松尾研究所 金 剛洙 氏

2026年7月号 <インタビュー>

金 剛洙 氏

松尾研究所
取締役副社長
金 剛洙

(Kim Kangsoo)東京大学工学部卒業後、同大学院工学系研究科を修了。新卒でシティグループ証券に入社。2020年、松尾研究所に参画。機械学習の社会実装プロジェクトの企画からPoC、開発を一貫して担当。その後、経営戦略本部を立ち上げ、統括。2022年から現職。VCファンドのMK Capital 代表取締役社長CEO・マネージングパートナーも務める。

AI活用の成果は業務効率化にとどまらない!
CXを再設計する技術として生かそう

生成AIが進化し、ホワイトカラー業務の多くがAIに置き換わりつつある。松尾研究所 金 剛洙氏は、「業務に詳しい現場の人がプロンプトやナレッジ設計に関わり、埋もれている暗黙知をAIに継承していくべき」と指摘。AIエージェント時代の到来を前に、コンタクトセンターの役割はどう変わるのか。人の役割の再定義についても聞いた。

──ホワイトカラー業務の多くがAIに置き換わっています。

 2022年にChatGPTが登場して以降、生成AIは急速に進化をし続けています。当初は文章生成や要約が中心でしたが、現在は“AIエージェント”と呼ばれる段階に入ってきています。単に回答を返すAIではなく、自律的に計画を立てて実行し、改善をしながらタスクを進める存在です。例えば、これまでは人が行っていた経費精算や資料作成などのデスクワークを、AIが一連の流れとして処理できるまでになっています。今年に入ってからの進化は劇的で、推論モデルの進化は目覚ましい状況です。そのため、数学やプログラミングのように、論理的に段階を踏んで考える能力が向上し、ホワイトカラー業務への影響が急速に広がってきています。

 しかし、重要なのは、AIが「部分最適のツール」から、「仕事を進める主体」に変わり始めている事です。質問に対して回答を返すのみだったのに対し、AIエージェントは、ゴールを与えると必要な手順を考え、自ら試行錯誤しながらタスクを進める。つまり、PDCAを回し始めています。この変化のスピードは非常に速く、AIが処理できる仕事の長さは、この半年だけでも急速に伸び、人が1日かけて行っていた業務を、AIが一瞬で担えるようになっています。

進む一次対応のAIへの置き換え
経験を積めない新人育成が課題

──AIオペレータが登場するなど多大な変化が起きそうです。

 コンタクトセンターの業務は、問い合わせ受付から本人確認や振り分け、回答生成、要約、後処理など定型化できる工程が多い。そのため、生成AIとの相性は非常に良いです。海外では、AIオペレータが問い合わせの半数近くを処理している事例も出始め、今後もコンタクトセンターが受ける影響は大きいでしょう。中でも、FAQ対応や返品処理、マルチリンガル対応と、人が担っていた一次対応領域は急速にAI化が進むと考えます。

 ただし、誤解してほしくないのが、「AIが導入される=人が不要になる」ではありません。むしろ、人とAIの役割分担が重要になってきます。例えば、問い合わせ内容の背景を理解することや、顧客の感情への配慮、複数部門をまたぐ調整、最終的な意思決定などは、現時点ではまだ人間に優位性があります。コンタクトセンターは、“問い合わせ処理部門”ではなく“顧客理解の最前線”です。その自負を持ち、AIと人をいかに組み合わせるかが重要になります。

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会員限定2026年06月20日 00時00分 公開

2026年06月20日 00時00分 更新

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