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2023年10月号 <特集>

何に使える? どう使う? 生成AIの現在地

特集扉

何に使える? どう使う?
生成AIの現在地

Part.1 <現状と課題>

ついに弾かれた“圧倒的進化のトリガー”
コンタクトセンターでの「使いどころ」を探る

インターネット以来の大発明とまで評価されたOpenAIの「ChatGPT」。AIに対して「意外と使えない」という印象が強かったコールセンター市場でも、一気に利用機運が高まっている。チャットボットのほか、FAQ作成やVOCの要約、研修や評価の自動化など従来、人手不足で手が回らなかったマネジメント領域の活用も目立つ。生成AI活用の現状と課題を検証する。

 AI活用は、確実にすそ野を広げている。パーソルグループのパーソルイノベーションが今年6月に行った調査によると、「業務にAIを活用している」または「AIの導入を検討している」という回答が全体で約半数、大企業では約70%を占めている。

 コンタクトセンターは2014年以降、もっとも早くAI活用が試行された部門だった。音声認識システムやチャットボットなどの導入が進んだが、「期待していた“オペレータの代替”にはほど遠い」という印象は強く、いわゆる「幻滅期」の到来も早かった。

 「チャットボットは、思っていたほど使えない」という評価が定着しつつあった2023年末、突如現れたテキスト生成AI──OpenAIの「ChatGPT」によって、“顧客対応の自動化”に向けた動きが再燃しつつある。

図1 生成AIの活用領域

図1 生成AIの活用領域

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Part.2 <ケーススタディ>

ボット、自動要約、テンプレ作成、人材教育
試行錯誤を繰り返す先進6社の挑戦

生成AIの用途は、チャットボット(コミュニケーション自動化)、FAQやテンプレートの自動生成、VOCデータの要約、ロールプレイング研修の相手など、多岐にわたる。しかし、2023年8月現在では本格稼働の事例は極めて少ない。社内試用やPoC段階のものを含め、自社開発、ベンダー提供のソリューション利用、SIとの協業など、多様な導入プロセスを採用した6社の事例を検証する。

CASE STUDY 1:弁護士ドットコム

<チャットボット>
社会的課題「2割司法」の解消へ
AIチャットボットが担う相談の“前さばき”

 2007年から運営している弁護士と相談者を結ぶ「みんなの法律相談」。ここに蓄積された127万件以上の相談から抽出したデータを活用し、AIチャット法律相談サービスを開始。

 Microsoftが提供するプラットフォーム「Microsoft Azure」と「Azure OpenAI Service」を導入し、自社開発でチャット型法律相談の構築に着手し、わずか数カ月で稼働を開始した(図2)。

図2 弁護士ドットコムのチャット法律相談の概要

図2 弁護士ドットコムのチャット法律相談の概要

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CASE STUDY 2:武蔵野大学

<チャットボット>
夜間対応をボットが担う
曖昧な質問にも対応し解決率80%超

 SIのウルシステムズにシステム構築を委託し、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceをベースに学生用イントラネット上で活用するチャットボットを構築(画像)。構築期間は約1カ月。対応完了率は、80%を超える。

図2 弁護士ドットコムのチャット法律相談の概要

画像 イントラネット上に掲載されているチャットボット

CASE STUDY 3:レジル(旧中央電力)

<チャットボット>
応対の要約と感情分類を自動化
ACWの短縮と標準化を実現

 マンション(約2200棟、約17万5000世帯)および企業・工場(契約数約8000契約)などに電力供給を行うレジル。OpenAIの「API Platform」を活用した自社開発にて、実証実験を開始。(1)応対履歴の要約、(2)VOC分析(3)FAQ作成で、生成AIの活用を進めている。

CASE STUDY 4:三井住友トラスト・ホールディングス/三井住友信託銀行

<要約/ナレッジ生成/チャットボット>
コールセンターはDX革命の先駆け
要約/ナレッジ生成/自動応答までのシナリオ

 グループ内で生成AI活用による業務支援のPoCの対象に十数拠点あるコンタクトセンターを選定。

 PKSHA Communicationの生成AIを活用し、(1)要約、(2)ナレッジ自動生成、(3)自動応答(対話型AI:電話/対面/社内業務)のPoCを実施段階。最終的には、(3)はメールやチャット業務にも拡大する計画。

CASE STUDY 5:テレパフォーマンス

<テンプレ作成>
“テンプレートが要らない”顧客対応
オペレータを助ける「リアルタイムの対応支援」も実現

 フランスに本社を持つBPO、テレパフォーマンスは、グローバル91カ国で42万人の従業員がオペレーションを担う。

 GPT3.5が登場する以前の2021年からOpenAIを採用、実証実験に着手。現在は、Microsoftの「Microsoft Azure OpenAI Service」を採用。(1)メール、(2)チャットボット、(3)電話、(4)ナレッジのそれぞれの業務に生成AIを組み込んだ。すでにPoCを終えて実稼働している。

CASE STUDY 6:富士通コミュニケーションサービス

<人材育成>
生成AIがロープレを指導、評価
学習機会を増やし品質向上に期待

 BPOベンダーの富士通コミュニケーションサービスは、OpenAIが提供する「OpenAI API」を活用したGPT3.5と4をベースとするAIソリューションを、オペレータの教育支援向けに社内で構築した。

 主な用途は、ロールプレイング(以下ロープレ)や評価、モニタリングとフィードバック。将来的にはクライアントの顧客対応への活用も視野に入れている。

 

Part.3 <ITソリューション>

自動化はいつ、どこまで進むのか──
主要ベンダー動向から読む「AIの進化予測」

生成AIを活用したソリューションの開発は、初動こそAIチャットボットベンダーが先行したが、ここにきてコンタクトセンタープラットフォームやCRMシステムを主力とするベンダーが続々と連携機能の拡充を発表。コンタクトセンター関連のIT市場を賑わせている。主要なコンタクトセンター/CRM関連ITベンダーに実施したアンケートの回答から、生成AIの活用傾向を検証する。

 コンタクトセンターをはじめとしたカスタマーサポート部門がAI導入の端緒となるケースが多いのは、第3次AIブームの頃から変わらない。実際、関連ITベンダー各社による生成AIを活用したソリューションが続々と投入されている。編集部では、コンタクトセンター向けに生成AI連携による機能の提供を発表しているITベンダーを対象にアンケートを実施。各回答から生成AIの活用傾向を探った。

図3 現在の生成AI活用パターン

図3 現在の生成AI活用パターン

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2024年01月31日 18時11分 公開

2023年09月20日 00時00分 更新

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