コラム
第28回
日本における学校教育や新社会人の入社教育で「挨拶」はとても大切なものだと教えていますが、それが必ずしも普段の生活に活かされていないと、30年の乗務生活で感じることが多々ありました。
搭乗してきたお客さまに対して、「おはようございます」「お帰りなさいませ」と挨拶をしても、まったく言葉を発することなく、黙ったまま乗ってこられる日本人のビジネスマンがなんとも多いことか。
降りるときにも、「ありがとうございました」「行っていらっしゃいませ」と挨拶しても、目を合わせることもなく黙ったまま足早に降りていかれる日本人。
「快適なフライトだったよ。ありがとう」「今日はよく眠れた。いいサービスだったね」そんな一言をいただけると、サービスを提供した側としてはこの上ない喜びを感じ、素敵なお客さまとの出会いに感謝する気持ちが生まれるのですが、残念ながらそういった機会が多いとはいえません。日本人は自分が尽くしたことに対する評価を求めるわりに、自分に尽くされたことには反応しない傾向があります。感謝の気持ちを表現することが苦手で、素直に「ありがとう」という言葉が言えない人が多くいます。
とりわけ嫌な思いをしたのが、ある女性代議士が搭乗されたときのことです。VIPが搭乗なさった場合は、チーフパーサーが搭乗御礼の挨拶に赴くことになっていますが、飛行時間わずか1時間ほどの国内線でしたので、離陸前にその方の席に伺いました。
「○○さま」とお名前を呼び、「本日もご搭乗ありがとうございます」と言葉を続けようと思ったそのとき、彼女は顔も上げずに、手の甲で私を追い払うように「シッ、シッ」とやったのです。
「挨拶なんかいらないわよ。あっち行って!」。そんなふうに言われたような気がして、た
会員限定2025年08月20日 00時00分 公開
2025年08月20日 00時00分 更新