2023年11月号 <特集>

採用難を乗り切る!

特集扉

全方位型「ES/EX」施策
採用難を乗り切る!

Part.1 <チェックリスト>

雇用条件・対象、教育、働き方、業務支援
採れない時代のHRM「30のチェックリスト」

AIによる顧客対応の自動化とノンボイス対応を推進し、「不人気職」である電話対応業務を減らす──多くのセンターが全力で取り組んでいる施策だ。しかし、その過渡期である現在、人手不足は深刻である。育児や介護を抱えた潜在的求職者をはじめ、さまざまな事情を抱える人材が活躍できる環境作りなど、雇用条件や教育、働き方、業務支援施策など中長期的視野に基づく人材戦略のあり方を検証する。

 採用難と人件費の高騰が続いている。

 この厳しい状況が変化する見込みはない。採用と定着の両面から、人材確保のアプローチを抜本的に見直す必要がある。具体的には、(1)採用戦略の見直し、(2)早期離職の予防、(3)長く働ける環境の構築──だ(図1)。

 採用戦略については、対象の拡大と選考ステップの見直しに着手したい。とくに育児や介護といった事情を抱える人は、将来、フルタイムに転向する可能性もある。目先の人材育成にとらわれるのではなく、長期的な人材戦略でメリットを見出す視点が必要だ。

 早期離職は、選考段階で具体的かつ現実的なイメージを持たせるといった施策で防ぐことが可能だ。定着率が高いと言わるリファラル採用についても、紹介してくれるオペレータに、どのような人材がこの職場にマッチするか具体的なペルソナを提示しておきたい。定着率を上げるために欠かせないのが、SVの教育と負荷軽減だ。新人オペレータにもっとも大きな影響をおよぼすのがSV。SVの育成、フォローのスキルレベルは、オペレータの「就業環境」のひとつとして改善や見直しを図るべきだ。

 SVの生産性向上や負荷軽減を図るためのIT投資も、積極的に行うべきだ。SVにゆとりがあれば、新人オペレータは質問や相談を行いやすい。また、SVはロールモデルでもあり、イキイキと働いている姿を見せることは成長と定着につながるはずだ。

 本誌では、人材確保に必要な具体的な施策を、チェックリストとして一覧にした。採用、ES施策、人材育成、働き方──の4つのカテゴリで計30項目をピックアップしている。

図1 主な人材確保の施策

図1 主な人材確保の施策

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Part.2 <ケーススタディ>

札幌、大阪、福岡、長崎──
激戦区で採用難を勝ち抜く4社の挑戦

人手不足の課題は、ロケーションを問わない。Part.2では、札幌、大阪、福岡、長崎などコールセンター集積地と言われるエリアで人材確保に挑戦する4社の事例を紹介する。共通する姿勢は、採用前後で丁寧なコミュニケーションを重ねイメージギャップを生じさせないこと、長期間モチベーションを維持できるよう成長を実感できる評価制度や、働きやすさを追求した人事制度を含む環境の整備だ。

CASE STUDY 1:ジャパネットコミュニケーションズ

10年がかりで取り組んだ職場改善
働き手の視点を重視した採用・離職予防戦略

 ジャパネットホールディングスで顧客対応の大部分を担うグループ会社、ジャパネットコミュニケーションズは、福岡市に5拠点のコンタクトセンターを構えている(全国では8拠点)。

 同市は、国内有数のコールセンター集積地で、人材の争奪戦が激しい。同社も約10年前までは相次ぐスタッフの離職に苦しみ、悩んでいた。

 10年前、まず注視したのが「転職サイトのクチコミ」だ。そこには、「勤務時間が長い、残業が多い」「有給が取れない」「休憩が取れない」など、ネガティブな書き込みが目立った。そのネガティブ要素を長い時間をかけて、1つずつ解消する取り組みを進めた(図2)。

 また、学生が多い西新オフィスはカフェスタイル、主婦中心の照葉オフィスは託児所を完備し、かつ自動車通勤も可能とした。こうした取り組みの結果、とくに学生層ではリファラル(紹介)採用が定着。先輩が後輩を、あるいは友人を紹介することで、毎年、数十人が卒業で退職するリソースを補っている。

