センター長! 大変です!! SVの事件簿 第12回

2026年9月号 <センター長! 大変です!! SVの事件簿>

寺下 薫

実践編

第12回最終回

窮余の策で“退職宣言”?!
「不安な気持ちからの逃亡」

過酷なコンタクトセンターでは、センター長がとんでもないモンスターだったりします。そんな中で、SVとしてやっていくには、心が折れる時もあり、あまりの過酷さに退職を考えるSVも少なくありません。本連載の最終回は、別のセンターへの異動が決まっていた私に退職をほのめかし、自分を残して異動させないように画策した、あるSVの事件について解説します。

PROFILE
クリエイトキャリア 代表取締役社長
寺下 薫
外資系企業を経て、ヤフーやソフトバンクで長年、人材育成に携わる。問題解決養成塾「SV研究会」を立ち上げ、若手のSVを育成。現在は独立して、コンサルティングや研修、講演、執筆などを中心に活動中。2024年6月に「スーパーバイザーの教科書」を出版。

 あるコンタクトセンターの立ち上げ現場でのことでした。私がプロジェクトリーダーだった時、SVのKは、深夜にもかかわらず、こんな電話をかけてきました。

K:「寺下さん、僕、今日、口から緑のものが出てきました……」

寺下:「えっ、どういうこと?」

K:「ということで、寺下さん、しばらく休ませてもらいます。ドクターストップがかかりました。すみません。明日から現場の責任者は、寺下さん1人になっちゃいますけど、お願いします」

寺下:「それは気にすることはないけど……。まずは、ゆっくり休んで!」

図 今月の教訓・その12
図 今月の教訓・その12

「退職するので後はよろしく」

 Kは、立ち上げのセンターで激務に耐えかねて、深夜に私に電話してきたのです。最初は、立ち上げ時でオペレータの数もそれほど多くなかったため、いつも私と2人でオペレーションを回していたのですが、その日は私が振替休日で休みだったため、Kだけが出社して1人で対応していました。

 その現場は、センター長が非常に厳しく、夜8時からでも平気でミーティングの予定を入れてくるような変わった人でした。しかも毎日、部下である我々SVに不満ばかり言ってくる人だったのです。

 立ち上げ時ということもあり、問題が山積していたことも1つの要因かもしれません。Kは、私が休みで不在の日は、1人でSV業務を行っていたのですが、センター長から怒られたり、オペレータから不満が噴出したりして、いろいろなことが積み重なり、ストレスから熱を出し嘔吐したのです。

 それから数日後、体調が回復し出社してきたKは、私に突然、「お話があります。ちょっとよろしいですか」と深刻な顔をして言ってきました。会議室に呼んで話を聞こうとした、その時です。

K:「寺下さんの異動はなくなりました。なぜなら、私がこの職場を退職するからです。後のことは、寺下さん、大変でしょうけど、よろしくお願いします」

 実は、私は別の現場の立ち上げをすることが決まっており、最初から半年間でその現場を離れることが決定していました。そんな時、Kは奇策に打って出たのです。異動の内示は上司から受けることがあっても、部下であるSVから受けるとは思ってもみませんでした。

寺下:「なるほどー、そうなんだ。わかったよ」。その場では、そう言って打ち合わせを終えました。

 その後、Kは人事に退職の意思を伝えたらしいのですが、人事部長が現場に来て、Kが単に現場から逃げ出そうとしていたことを見抜いたのでしょう、Kにいろいろアドバイスをしたらしく、程なくしてKの退職話は撤回されました。

 後でKに聞いたら、私の異動後、過酷なセンター長の元に1人残されると思い、不安になったみたいでした。だから退職をほのめかして、私の異動を阻止しようとしたのです。その後、異動する私の代わりに別のSVが投入され、Kも安心して仕事ができるようになったということでした。

“不公平”を乗り越える

 SVは、現場を運営していると、「なぜ、自分だけがこんな目にあわなければならないのか?」という疑問がわいてくることがあります。ここでSVが認識しておくべき大切なことがあります。それは、「不公平なことは現場に普通にある」ということです。たとえ理不尽でも、現場で起こる不公平に苦しめられることがあるのです。

 確かに、不公平なことは、できればないほうがいいです。しかし、不公平なことは現実にあるし、それを受け入れて仕事をしなければならない時もあります。

 今、現場で苦しんでいる人がいるとしたら、伝えたいのは、あなたを苦しめているのは“不公平さ”であるということです。例えば、自分が契約社員のSVであるのに、スキルも経験もない後輩が正社員SVだったりしますし、自分より後に入社した人が自分より給料やボーナスが高かったりすることもあるわけです。

 過酷なセンターで働いていると、「なんで私だけこんな目にあわないといけないのだろう」と思うことも結構あると思います。もし、耐えきれなったら、まずは身近な信頼できる人に相談すれば良いです。そして、人間関係に苦しめられているのであれば、その人と距離をおくことです。その人を無理に好きになろうとしないことです。

 さらに言うならば、関係を改善しようなんて思わなくていいと思います。私は、メンタルは強いほうですが、不公平さに苦しめられたことが何度もありますし、何度も心が折れそうになったことがあります。そんな時、自分でなんとかしようとせず、まずは周りの信頼できる人に話をしてみてくださいね。それだけでも、心が少し救われると思います。私で良ければ、いつでもお聞きしますので、気軽にご連絡ください!

 ということで、SVの事件簿は、今回が最終回となります。事件はセンターで起きている、そんなエピソードを面白おかしく書いてきました。楽しんでいただけたでしょうか。1年間にわたり、ご愛読いただき有難うございました。また、どこかでお会いしましょう!

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会員限定2026年08月20日 00時00分 公開

2026年08月20日 00時00分 更新

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