──切電マニュアルを作った背景を教えてください。
恩田 問い合わせは、所要時間や渋滞情報が全体の約7割を占めます。最近は、カーナビなどでも情報は表示されますが、センターの更新頻度は1分単位で、より正確に知ることができます。オペレータに目的地までのルートをたずねると、20秒弱で答えてくれる。さらに、これから渋滞が増える見込みなども教えてもらえるなど、“知る人ぞ知る裏技ツール”として、重宝されています。カーナビより精度の高い同じく1分更新の「mew-ti(ミューティー)」という専用アプリも用意しました。しかし、なかでも職業ドライバーの方は、スマートフォンに登録してある番号から、ハンズフリーで電話をかけるなど、習慣化していると推測しています。
ただし、便利に使っていただく一方で運転中の話し相手にする、工事や事故渋滞へのイライラからの暴言、執拗に罵声を浴びせるなどは、利用目的とは異なるので対策が必要と判断しました。また過去には約7年にわたり、カスハラを続けられ被害届を出したこともあります。
──被害届を出すことになった原因とは。
恩田 きっかけは「工事渋滞予測がはずれた」ことでした。謝罪しても、度を越した回数の電話が入り、「なぜ(予測が)はずれたのかの答えを用意しろ」といった要求、暴言、罵声などが続きました。保全・交通部が対応しましたが、徐々に言動がエスカレート。長時間の電話が深夜におよび、応対にあたった当時の課長が「首を吊るなら足を引っ張ってやる」などの脅迫を受け続け、部長に相談しました。
そこで、同部をはじめ、法務、CS、労務、総務(社屋管理)部門が組織を横断して取り組みはじめました。
──然るべき機関にも相談したのでしょうか。
恩田 顧問弁護士、警察にも相談したところ、逮捕しないと行為は止まらないと見解が一致しました。そのため、被害届(威力業務妨害)を出すことにしました。当時、私も保全・交通部に在籍しており、手続関係のすべてを担当しました。お客様からのクレームに被害届を出すのは、会社としては初めてでした。カスハラという言葉も今ほど認知されていないころと、世間からの評価が気にならなかったわけではありません。しかし、社員を守るために遂行しました。
時間はかかったものの、21年の3月には第1回公判が行われ、即日、有罪判決が出されました。音声記録が残っていたことも有利に働きました。勝訴は、私たちの対応が正しかったことの証明でもあり、その経験に基づく知見やノウハウが、今は安心感や自信に変わっています。
──社員の方からの反響は。
恩田 会社が社員を守る姿勢は感じてもらえたと思います。「今から行く」という脅迫もあったため、守衛の数を増やすなど、目に見える行動でも示していました。当時の課長が、状況を会社に相談してくれたため、対応ができました。そこで、マニュアルを作った現在も、「相談してほしい」と呼びかけています。
この一件を通じて、お客さまセンターは24時間、お客様とつながる唯一の接点であると同時に、社員たちが職務に集中できる防波堤という認知も広がっています。
──今後の方針についてお聞かせください。
恩田 カスハラ対策はこれで終わりではありません。厚生労働省が、企業に対応を義務付けることもあり、さまざまな事例が出てくることでしょう。それも参考にしつつ、対策をブラッシュアップしていきたいです。
(聞き手・荒木世理子)

2025年02月20日 00時00分 公開
2025年02月20日 00時00分 更新
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