Part.1 <市場トレンド>
「電話で話したい顧客をWebに誘導したり、チャットボットを使わせるのは無理」という指摘は根強い。また、チャットボットは、高齢者にとってはハードルが高いのも事実。「ボイスボット」の注目度が高い理由もここにある。確かに注文・予約・資料請求など簡易な手続き業務ならば、有人対応以上の顧客体験が提供できる可能性は高い。最近ではチャットボットや生成AIと連携、Web上でアバターと会話するなど、新たなボットの形も見えてきた。
編集部が毎年実施しているコールセンター実態調査によると「ボイスボット(音声ボット)」を導入している企業は2023年で8.2%。しかし、「今後導入予定のITソリューション」としては22.6%が選択。最多は音声認識システムなので、音声関連ソリューションへの投資意欲はかなり高いと推察される。
人手不足による業務効率化や営業時間外対応などを目的に、電話対応を自動化したいというニーズは高い。コロナ禍で時短運営を開始した企業が増え、終息した現在もそのままという企業も多く、短縮分をボイスボットで補う狙いもあるようだ。ボイスボットを提供するベンダー各社も「昨年と比べて引き合いは非常に多い」と口を揃えており、中には1年間で数十社の導入実績を上げているベンダーもある。
利用用件は注文や資料請求などの簡易な手続き系が大半を占める。図は、2023年初旬から2024年春にかけてのボイスボットの導入事例をピックアップしたものだ。ごみの分別方法や収集日に関する問い合わせ対応、賃貸物件入居者のサポート、中古車の概算買取価格の自動案内、引っ越し成約済み顧客からの問い合わせの一次受付など、やはり用件が明確となっている用途が多い。
また、アウトバウンドでの利用も徐々に増えている。例えば督促業務は、電話をかける側もかけられる側もストレスになる。顧客にとっては、人間よりもボットの方が安心して話しやすい。Part2で紹介するNECパーソナルコンピュータは、修理見積金額をアウトバウンドで伝えて修理を行うか否かを顧客に確認している。有人オペレータの時代は、顧客が想定した見積金額より高い場合は応対が長引きオペレータが消耗するケースがあったが、ボイスボットであればそうした課題も解消される。
特集では、事例企業の取り組みから用途が広がるボイスボットの最新動向を紹介するほか、生成AIやチャットボット、アバターなどと連携して進化するボイスボットの未来像についてまとめる。
Part.2 <ケーススタディ>
“使えるボイスボット”の先進事例には、利用顧客層を絞り込んだうえで、顧客の特性に合わせて対話フローをシンプルに設計し、検証・改善を重ねるプロセスを踏むという共通点がある。また、生成AIなどの新しい技術との組み合わせにも大きな可能性がありそうだ。スカパー・カスタマーリレーションズ、IDOM、NECパーソナルコンピュータ、横浜市役所、楽天証券の事例から構築・運用のポイントを検証する。
この2〜3年で企業や自治体での活用が急速に進んでいるボイスボット。用途も、FAQの提示、コールバック受付などの簡易的なものから、予約手続きや変更、照会などデータベース連携が必要なものまで、幅広くなりつつある。Part.2では、利用対象となる顧客の特性を踏まえたコミュニケーション設計や最新技術の活用によって高いCXを実現した5事例を解説する。
シニア利用の多い用件に適用
月間3000件超の自動化に成功
中古車買取価格の案内を自動化
ターゲットは「まだ売らない顧客」
プッシュ操作、テキストで内容確認・修正
「発話で完結」にこだわらない設計
緻密なパターン分類とシナリオ設計
テキスト×ボイスで分かりやすさを追求
“次世代のCX向上施策”の先駆け
「ボイスボット+AIアバター」が示す可能性
2024年05月20日 00時00分 公開
2024年05月20日 00時00分 更新
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