コラム
第136回
スターバックスでフラペチーノを頼みたいのにいつも断念してしまう、わたちゃんです。だって、レジの前に立つと、あの呪文のようなメニューの多さに圧倒され、背後に並ぶ若者たちの「早くしろよ、このオヤジ」という無言のプレッシャーを感じると、結局「あ、ドリップコーヒーのホット、普通ので……」と、逃げるように一番シンプルなものを頼んでしまいます。本当は期間限定の、あのピンク色の甘いやつが飲みたかったのに!
「ジャムの法則(選択のパラドックス)」とは、「選択肢が多い=自由で幸せ」と思われがちですが、実は選択肢が増えすぎると、人間は選ぶプロセスそのものに疲れ果て、最終的に「買わない(選ばない)」という決定を下してしまう、という法則です。
心理学者のシーナ・アイエンガー教授が行った実験で、スーパーの試食コーナーで「24種類のジャム」を並べたときと「6種類のジャム」を並べたときを比較したところ、なんと、種類を絞った6種類のときのほうが、実際に購入に至った人の割合が10倍も高かったのです。
こうしたレジ前でフリーズするのは、なにも老化のせい(だけ)ではありません。これは脳が「これ以上、無駄なリソースを使いたくない!」と発している、高度な防衛本能なのです。
情報過多の現代において、顧客が真に求めているのは「無限の自由」ではなく、信頼できる誰かが「あなたにはこれがベストだよ」と指し示してくれる「情報の剪定(せんてい)」です。ビジネスにおいても、良かれと思って選択肢を増やすことは、時に顧客に「選ぶ苦労」というコストを押し付けていることになりかねません。
この法則をうまく活用しているのが、例えばAppleの製品ラインナップです。彼らは「何でも選べる」ことより「これが最高です」という強いメッセージとともに、選択肢を絞り込んで提示します。また、ある飲食店ではメニューを100種類から20種類に厳選したところ、客単価が上がり、調理スピードも向上して利益が倍増したという例もあります。過剰なサービスとしての「選択肢」を捨て、価値を「集中」させたことが、顧客の満足度と企業の収益を同時に引き上げる結果となりました。
ということで、この法則はビジネスだけでなく、人生の人間関係においても同じことが言える気がします。若い頃は、多くの人脈を持っている人を尊敬し、羨ましいと思っていました。でも、選択肢が多いということは、それだけエネルギーを分散させているということ。たくさんの「知り合い」との調整に追われて疲弊するより、数少ない信頼おける友人と密度の濃い付き合いをするほうが、仕事も人生もずっと楽しいのでは?
なんて、スタバの片隅で苦いブラックコーヒーをすすりながら感じている今日この頃です。まあ、本当はピンクの甘いやつを飲みながら、友人と語り合いたいんですけどね!
