2024年1月号 <インタビュー>

あいおいニッセイ同和損害保険 旭 正道 氏

旭 正道 氏

地球319万周の走行データを活かした「DX」
目指すは社会貢献による“ファン作り”

あいおいニッセイ同和損害保険
取締役常務執行役員
旭 正道 氏

金融機関における「顧客」とは誰か──とくに代理店ビジネスが隆盛を極めた保険業界において、本社にとっての顧客とは“チャネル”だった。その言わば抜き差しならない関係が根源となった不正が発覚した一方、業界大手の一角、あいおいニッセイ同和損害保険はデジタルを活かした“ファン作り”の方針を掲げている。

Profile

旭 正道 氏(Masamichi Asahi)

あいおいニッセイ同和損害保険 取締役常務執行役員

1987年入社、営業などを経て2008年、コンタクトセンター事業部長。2014年に業務統括部長、2016年、仙台自動車営業部長の後、あんしん24損害サービス部長(2019年理事就任)、2020年に理事 IT統括部長。2021年、執行役員(IT統括部長委嘱)就任、2022年、現職の取締役常務執行役員(IT統括部、プラットフォームプロジェクト担当)

──コロナ前後の市場およびビジネス概況を教えてください。

 2019年以前の損害保険業界では、人口減少、若者のクルマ離れ、そして自動車の安全性能の向上による事故減少で保険料単価の目減りという課題が重くのしかかり、いかに「主力である自動車保険以外の商品開発」を進めるかが課題となっていました。

 コロナ禍では、経済活動が停止した一方、外出機会の減少で大幅に自動車事故が減り、保険料の単価は下がるのですが支出(保険金支払い)がそれ以上に減ったため、瞬間的ではありますが、収支面でフォローとなった面もありました。しかし、コロナが明けると一気に外出機会が増えて、保険金支払いも比例して増加しています。やはり新商品開発は必須の経営課題ですが、消費生活を含めて社会が一気にデジタル化/オンライン化してきましたので、その流れをくんだ新しい保険商品の開発を進めたのがここ数年、最大のトピックです。

事故を減らし、社会に貢献する
DXの象徴“テレマティクス自動車保険”

──新しい保険商品について教えてください。

 デジタル化における最大の変化は、「データ」の蓄積です。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、これまでの手順やプロセスをデジタルに置き換える領域と、データを活かして新しいビジネスを創出するという2つの側面があります。後者については、(自動車以外の)まったく新しいビジネスもいくつか生まれていますが、自動車の領域でもデジタルの力を活用した新しい取り組みをはじめています。それが「テレマティクス自動車保険」です。

 自動車保険とは従来、事故を起こした後にお役に立つ商品でしたが、現在、業界全体が取り組んでいるのは「デジタル技術を活用した事故を起こさせない仕組み」です。事故を起こした際も、早期の回復を支援する。ここまではほぼ大手の損保会社も実践していますが、(あいおいニッセイ同和損害保険では)保険という商品を通じて得たデータをいかした「地域や社会の課題解決」にチャレンジしています。

──具体的にどのようなデータなのでしょう。

 端的に言うと走行データです。テレマティクス自動車保険に契約いただいている自動車は現在、当社だけで約190万台。蓄積した走行データは地球319万周分に相当します。

 地域・社会貢献の例を挙げます。道路とは、自動車が走れば走るほど傷みます。そこで走行データを活用し、地域の危険箇所(路面の異常箇所など)の候補を地図上に可視化。危険因子を分析し、安全対策を警察署や自治体に提案、その施策実施後の効果も走行データから検証するPDCAを回すというものです。また、省エネ運転の推進も、CO2の削減率を運転状況から算出して貢献度を見える化しています。つまり、“走るほどに安心な町づくり”に貢献できる商品になっています。

(聞き手・矢島竜児)
続きは本誌をご覧ください

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年12月20日 00時00分 更新

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