Editor's Eye 

CS News Watch(6) AIの「資格」と人材育成

生成AI活用「真の課題」に迫る

先週のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。5回目の今回は、「ボイスボット事例」を取り上げます。

生成AI/AIエージェント活用における課題といえば、コールセンターやカスタマーサポートにおいては「ハルシネーション」「情報セキュリティ」の2点を挙げる傾向が強い。

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しかし、この2点に関しては、「100%、防止できる状態」は考えられない。ハルシネーションについては、基盤技術(OpenAIやGoogle、Metaなど)の進化と、実装する際のガードレールなどを徹底したうえで、「発生した場合の対応」をルール化、マニュアル化することを優先すべきで、いつまでも「絶対に発生しない/させない」ことを追求していては、実装は進まない/コストだけがかかるという悪循環に陥ることになる。

情報セキュリティも同様だ。ITソリューションによる防止のみで100%、防げるものではない。加えて個人情報の取り扱いをルール化し、従業員個々のモラルを向上させる教育を施すといった取り組みを徹底。そのうえで発生した際の対応を準備しておく。言い換えれば、この「2大課題」に対する方法論はすでに確立しており、経営もマネジメント層も粛々と対応すればいいだけだ。

むしろ、「実装・成果を出すという観点での真の課題は、人材不足」という識者や専門家が圧倒的に多い。これは「開発できるプロフェッショナルが少ない」という意味だけではない。進化著しいこの技術を、現場と顧客(クライアント)に役立つレベルで実装する、あるいは使いこなす人材が不足している。センターの現場でも、社内全体においても不足しているのが現状だが、前記した調査結果を見る限り、その課題認識はまだ甘いと言わざるを得ない。

2025年に発足したAICX協会は、この課題を重視。このほどAIエージェント実装人材の資格制度を創設し、2026年6月から試験を開始する予定だ。資格は、「AIエージェント・ストラテジスト」と「AIエージェント・アーキテクト」の2種類。その違いは図の通りだ。

「AIエージェント・ストラテジスト」と「AIエージェント・アーキテクト」
「AIエージェント・ストラテジスト」と「AIエージェント・アーキテクト」


前者は設計者、後者が実装をリードする役目を担うといえそうだが、いずれも高度なテックスキルを求めているものではない。AIエージェント・アーキテクトについても「ノーコードツール等を駆使してAIエージェントを構築する」と役目を定義している。

協会では、これまでのAIエージェントの設計・実装プロジェクトのなかで、「AI導入の戦略設計と実装が分断されている」「業務プロセス全体への統合が進まない」「組織としての評価基準が不足している」といった共通課題を見出しており、その解消に向けた人材育成・活用手段として同資格を活用する狙いがあると推察される。

コールセンターなどの顧客情報を扱う部署や大企業ではとくに、貸与されているデバイスはもちろん、プライベートでの生成AI(ChatGPTやGeminiなど)の利用を禁止している企業も多い。なかには、IT企業ですら「特定の生成AIの利用しか認めない」というところもある。情報セキュリティの観点である程度の対策はやむを得ないという見方ができる一方、これでは使いこなす人材は出てきにくい。一方で、消費者(顧客)は、どんどん新しいアプリケーションを使って武装していく。ChatGPTやGeminiの特性や特徴すら知らずに、それらを使いこなして問い合わせに至った顧客の対応をしなくてはいけない現場の苦労は今後、大きくなるばかりだ。

また、こうした限定的な利用にとどまっては、センター/企業内の業務効率化や生産性向上、業務プロセス改善においても、現場発の新たな工夫やアイデアが発生する可能性は限りなく低い。設計思想はもちろん、実装するための知恵も育たないまま、「顧客対応の要約と一部の対応の自動化」といった、本来、AIが持つポテンシャルと比べると極めて小さな成果しかもたらされないリスクもある。

AICX協会の資格制度では、「AI実装を前提とした実務人材基準」の構築を目的としているだけに、今後の普及に期待したいところだ。同協会では、「3年間で約1万名規模」の受験を想定している。
 

2026年02月24日 18時12分 公開

2026年02月24日 18時12分 更新

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