SBI証券
3年間で「5拠点体制」を整備
DX化も同時進行、CX/EX向上を図る
SBI証券は、2023年9月から開始した「手数料ゼロ革命」、24年スタートの新NISA制度を受けて、問い合わせが急増。それを見越し、コールセンターでは3年間で5拠点のマルチサイト化とDX化を加速。基盤をクラウドソリューションにリプレースし、デジタルツールを次々と導入。顧客体験の向上や、オペレータの生産性と離職防止に取り組んでいる。
Center Profile
ネット証券大手のSBI証券は、顧客数増加に備え、拠点の分散化とそれに伴うオペレーション環境の整備を計画。新NISA制度への反響により、土日祝日も臨時営業を行っている。問い合わせが増えることでのオペレータのミスマッチ、顧客の待ち時間を防ぐためにDX化を促進し、顧客体験の向上やスタッフの負担減に取り組む。
ここ数年、国内ネット証券大手のSBI証券のコールセンターは、拡大と機能強化が著しい。2024年1月からスタートした新NISA制度の影響はもちろん、23年秋からは、国内株式の売買手数料をゼロ(現物取引、信用取引など含む)にした“ゼロ革命”を実行。これにより、問い合わせが殺到した。平均の月間問い合わせ件数は電話が30万件、メールと有人チャットがそれぞれ3万件になり、半年間で呼量とメールは1.5倍、有人チャットは2倍に膨れ上がっている。
河田裕司カスタマーサクセス推進部長は、「数年前からこの事態を予測しており、拠点増設とDX推進を計画していました」と説明する。同社は、熊谷(埼玉県)と新宿(東京都)の2カ所だった拠点の再編成を行い、21年からの3年間に5拠点へと一気に増やした。各拠点の概要は図1の通りで、いわゆる「集積地」への立地は横浜のみ。熊谷に続く規模を持つ島根(島根県)の拠点選定の基準について河田氏は、「BCPの観点から、西日本に作りたい構想があった。集積地を避けたのは、コールセンター未経験者の方が、当社の運営方針を理解してもらいやすいと考えたためです」と説明する。
なお現段階では、島根、新潟、横浜はBPO企業への委託による運営を行っている。島根の委託先はグループ会社だが、メイン拠点の熊谷のミラー拠点に位置づけていることから、準備が整い次第、自社運営に切り替える方針もある。
センターごとに役割を設定
「ミニマムスキル」定義の効果
同社が複数の中規模拠点を置く形式を取る理由には、深刻化する採用難への懸念もある。河田氏は、「熊谷、島根を除く各拠点の役割を明確にし、ミニマムスキルで採用と運営ができる可能性を考えて分散しました」と説明。ミニマムスキルに設定をすることで、着台までの研修期間を大幅に短縮し、コールセンターの永遠の課題である「初期段階での離職」を防ぐこともできる。
河田氏は、新入社員が入社する日には毎月、各拠点へ赴いて会社の歩みから企業理念、センターの運営方針、求めるオペレータ像などについて詳細に解説する。その際には、各センターの既存オペレータから、課題のヒアリングも欠かさない。負荷は非常に重いが、「現地の管理者らが気づかない点が把握でき、運営へのフィードバックに活用できている」と語る。
会員限定2024年02月16日 00時00分 公開
2024年02月16日 00時00分 更新
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