実践編

第8回

センター長・専門職・他部署異動──
道が開けている「SVのキャリア」

SVのキャリアの先には何があるのでしょうか。今後のキャリアに関して悩んでいるSVは、意外と多いと思います。センター長になろうと思ってもなれるものではありませんし、ポジションの数も限定的です。しかし、不安に思うことはありません。SVの未来のキャリアは意外と開けて明るいからです。SVにはどんなキャリアがあり、SVの時に何を準備しておけばよいのかを解説します。

　早速、質問です。ずっとSVのままでいたいですか？ こういう質問をすると、ほとんどのSVは、首を横に振ります。そして、現役のSVからよく相談を受けるのは、「今後、自分はどんな道を歩んでいけるのか分からない」とか、「どういうキャリアがSVにはあるのかを知りたい」ということです。

　コンタクトセンターの中だけにフォーカスしてしまうと、センター長しか先が見えなかったりして、不安も出てきてしまいます。しかし、SVの未来のキャリアはいろいろと開けていて明るいです。どんな道を進むことができるのか、考えてみましょう。

Will・Can・Mustで考えよう！

　まずは、紙を用意してみてください。そこに３つの円が少しずつ重なるように描きます（図）。そして、Will（やりたいこと）、Can（できること）、Must（やるべきこと）とテーマを書き込み、自分のことを書いてみてください。

図　Will・Can・Mustでキャリアを考える

　キャリアを考える時は、Will、つまり、やりたいことが何かを考えることが大事です。少し時間をとって、自分のことをしっかり考えてみてください。一番良いのは、３つの円がすべて重なる部分が見つかることです。さて、どんなことが書き込まれたでしょうか。

　SVには、大きく分けて３つの道があると思っています。

１、昇進してセンター長になる

　一番分かりやすいキャリアの一つです。そして、SVが昇進してセンター長になるというのは、一つのゴールとして多くのSVが考えていたりします。しかし、センター長に昇進するのは、それほど簡単ではありません。会社のジョブローテーション上、親会社からの出向であまり面識のない人が自分のセンターのセンター長に突然、着任することもありますし、他部署の管理職が異動で着任することもあります。つまり、SVだからといって、必ずしもセンター長に昇進できるわけではないのです。

　もちろん、SVから昇進することも可能です。ただし、ポストは１つしかないので、大きなセンターだと競争率が高くなります。ただ、センターのことや業務のことを一番よく理解しているSVには、センター長になるのは、一つのチャンスとして考えておいてよいと思います。私は、前任のセンター長がメンタル不調でダウンしてしまって、急遽、SVから昇進した経験があります。突然の出来事でびっくりしましたし、最初、戸惑うことも多かったです。失敗もたくさんしました。ですので、センター長を目指している場合は、いつセンター長になってもやれる知識や経験、視座の高さを今から身につけておく必要があります。

２、専門職を極める

　モニタリングやデータアナリストなど専門職に特化するというキャリアもあります。小さなセンターでは少し難しいですが、大きなセンターでは、SVがシフト担当やモニタリング担当など、役割が担当別になっていたりします。

　専門職に特化するには、まずは専門スキルをピカピカに磨くことです。どれだけ磨けばよいかといえば、「モニタリングといえば、○○さん」と自分の名前が周りから自然と挙がるようになることです。それには、３年〜５年は勉強する必要があると思っています。誰よりも負けない知識を身につけるのです。その際、テクニックも大切ですが、本質から理解しておくことです。例えば「モニタリングは、何のためにやっていますか？」と聞くと、ほとんどのSVは正解を言えません。「品質チェックのためでしょう」とか、「トレーニングのためでしょう」と答えるSVもいますが、間違っています。モニタリングは、お客様満足向上のためにやっています。その辺を理解せずにテクニックだけを身につけても意味がないので、本質から勉強するようにしましょう。

３、他部署に異動する

　私は、ヤフーの人事部門に異動できましたが、他部署に異動するというのもSVのキャリアの一つです。最近、コンタクトセンター業界の中でも、コンタクトセンター出身で他部署で活躍されている方がたくさんいます。コンタクトセンター出身で役員になった方も少しずつ出てきています。

　SVは、日頃からオペレータの面談から育成までやっているので、人事業務とは親和性が高いです。それ以外でも、マーケティング、総務、経営企画など、SV業務と関連する部署はたくさんあります。

　コンタクトセンターから他部署に異動するには、一つ乗り越える壁があります。それは、ビジネス基礎スキルです。通常、会社に入社すると、ビジネスマナーをはじめ、問題解決、タイムマネジメント、ファシリテーション、プレゼンテーションなどのビジネス基礎となるスキルを学びます。

　コンタクトセンターは、そういったことを学ぶことなく、SVは、業務知識をはじめとして、クレーム対応、シフト管理、スクリプト作成、システム管理など、コンタクトセンター特化のスキルを優先的に習得することになるため、ビジネス基礎スキルを学ぶ機会がありませんし、学ぶとしても後回しになってしまいます。ですので、他部署に将来異動したいと考えている人は、自分で今からビジネス基礎スキルを習得しておくことです。ビジネス書を読んだり、セミナーに出たりして、自分に投資してみるとよいでしょう。

　以上、３つの道を紹介しましたが、SVにはいろいろな未来が開けていると思います。まず、自分のやりたいことは何かを、今回を機に考えてもらえればと思います。