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コンタクトセンターAI活用を追う「AIのメモリーDX」 第1回

コンタクトセンターAI活用を追う「AIのメモリーDX」

オンライン限定記事

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第1回

品質管理からVOC活用まで
AI活用で高まるコンタクトセンターの「価値」

PROFILE
プライムフォース
代表取締役社長
澤田哲理
顧客満足度分析、コールセンター運営マネジメント、ICTシステムのユーザー部門側マネージャー、アウトソーシング先選定と運営など多岐にわたるマネジメント業務を経験。COPC規格のリード監査員・シニアコンサルタントとして、のべ100社以上監査や支援を実施。一般社団法人サポートデジタル協会 理事、日本コンタクトセンター教育検定協会 CMBOK知識スキル体系 主任編集委員(Ver1, Ver2)
ベリントシステムズジャパン
エバンジェリスト/プリセールス
森脇 健
音声ソリューションを手掛けて20年。2003年にアドバンスト・メディア社にてCTIソリューションを立上げ、リアルタイムFAQポップアップや通話録音文字化~テキストマイニングの流れを商用化。他にアワードを受賞した保険会社の苦情抽出、メガバンクのバーチャルオペレータ、不動産会社のチャットサービス、音声対話チャット、自然言語AIを用いたアウトバンドセンターの音声認識テキスト分析等を手掛ける。2020年5月より現職

  コンタクトセンターでも、急速に進むAI活用。以下はその全体像を可視化する、現段階における「AI活用マップ」だ。

図 AI活用マップ
 
  図に示す通り、コンタクトセンターでのAI活用は、(1)フロントチャネルの自動化、(2)オペレータ/SVの業務支援、(3)運用管理の効率化、(4)社内情報管理の効率化など多岐にわたる。さまざまな領域で自動化や効率化が進めば、従来、リソース不足を理由に諦めざるを得なかった施策や改革も実現するだろう。例えば、電話やWeb、店舗といった、横断的なカスタマーチャネルの再設計や統合管理、詳細なVOCの分析などが進み、コンタクトセンターが生み出す価値はさらに高まるとみられる。

AI活用で注目される
5つのトピック

 AI活用でコンタクトセンターは大きく変貌する。しかし、現状(2024年3月現在)は、足元に課題が山積している。注目されているトピックは、次の5つだ。

1stトピック:AIの活用方法の第一歩~音声からテキストへの変換
 AIを活用する際の具体的な方法として、「音声からテキストへの変換」は欠かせない。
 音声認識は、約20年ほど前からコンタクトセンターで使われ始めた技術だ。とくにここ数年は、AIを活用することで認識精度が大きく向上している。
 さらに生成AIを使用することで、音声をテキスト化した後、生成型の要約や分析に活用することが実用的になった。これにより、コールセンターのオペレーションが大幅に効率化されるだろう。
 また、オペレータ個人の私見を含まない「客観的な生成型要約」や、「1通話に含まれる複数のコールリーズンを可視化する」など、従来の人力作業の限界を大きく超えることも可能になった。
 “自動要約”は効率化だけでなく、分析データの質的向上・応対品質評価の精度向上なども期待されている。

2ndトピック:応対品質管理
 AIによる応対品質の自動スコアリングをはじめ、人材マネジメント面でのDXが期待されている。
 従来、「ランダムサンプリングされた1、ないしは2通話程度の限られた通話サンプル」を対象にしていた評価が、AIによって全件で行われるようになった。これによりオペレータの公平な評価が可能になり、応対品質の向上につながっている。
 理想はAIによるフル評価だが、発話の有無や時間的な評価といった「定量評価」は可能になった一方、“声の表情”など「定性的な評価」は、今なおSVが聴いて評価せざるを得ない。しかし数年先には、AIが音声(声質)を解析して評価する日がきそうだ。
 昨今、海外では「従業員エンゲージメントの向上」にも注目が集まっている。これは、世界共通のテーマだ。日本でも働き方改革が進み、 AI/ITを使ったリアルタイムコーチングやナレッジサジェストなど、リアルタイムでAIが従業員の仕事をサポートする事例も出てきている。
 従業員エンゲージメントの向上はカスタマーエンゲージメントの基本だ。今後、国内での注目も高まるに違いない。

3rdトピック:マーケティングへの貢献
 マーケティングの面では、VOCや苦情マネジメントなど、さまざまな分野でAIが活用されている。
 コンタクトセンターは日々、顧客とのコミュニケーションを通じて重要な情報をやりとりし、会社と顧客の関係を深める役割を果たしている。VOCが、いわゆる“宝の山”である事は、20年前から言われてきた。一方で、「宝に比べて不用品が多い」という見方も根強く、どう効率よく宝を集め価値に変えるか、世界中で模索が進んでいる。生成AIは、“価値の抽出”を強力に支援するだろう。

4thトピック:クラウドシフトの恩恵
 AIをクラウドソリューションとして利用できる恩恵も大きい。活用のハードルが大幅に下がることで、さまざまな業務で利用、全体最適化が進む。
 重要なのはアウトプットの活用方法だ。音声認識などの“単機能の精度”や“アルゴリズム”といった個別最適にこだわらず、センター全体での全体最適を意識する事がポイントだ。
 結果、「エンゲージメントソリューション」というベストプラクティスを統合した“幕の内弁当型”のオールインワン・クラウドサービスに注目が集まっている。

5thトピック:日本と海外ITの捉え方差異
 日本と海外では、AIの活用に対する考え方に違いがある。
 日本では「技術の精度」に焦点が当てられがちだが、海外は「データの価値」に重点を置いている。
 海外では「AIは手段」であり、既存アプリケーションの機能強化と機能拡張をベースにアプローチする傾向が強い。既存路線拡充から実現し、価値を生み出すという流れだ。一方、日本は「AIで何が出来るか?」など技術的な検証に時間をかけ、価値の検証は後回しにされがちだ。
 目指すところは同じでも、アプローチが事なるのは興味深い。AIの活用方法や価値を考える際には、両方の視点を踏まえる必要がある。

 第2回以降は、上図のマップをブラッシュアップしながら、各テーマを深堀して解説していく。
 

2024年02月23日 14時24分 公開

2024年02月23日 14時24分 更新

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