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2026年3月号 <ITの選び方&使い方>

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生成AIで“自己解決できない体験”をなくす
回答のミスマッチを抑止する「質問の特定」

POINTSイメージ

今月のPOINTS!

システム概要
総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」のヘルプページの自己解決チャネルに、カラクリが提供する『GeN(Generative Navigator)』を採用した。

選び方のポイント
顧客接点であるため、安全性を担保した生成AI活用を前提として選定。既存のチャットボット運用で蓄積したナレッジを生かせる点、従来の課題であった表記揺れや入力ミス、曖昧な質問の解決につながる「問題の特定」の特許技術を有している点を評価した。

使い方のポイント
トライアル公開までの準備期間は、テストパターンを多数用意し、現場のメンバーとともに検証を繰り返すことに注力。検証結果をもとに、絶対に案内させない領域や人の判断が必要なケースの扱いを洗い出し、プロンプトに織り込んでいった。結果、従来のチャットボットでは未解決となっていたケースを約1割削減。この結果を踏まえて、正式導入に進んだ。結果、有人チャネルへの流入が減り、オペレータは複雑・高度な問い合わせに、より丁寧に向き合えるようになった。

 自己解決を望み、チャットボットに聞いてみたものの、問題解決できず、結局は有人チャネルに流れてしまう──。こうした事例は少なくない。

 総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」を運営するauコマース&ライフは、ユーザー向けヘルプページで提供しているチャットボットに生成AIを組み込むことで、問題解決率を向上させ、CX向上を果たした。

従来の「未解決」に着目
質問の特定をサポート

 同社は、ユーザー向けサポートチャネルの1つとして、2024年4月からチャットボットを導入。カラクリの『KARAKURI Chatbot』を活用し、トラブルやキャンペーンに関する疑問や質問の自己解決をサポートしてきた。「問題解決率は高く、チャネルとして定着していた一方、表記揺れや入力ミス、曖昧な聞き方に弱く、聞いたことと違う回答が返っているケースがありました」。(CX推進本部 副本部長の小林未来氏)。

右から、CX推進本部 本部長の玉木伯岳氏、副本部長の小林未来氏
右から、CX推進本部 本部長の玉木伯岳氏、副本部長の小林未来氏

 自己解決チャネルは「サポートコストの削減策」ではなく、問題をその場で解決できることによる「CX向上策」と位置づける同社にとって、問題を解決できないという不満体験は看過できない。そこで、従来のシナリオ提示によるチャットボットでは問題解決できていない領域に生成AIで切り込むべく、ツール選定に舵を切った。

 選定で重視したのは、ハルシネーションを抑えながらフロントに出せる安全性だ。CX推進本部 本部長の玉木伯岳氏は、「auのブランドイメージの面もありますが、商品を直接見ることのできないECモールにおいては、安心・安全こそが、お客様との信頼関係を築く基礎部分となるため」と説明する。

 これまでのチャットボット運用でアップデートしてきたFAQナレッジを参照し、その範囲からのみ回答させることで安全を担保できる点、有人対応における「問題の特定」のプロセスをAIで再現する特許を取得している点が、同社の目指すCXに合致したことから、カラクリの顧客対応AIエージェント『GeN(Generative Navigator)』を採用。2025年5月からトライアルを実施した。

 問題の特定は、対話によってユーザーの質問の意図を明確にして、“●△についてのご質問でしょうか?”と確認をとる技術だ()。“正しい質問”を特定することで回答のミスマッチを抑止できる。「自分が聞いたことに回答が返ってこないというフラストレーションの解消だけでなく、お客様自身が質問したい内容かどうかを判断できるため、安全な生成AI活用という面でも、求める要件に合致していました」(小林氏)。

図 顧客対応AIエージェント『GeN』による質問意図の明確化
図 顧客対応AIエージェント『GeN』による質問意図の明確化

公開前の検証を徹底
CXファーストの追求

 GeNのトライアル公開までの準備期間は、回答生成の範囲検討と検証に注力した。FAQのみを参照させてそのまま回答させるのでは、生成AIの良さである回答の柔軟性が失われる。一方、回答生成の自由度を高くすると、誤回答やブランド毀損のリスクが増す。

 このよい塩梅を追求するため、テストパターンを多数用意し、現場のメンバーとともに検証を繰り返した。テストパターンは、有人対応のログに含まれる入力ミス、略語、原因の切り分けができない質問、プロンプトインジェクション(不適切な入力)に加え、社内利用の生成AIで生成した想定問答集も活用。検証結果をもとに、絶対に案内させない領域や人の判断が必要なケースの扱いを洗い出し、プロンプトに織り込んでいった。「単に“答えさせない”のではなく、必要に応じてオペレータに誘導するなど、CXファーストで問題解決の導線を設計しました」(小林氏)。

 トライアル後は、従来のチャットボットでは未解決となっていたケースを約1割削減。この結果を踏まえて、正式導入に進んだ。結果、有人チャネルへの流入が減り、オペレータは複雑・高度な問い合わせにより丁寧に向き合えるようになったという。また、副次効果として、チャットボットのログから、問い合わせに至らないケースからでも、不具合を先回りして検知し、対応できる可能性も見えてきた。こうした一連の取り組みが実を結び、J.D.パワージャパンのカスタマーセンターサポート満足度調査「EC・通販業界編」で2位を受賞し、ECモールでは1位の評価をされたと同社はみている。

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会員限定2026年02月20日 00時00分 公開

2026年02月20日 00時00分 更新

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