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第1回
品質管理からVOC活用まで
AI活用で高まるコンタクトセンターの「価値」
コンタクトセンターでも、急速に進むAI活用。以下はその全体像を可視化する、現段階における「AI活用マップ」だ。
AI活用で注目される
5つのトピック
AI活用でコンタクトセンターは大きく変貌する。しかし、現状(2024年3月現在)は、足元に課題が山積している。注目されているトピックは、次の5つだ。
1stトピック:AIの活用方法の第一歩~音声からテキストへの変換
AIを活用する際の具体的な方法として、「音声からテキストへの変換」は欠かせない。
音声認識は、約20年ほど前からコンタクトセンターで使われ始めた技術だ。とくにここ数年は、AIを活用することで認識精度が大きく向上している。
さらに生成AIを使用することで、音声をテキスト化した後、生成型の要約や分析に活用することが実用的になった。これにより、コールセンターのオペレーションが大幅に効率化されるだろう。
また、オペレータ個人の私見を含まない「客観的な生成型要約」や、「1通話に含まれる複数のコールリーズンを可視化する」など、従来の人力作業の限界を大きく超えることも可能になった。
“自動要約”は効率化だけでなく、分析データの質的向上・応対品質評価の精度向上なども期待されている。
2ndトピック:応対品質管理
AIによる応対品質の自動スコアリングをはじめ、人材マネジメント面でのDXが期待されている。
従来、「ランダムサンプリングされた1、ないしは2通話程度の限られた通話サンプル」を対象にしていた評価が、AIによって全件で行われるようになった。これによりオペレータの公平な評価が可能になり、応対品質の向上につながっている。
理想はAIによるフル評価だが、発話の有無や時間的な評価といった「定量評価」は可能になった一方、“声の表情”など「定性的な評価」は、今なおSVが聴いて評価せざるを得ない。しかし数年先には、AIが音声(声質)を解析して評価する日がきそうだ。
昨今、海外では「従業員エンゲージメントの向上」にも注目が集まっている。これは、世界共通のテーマだ。日本でも働き方改革が進み、 AI/ITを使ったリアルタイムコーチングやナレッジサジェストなど、リアルタイムでAIが従業員の仕事をサポートする事例も出てきている。
従業員エンゲージメントの向上はカスタマーエンゲージメントの基本だ。今後、国内での注目も高まるに違いない。
3rdトピック:マーケティングへの貢献
マーケティングの面では、VOCや苦情マネジメントなど、さまざまな分野でAIが活用されている。
コンタクトセンターは日々、顧客とのコミュニケーションを通じて重要な情報をやりとりし、会社と顧客の関係を深める役割を果たしている。VOCが、いわゆる“宝の山”である事は、20年前から言われてきた。一方で、「宝に比べて不用品が多い」という見方も根強く、どう効率よく宝を集め価値に変えるか、世界中で模索が進んでいる。生成AIは、“価値の抽出”を強力に支援するだろう。
4thトピック:クラウドシフトの恩恵
AIをクラウドソリューションとして利用できる恩恵も大きい。活用のハードルが大幅に下がることで、さまざまな業務で利用、全体最適化が進む。
重要なのはアウトプットの活用方法だ。音声認識などの“単機能の精度”や“アルゴリズム”といった個別最適にこだわらず、センター全体での全体最適を意識する事がポイントだ。
結果、「エンゲージメントソリューション」というベストプラクティスを統合した“幕の内弁当型”のオールインワン・クラウドサービスに注目が集まっている。
5thトピック:日本と海外ITの捉え方差異
日本と海外では、AIの活用に対する考え方に違いがある。
日本では「技術の精度」に焦点が当てられがちだが、海外は「データの価値」に重点を置いている。
海外では「AIは手段」であり、既存アプリケーションの機能強化と機能拡張をベースにアプローチする傾向が強い。既存路線拡充から実現し、価値を生み出すという流れだ。一方、日本は「AIで何が出来るか?」など技術的な検証に時間をかけ、価値の検証は後回しにされがちだ。
目指すところは同じでも、アプローチが事なるのは興味深い。AIの活用方法や価値を考える際には、両方の視点を踏まえる必要がある。
第2回以降は、上図のマップをブラッシュアップしながら、各テーマを深堀して解説していく。
2024年02月23日 14時24分 公開
2024年02月23日 14時24分 更新