ベルシステム24(東京都港区、梶原 浩代表取締役社長執行役員)はコンタクトセンターを運営する企業向けに「AI活用の鍵を握る最新のナレッジ自動生成」をテーマにしたオンラインセミナーを開催、300名を超える視聴者が参加した。セミナーは3セッションで構成され、まず、日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏による基調講演が行われた。
西脇氏は「AIエージェントの現在地と未来」と題し、最先端の生成AI活用トレンドを解説。「従来はコンピュータを使いこなすにはプログラム、スクリプト、コマンドなどを勉強する必要があったが、生成AIならば、コンピュータ側が人間に歩み寄ってくれます。非常に賢く、自然言語で対話できる。ただ、ここで注意したいのは、命令や指示ではなく、“対話”をするということ。生成AIの能力を引き出すには会話力が必須であり、求める回答を1回で引き出そうと思ってはならない」と強調した。
また、「運用する企業のナレッジやデータベースが充実していないと、AIの回答精度は向上しない。情報整備は極めて重要」と説明したうえで、「これまでの生成AIは人間の代わりに検索、分析、資料作など、処理はしても実行まではしてくれなかった。この能力を持つのがAIエージェント。MicrosoftのCopilotは、AIエージェントを作る機能を持つ」と紹介した。
続いて、ベルシステム24 執行役員兼デジタルCX本部長の加藤 寛氏が登壇、同社が昨年11月に発表した、通話データからナレッジベースを自動生成する機能を搭載した、コンタクトセンター向け自動化ソリューション『Hybrid Operation Loop』の具体的な活用方法を紹介した。加藤氏は、「生成AI活用をPoC段階で足踏みする企業が多い。最大の課題はデータの強化と整備」と指摘、同社が2024年6月に開始したユーザー企業参画型のプログラム「生成AI Co-Creation Lab.」で開発したHybrid Operation Loopの機能を解説した。
同社では、生成AIの回答精度を高めるために「KCS(ナレッジ・センター・サービス)」に準拠した構築・運用プロセスを重視。Hybrid Operation Loopを活用することで、「現場の負荷や労力が高い」とされるKCSのプロセスの簡略化も期待できる。生成したナレッジは、高精度なQA(品質管理)施策の実現、高難易度な対応支援、プロアクティブなオペレータ支援の3ステップで実現。生成AIによる自動化とヒューマンチェックを組み合わせることで、ハルシネーションを最少化したオートループが可能となる。
最後のセッションは、オムロンの森田尚起氏、コールセンタージャパン編集長の矢島竜児を加えた4氏によるパネルディスカッションが行われ、生成AI活用によるコンタクトセンターの未来像について議論した。モデレーターの矢島は「コールセンター白書」のデータを引用、ナレッジ、とくにFAQ活用における現状と生成AI活用の課題を指摘。とくにFAQが自己解決できるほどの精度に至っていない、生成AIによる作成自動化もまださほど進んでいない点を説明した。
西脇氏は、「生成AIを十分に活用するためのナレッジや仕組みがまだ足りていないのでは。一方で、FAQ自動作成へのニーズは、やや落ち着いてきたことでシステム構築やデータ整備の方向性が定まり、これから加速するのでは」と推察。また森田氏は「顧客の問いに正確に答えるFAQやコンテンツの重要性」を強調しつつ、オムロンの取り組みを紹介した。同社センターには、年間問い合わせ数が25万件、提供しているプロダクトの型式も20万件を超え、現場でのナレッジ強化は困難を極めた。コールリーズンを分析し、一問一答が可能で、問い合わせ全体の13%を占めるFAQを強化するというスモールスタートで改善に着手。範囲を広げる計画もある。
最大のボトルネックとされるハルシネーションについて、西脇氏は「生成した回答に根拠を示せるようになったため、ある程度は会話力で対処可能」と示唆。森田氏は、「対話を重ねて回答を導く生成AIの活用とナレッジの精度を上げるための工夫で回答精度の向上に期待したい」と語った。
2025年02月14日 16時42分 公開
2025年02月14日 16時42分 更新
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