという指摘は多い。実際に、コールセンター運営企業にさまざまな質問を投げかけている「コールセンター実態調査」においては、「システム面の課題」について、「他システムとのデータ連携」の回答比率が圧倒的多数を占めている。
コールセンターにおいて顧客対応をAIエージェント化するには、さまざまなシステムとの連携が求められる。顧客データベースとなるCRMと在庫管理、引き当て、エンジニア派遣の場合はそのステータス管理とフィールドサービスシステム、SFA、ときには地図情報の連携を必要とする局面もある。もちろん、回答に必要なFAQなどのナレッジベースとの連携は必須だ。現在は、これらのアプリケーションをオペレータが手動で呼び出しつつ、ときにはコピー&ペーストなどの作業を伴って対応しているのが現状だ。生成AIは、せいぜいやり取りの要約を出力するまでの役割で、その要約結果をCRMデータに蓄積するにも、オペレータがコピー&ペーストしている事例の方が多い。言い換えれば、「AIエージェント化」まではまったく到達していないということだ。
AIエージェント化には、このオペレータの手動部分をいかに自動化できるかがポイントとなるが、一足飛びにチャットボットやボイスボットでここまで到達できる可能性は極めて低い。やはり、「用途を限定したデータ連携」を試行し、テストを重ねていくというのが現実解だろう。
今回、取り上げた2つのニュースは、前者が業種特化型、後者が業務特化型のソリューションの記事で、おそらく、2026年はこうしたソリューションのPoCが相次ぐと推察される。前者の「自由診療クリニック向け」は、医療分野において相当ニッチな領域と思われる。しかし、ここまでニッチになると、いったんAIエージェント化できれば横展開は早いだろう。
より広い業界・業種向けとしてとくに期待したいのは後者の「返品・返金業務」で、これは手続き型の業務の代表格だ。すでに2021年の段階で一部の大手通販会社がボイスボットで返品受付を自動化した事例もある。
ニュースにあるように、ShopifyというEコマースの巨大プラットフォームに連携機能が搭載されることで、事業規模を問わず、この業務に限っては完全自動化できる可能性が高まってきた。ちなみに、これは別に生成AIが搭載された仕組みではなく、AIエージェントとはいえない。しかし、この仕組みと生成AIを活用したチャットボット/ボイスボットなどを組み合わせることができれば、AIエージェント化が期待できる。
相談をさして伴わない手続き対応のAIエージェント化は、いち消費者としても期待したい。つながらない電話、あるいはわかりにくいWebサイトやスマホアプリとの格闘は、カスタマーエクスペリエンスの質を低下させるだけだ。今後、AI検索をはじめ、メガプラットフォーマーが提供するAI機能が便利になればなるほど、各企業が用意する自己解決型の顧客対応も、その品質がより問われることになるだろう。AI検索から先の顧客体験をどう設計するか、CSに関わるマネジメントの手腕が問われる1年になりそうだ。
2026年01月19日 15時58分 公開
2026年01月19日 15時58分 更新