図2 離職率削減にむけての戦略・取り組み

図2 離職率削減にむけての戦略・取り組み

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CASE STUDY 2:オリックス生命保険

採用ミスマッチ防止から操作するITツールまで
「現場ファースト」で採用激戦区を勝ち抜く

 2016年に開設した、オリックス生命保険の長崎ビジネスセンターは、約220名のCA(コンタクトセンター・アテンダント、同社のオペレータ呼称)が在籍。長崎市は、とくに保険会社のコールセンターの立地が集中し、採用の難易度は高い。同社は、「長崎で一番笑顔になれるオフィス」を目指し、働きやすい環境構築に力を入れている。

 人事部門とコールセンター部門が密接に連携し、採用選考時・内定から入社・入社後にかけてさまざまな施策を講じているのが特徴だ(図3)。

 まず、選考に臨むすべての学生と採用担当者が個人面談を実施。親身に学生の将来を考える姿勢を通じて企業ブランディングを強め、同時にコミュニケーションを通じて学生が求めるものと同社が求めるものが一致するのか相互に確認する。

 就職を希望する学生からエントリーシートを受け付け、適性検査(ストレス耐性の傾向を確認)をした後、「仕事体験会」を通じてさらに相互理解を深める。

図3 新人が定着するための施策

図3 新人が定着するための施策

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CASE STUDY 3:弥生

人材激戦区で離職を防ぐ採用のポイントと
「入社後1年間」のモチベーション喚起策

 業務ソフトウエアおよび関連サービスの開発・販売・サポートを行う弥生は、札幌と大阪の2拠点でカスタマーサポートを運営。札幌センターでは正社員が約160名在籍。正社員の約9割が人材紹介会社を経由して入社している。

 弥生ではキャリア採用を通年で実施。採用においては、会計知識の有無を問わず、同社のミッション・ビジョン・バリューに共感してもらえるかを重視。内定後も、入社前に配属先スタッフとの意見交換会を実施している(図4)。

 初期研修が終わってからも、エンゲージメント向上施策は続く。新入社員の早期戦力化に向け、入社後1年以内を目安に「当社で課題に感じていること」をテーマに、自ら企画して取り組むプロジェクトを実施している。

 人材強化施策として、オペレータのフォローアップ体制を強化。社員同士の円滑な対話を促進するため、コミュニケーションスタイルと行動傾向を主導型・感化型・慎重型・安定型の4タイプに分類・評価する心理学的モデル「DiSC理論」や、各スタッフのリーダーシップのスタイルを評価するる「SLII(Situational Leadership II)」を本部内の共通言語にしている。

図4 内定者と配属先スタッフとの座談会によって、入社前のフォローを実施

図4 内定者と配属先スタッフとの座談会によって、入社前のフォローを実施

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CASE STUDY 4:ダイキン工業

自動化による呼量減、閑散期は発信業務
季節による繁閑差を埋め人材管理を平準化

 空調機器メーカーのダイキン工業は、エアコン・空調機器の修理担当窓口を24時間365日の体制で運営している。季節による繁閑差が大きく、夏場のエアコン利用増に比例してい問い合わせが急増する。繁閑差に対応できるよう、短期雇用でスタッフを採用。オペレータの採用は、繁忙期を見据えて毎年4月頃から、BPOベンダーおよび人材派遣会社と連携し、募集と研修を行う。

 特筆すべきは、期間満了で退職しても、翌年“リピーター”として再入社するケースが少なくない点だ。リピーターは勤務経験があるため、初回採用スタッフと比較して研修期間を短縮でき、即戦力としてオペレーション業務を任せられる。

 近年は、繁閑に即した人材確保が難易度を増しつつあるなか、呼量の低減に向けて自動化にも積極的に取り組んでいる。具体的には、AIチャットを活用した「AIチャットでサポート」を運用中(図5)。エアコンや空気清浄機など問い合わせたい機種を選択したうえで、「運転しない」「冷えない」など不具合の内容を選ぶ。チャット上に表示される質問に答えていくと、故障かどうかを診断できる。

図5 呼量低減を実現したチャットサポート

図5 呼量低減を実現したチャットサポート

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2024年01月31日 18時11分 公開

2023年10月20日 00時00分 更新

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