RightTouchは28日、メディア勉強会を開催した。
テーマは「顧客接点のAI化の壁に関するメディア勉強会――なぜAI活用は“運用負荷”で止まるのか」。代表取締役の長崎大都氏、野村修平氏、そして同社ソリューションのユーザーであるT&Dフィナンシャル生命保険の執行役員、賀來邦彦氏が登壇した。
長崎氏は、同社ソリューションを導入しているSBI証券の事例を紹介、自己解決促進の効果を説明した。「コンタクトリーズンごとの振り分け精度を高め、自己解決への誘導を実践。テクニカル系のコンタクトリーズンについては52%が自己解決できている」(長崎氏)という。
一方で、長崎氏は「スマホの操作に不慣れ、苦手な高齢者など、体験格差の解消を図る取り組みが必要」とも指摘したうえで、「(RightTouchは)できない/わからない/難しいの解消を図るソリューションを提供する。とくに生成AIと相性のよいのがカスタマーサポート(コンタクトセンター)」と強調。AI活用促進の基盤となる同社のプラットフォームについて説明した(画面)。
続いて、野村氏と賀來氏が登壇。T&Dフィナンシャル生命保険の取り組み事例を紹介した。
同社はダイレクト系の生保会社。コンタクトセンターには代理店とエンドユーザー(顧客)からの問い合わせが入り、顧客は比較的高齢かつ富裕層が多いという。賀來氏は、「呼量増に対して大量採用でカバーするのは、物理的には可能でもコスト面、教育面でかなり厳しい」と課題について説明。さらに、同社では2028年に主力商材の一斉満期が到来するため、問い合わせが大量に増える可能性が高い。「委託先での大量採用は、根本的な解決に結びつかない」という判断のもと、「AIオペレータを構築する」と方向性を定め、本格導入に踏み切った。
同社のカスタマーサポートにおける課題は、(1)問い合わせ増加×人材確保という構造課題、(2)VOC分析や報告業務が人手依存で属人化・非効率、(3)Web上の情報に顧客がたどり着けない、(4)顧客の声が複数チャネルに分散し、一元的な把握が困難ーーなど(画面)。
これらの課題に対し、FAQ整備、VOC分析基盤の構築、AIオペレータの検証の3方向からアプローチした。とくに注目されるのは、「人を採用しない」という方針を策定したことだ。「人を増やしながらAIオペレータにも着手するとなると、具体性や明確性に欠ける可能性がある」(賀來氏)という判断のもと、計画を進めている。
とはいえ、一気にAIオペレータ化を進めるのではなく、まずは対象範囲を限定(マイナンバー関連ダイヤルでPoCを実施)。精度検証しつつ取り組んだ。
さらに現場のオペレーションにも変化が生じている。とくにVOCの自動分類は、人員を増やすことなく取得できる声を大幅に増やし、効率化に貢献しているという。また、FAQの改善によって自己解決件数も増加している。野村氏は、「AIオペレータについての議論では、どうしても『呼量削減』が目に見える効果として強調されやすいが、(T&Dフィナンシャル生命保険の場合)お客様の体験を損なわないためのテクノロジー活用という点を重視している」とまとめた。
最後のセッションでは、長崎氏が「AIコンタクトセンター化の壁」について、(1)顧客体験(CX)の壁、(2)チューニングの壁、(3)データ管理の壁ーーの3点を挙げた。
長崎氏は、「CXの壁については、海外事例でもAI化でオペレータを大幅に削減した結果、CXが低下して顧客離反が進んだとして再採用に至った事例もある。AI導入が目的化してしまうと同じことが起きる可能性がある。チューニングの壁は、課題発生のたびにプロンプト修正が必要になるので、いたちごっこになりかねない」と説明。データ管理の壁について、長崎氏は「現段階では最も大きな壁と捉えている」と指摘。「コンタクトセンターでも、マニュアルや業務フローの資料が散在しているケースは多い。また、AIが読みやすいデータと人が読みやすいデータは形式が違うので、アップデートに工数がかかる」と具体的な課題を挙げたうえで同社の一気通貫型のソリューション体系について解説した。
同社は、この最大の壁である「データ管理」を実現するナレッジ統合基盤「QANT ナレッジハブ(β)」の提供を開始した。同ソリューションは、ナレッジのデータを一元管理することで、AI・オペレータ・FAQなど用途に合わせて最適な形での表示・活用を可能にし、1つのナレッジを、複数のチャネルで一貫して活用を図る機能を提供。
従来から存在する応対マニュアルや商品マニュアルだけでなく、日々の応対から生まれるデータも蓄積。既存のナレッジをAI向けにも自動でチューニングできるという。AIが顧客ごとに状況を判断、最適な対応を選択する運用をサポートする。
2026年05月11日 09時00分 公開
2026年05月11日 09時00分 更新