新幹線のカリスマ販売員が説く
「仕事を楽しむ環境作り」の重要性
山形新幹線「つばさ」の車内販売員で、圧倒的な販売力から「カリスマ」と称されメディアにも多数登場した茂木氏。1300名もの販売員指導にもあたった経験から、「成果を生むのは、“お客様の心を考える”があるから。自分の成果を追い求めるところから始めても難しい」と話す茂木氏に自らを成長させた教育と部下の育成について聞いた。
──ご経歴をうかがえますか。
茂木 山形県の新庄駅から東京駅までを結ぶ山形新幹線「つばさ」の車内販売員として、1998年から2012年まで乗車していました。一般的な新幹線は全車両で約1300の座席がありますが、つばさは7両編成、座席数400の小さな新幹線です。私はそこで、ワゴンにお弁当や飲み物、お菓子、お土産品などの商品を積み、車内を歩いて販売する車内販売を行っていました。日常的に他の販売員の3倍の売り上げを出し続け、多い日は7倍の売り上げとなったことなどから、新聞やテレビで取り上げていただくようになりました。のちにJR東日本管内で3名しかいない「チーフインストラクター」の役職につき、東日本全体の後輩育成にもあたりました。今は独立し、全国の営業や販売をはじめ、さまざまな業種の方に講演や研修を行っています。
お客様のために必死に動き
結果として7倍を売り上げる
──どのようにして3〜7倍という売り上げを出せたのでしょうか。
茂木 きっかけとなったあるゴールデンウィークの中日、乗車率は100%を超え、通路にもお客様が立たれていました。通常、ワゴンが通るスペースがない場合は販売をご遠慮させていただくのですが、「暑くなってきたし、冷たいお茶が欲しいお客様がいるかもしれない。お腹が空いているお子様もいるかも」と考え、商品を袋に詰め込んで手持ちで販売しました。私が行けないところは、お客様がリレー形式でお金と商品の受け渡しを取り次いでくださり、お茶もお菓子もお土産も飛ぶように売れました。車両を何十往復もして販売し、売り上げが通常の7倍、50万円になったのです。50万円という金額は、東京都内にあるコンビニエンスストアの1日の平均売上に匹敵します(当時)。車内販売では前代未聞の数字でした。この体験は私にとって一つの転機となりました。
このとき、私は「物を売ろう」「売り上げを伸ばそう」という考えで行動したわけでも、「ワゴンが通れない場合は販売をご遠慮する」というレギュレーション通りの動きをしたわけでもありません。「お客様が困っているから」「このような状況で少しでも心地よく過ごしていただきたい」、という思いだけでした。この経験もあり、「目の前のお客様のことを一生懸命、考えること」「日々の工夫を重ねること」自体にやりがいを感じ、結果的に大きく売り上げを伸ばしていきます。
──同じ空間の限られた時間の中で、人の3倍という成績を維持するのは簡単ではないと思います。どのように売り上げを維持し続けたのか、何か一例をお話しいただけますか。
会員限定2024年02月16日 00時00分 公開
2024年02月16日 00時00分 更新