わたちゃんのかすたま~えくすぺりえんす 第136回

2026年6月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

渡部弘毅

コラム

第136回

「ジャムの法則」:
選択肢が多いと、おじさんはフリーズするのだ!!

 スターバックスでフラペチーノを頼みたいのにいつも断念してしまう、わたちゃんです。だって、レジの前に立つと、あの呪文のようなメニューの多さに圧倒され、背後に並ぶ若者たちの「早くしろよ、このオヤジ」という無言のプレッシャーを感じると、結局「あ、ドリップコーヒーのホット、普通ので……」と、逃げるように一番シンプルなものを頼んでしまいます。本当は期間限定の、あのピンク色の甘いやつが飲みたかったのに!

 「ジャムの法則(選択のパラドックス)」とは、「選択肢が多い=自由で幸せ」と思われがちですが、実は選択肢が増えすぎると、人間は選ぶプロセスそのものに疲れ果て、最終的に「買わない(選ばない)」という決定を下してしまう、という法則です。

 心理学者のシーナ・アイエンガー教授が行った実験で、スーパーの試食コーナーで「24種類のジャム」を並べたときと「6種類のジャム」を並べたときを比較したところ、なんと、種類を絞った6種類のときのほうが、実際に購入に至った人の割合が10倍も高かったのです。

 こうしたレジ前でフリーズするのは、なにも老化のせい(だけ)ではありません。これは脳が「これ以上、無駄なリソースを使いたくない!」と発している、高度な防衛本能なのです。

 情報過多の現代において、顧客が真に求めているのは「無限の自由」ではなく、信頼できる誰かが「あなたにはこれがベストだよ」と指し示してくれる「情報の剪定(せんてい)」です。ビジネスにおいても、良かれと思って選択肢を増やすことは、時に顧客に「選ぶ苦労」というコストを押し付けていることになりかねません。

 この法則をうまく活用しているのが、例えばAppleの製品ラインナップです。彼らは「何でも選べる」ことより「これが最高です」という強いメッセージとともに、選択肢を絞り込んで提示します。また、ある飲食店ではメニューを100種類から20種類に厳選したところ、客単価が上がり、調理スピードも向上して利益が倍増したという例もあります。過剰なサービスとしての「選択肢」を捨て、価値を「集中」させたことが、顧客の満足度と企業の収益を同時に引き上げる結果となりました。

 ということで、この法則はビジネスだけでなく、人生の人間関係においても同じことが言える気がします。若い頃は、多くの人脈を持っている人を尊敬し、羨ましいと思っていました。でも、選択肢が多いということは、それだけエネルギーを分散させているということ。たくさんの「知り合い」との調整に追われて疲弊するより、数少ない信頼おける友人と密度の濃い付き合いをするほうが、仕事も人生もずっと楽しいのでは?

 なんて、スタバの片隅で苦いブラックコーヒーをすすりながら感じている今日この頃です。まあ、本当はピンクの甘いやつを飲みながら、友人と語り合いたいんですけどね!

図 ジャムの法則
図 ジャムの法則
PROFILE
ISラボ 代表
渡部弘毅
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
著書『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』(2023年11月、リックテレコム刊)
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す

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会員限定2026年05月20日 00時00分 公開

2026年05月20日 00時00分 更新

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