スーパーバイザーの教科書・Essential 第7回

2025年2月号 <スーパーバイザーの教科書・Essential>

寺下 薫

実践編

第7回

コンタクトセンターの地位を高める経営貢献
「SVが身につけるべきスキル(4)」

コンタクトセンターやSVの地位を少しでも上げるには、センターがいかに経営貢献しているかをしっかり示す必要があります。そのためには、センターの目標やKPIの設定が、経営層の目標と連動していることが大切。もし、経営層の目標とズレているなら見直しが必要です。また、報告・提案にはプレゼンテーション資料も重要。今回は、SVがどのように経営貢献に取り組めばよいのかを解説します。

PROFILE
クリエイトキャリア 代表
寺下 薫
外資系企業を経て、ヤフーやソフトバンクで長年、人材育成に携わる。問題解決養成塾「SV研究会」を立ち上げ、若手のSVを育成。現在は独立して、コンサルティングや研修、講演、執筆などを中心に活動中。2024年6月に「スーパーバイザーの教科書」を出版。

 コンタクトセンターでは、さまざまなKPIが設定されています。センターのKPIというのは、本来、上位目標からカスケードダウン、つまり、経営層が設定した目標や戦略が、センター、センター長、マネージャー、SV、オペレータへとより具体化、細分化されていないといけません。しかし、コンタクトセンターの特殊性なのか、センター内でしか通用しないKPIが設定され、経営層の求めるものとかけ離れたKPIが採択されることが多くあります。その結果、コンタクトセンターは目標達成に向けて頑張っているものの、経営層からはまったく評価されないということになったりします。

 経営貢献していくためにまず最初にやるべきことは、経営層が掲げるKPIを確認することです。経営層の目標達成に貢献しないセンター目標を立てても何の意味もないからです。例えば、経営層が生産性重視を目標に掲げていたとします。センターでは独自に「できるだけお客様には親身に寄り添い、どれだけ時間がかかっても構わないから顧客満足度の高い応対をする」といった目標を掲げていたとすると、このセンターでは、経営層が求める方向性とは正反対の対応をしていることになります。

 経営の目標とセンターの目標を連動させるためには、まずセンターの目標が経営の目標に沿った設定になっているのかを調べ、もし方向性がズレている場合、SVはセンター長などに目標自体の見直しを提案しないといけません()。

図 経営貢献を示す目標例
図 経営貢献を示す目標例

プレゼン資料作成「5つの極意」

 経営層を動かすためには、口頭だけでなく、資料でも伝えられる必要があります。そのため、SVも資料作成の基本について勉強をしなければなりません。ただ、かく言う私も30歳の時、パワーポイントの作り方を知りませんでした。白紙の何も書いていないスライドにどうやって文字を入力するのかすら分からなかったのです。しかし、その後、資料作成の方法を自分で勉強するようになり、最後はヤフーの社長の資料まで作れるようになりました。今回は、ヤフー、ソフトバンク流資料作成の極意をいくつかお伝えしたいと思います。

(1)1スライド1メッセージ

 月次報告書や施策の企画書などを作成する時、着信数や応答率などエクセルのグラフを貼り付けただけのスライドをよく見かけます。グラフを貼り付けること自体、問題はないのですが、メッセージがないスライドを多く見受けます。何を言いたいのか1つメッセージをつけるようにします。

(2)タイトルの文字数は13文字以内

 スライドの一番上にタイトルをつけると思いますが、その時、文字数は13文字以内にします。これは、人が目を動かさずに見られる最大の文字数だからです。ヤフーのニューストピックスは、現在は、ニュースを正しく伝えるために15文字前後にしていますが、長らく13文字以内で運用していました。タイトルは13文字がいいです。

(3)使う色は3色以内にする

 黒色を基本にいろいろな色を使って表現したりしますが、色は2色、または3色以内にしたほうがよいです。そして、違和感のある色を使ってはいけません。例えば、赤文字で「冷たいコーヒー」などです。色には、暖色(暖かさを感じさせる色)と寒色(冷たさを感じさせる色)があるので、注意しましょう。そして、色のルールも事前に決めておくとよいです。

 私は、ポジティブ(肯定的、前向き、プラス)なメッセージは青色、ネガティブ(否定的、後ろ向き、マイナス)なメッセージは赤色にするというソフトバンクルールを使って資料を作成しています。

(4)図・グラフ・写真は左、メッセージは右に配置する

 実は、文字やグラフなどの配置についても基本的なルールが決まっています。左目で見たものは右脳で処理され、右目で見たものは左脳で処理されています。右脳、左脳、それぞれ得意な分野が異なります。左脳は、話したり、考えたり、計算したりすることが得意です。一方、右脳は、感じたり、イメージしたり、ひらめいたりすることが得意です。そのため、脳の得意分野を踏まえて、左側にグラフや写真、イラストなどを挿入し、右側に伝えたいメッセージをシンプルに伝えるようにします。

(5)PREP法でシンプルに伝える

 Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の英語の頭文字をとって「プレップ」と言います。物事を伝える際は、常にこの順で伝えるようにします。そして、何より最後に、相手に何をしてほしいかを明確に伝えること大事です。

2025年01月20日 00時00分 公開

2025年01月20日 00時00分 更新

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