第一生命経済研究所 柏村 祐 氏

2026年4月号 <インタビュー>

柏村 祐 氏

第一生命経済研究所
ライフデザイン研究部 主席研究員
テクノロジーリサーチャー
柏村 祐

(Tasuku Kashiwamura)1994年中央大学商学部会計学科卒業後、第一生命保険入社。2018年、第一生命経済研究所へ出向。2021年、多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了(MBA)。2024年、第一生命保険より転籍。九州大学総合理工学研究院客員教授、多摩大学大学院MBA特別講師。AI×ビジネスの研究・企業研修を多数手掛け、AI×金融の研究にも従事。テレビ・新聞等メディア出演多数。

AIの成果を最大化する組織作り
ポイントは「インセンティブ」の再設計

生成AIは、コールセンターの業務を大きく変えつつある。要約をはじめとしたオペレータの業務支援、チャットボットなど、用途は広がる一方だ。しかし、導入しても成果が出る組織と、そうはなりにくい組織がある。その差はどこにあるのか。AI活用を中堅・中小企業を中心に指南する第一生命経済研究所の柏村 祐氏に、その本質を聞いた。

──コールセンターでは生成AIの使い方が多様化しています。AIを専門に研究するお立場から、現状をどう見ていますか。

柏村 生成AIの導入は、先進企業だけの話ではなくなりました。企業ごとに違いはあるものの、多くの組織が「人手不足を補う便利なツール」と位置づけています。既存業務を効率化し、現場の負荷を軽減する存在として導入している傾向が強い。ですが、生成AIは単なる効率化のためのツールではありません。業務の前提を問い直し、仕事の定義や組織の設計を変えます。

──AIは組織をどのように変える存在でしょうか。

柏村 雇用についてですが、欧米では、必要なスキルや経験などを持つ人材を、職務内容を限定した“ジョブ型雇用”が主流です。そのため、その仕事にAIが導入され、あるいは代替されるなら「人員構成が再設計される」緊張感が生じる。一方で日本は、人材を確保してから職務を割り当てる“メンバーシップ型雇用”が根強い。業務が変わっても雇用は維持される傾向にある。さらに、正社員の解雇には厳しい規制があり、簡単には解雇されません。そのため、AIは“脅威”ではなく“補完”と受け止められやすい土壌といえます。

 しかし、日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中28位、主要7カ国(G7)では最下位です。この事実から、「(AIに)脅威を感じない」こと自体がリスクといえます。“取って代わられる”危機感が薄いままでは、業務の再設計は難しい。大企業ほどその傾向は強いでしょう。もちろんコールセンターにも、十分に当てはまる話です。

見せかけの生産性に騙されるな
「忙しくなるだけの効果」に注意

──コールセンターではAIがオペレータ業務を省力化しています。

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会員限定2026年03月20日 00時00分 公開

2026年03月20日 00時00分 更新

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