自動対話システム市場の現状と展望 2025年版
──デロイト トーマツ ミック経済研究所
CXや生産性の向上を図る手段として定着しつつあるチャット/ボイスボット。デロイト トーマツ ミック経済研究所が調査してまとめた「自動対話システム市場の現状と展望 2025年版」によると、テキストと音声を融合したマルチモーダル化の進展により市場は拡大。2029年度には2023年度の3倍強となる636億円に拡大する見込みという。
ICT/デジタル分野中心の市場調査機関であるデロイト トーマツ ミック経済研究所は2025年4月、「自動対話システム市場の現状と展望 2025年版」をまとめた。
今回の調査は、SaaSのチャットボット(有人チャットを含む)、ボイスボットを提供するベンダー205社が対象。このうち主要なベンダー29社を調査したデータを基に市場の集計・分析を試みた。
なお、SlackやMicrosoft Teams、LINEなどのコラボレーション領域、CRM/SFAシステムなどに搭載の対話機能は対象外としている。
ミック経済研究所のクラウドCRM市場調査において、これまではアプリケーション層のチャットボット市場(ボイスボットも含む)として集計していた。「2023年度以降、AI活用のトレンドとともにベンダーが増加したこと、ヘルプデスクや社内申請の自動化といった社内向けの導入利用が大きく増加していることを鑑み、従来の顧客向け(カスタマーサポート/Web接客)と社内向けを合計した『自動対話システム市場』として調査を実施しました」(担当研究員・佐藤利矩氏)。
レポートによると、自動対話システムの市場規模は、2023年度は前年比30.9%増の182億円。その内訳は、チャットボットが145億円(構成比79.7%)、ボイスボットが37億円(同20.3%)だった。2023年度以降はCAGR(年平均成長率)24.3%で推移し、2029年度には636億円規模に拡大すると予測している。現在、この予測要因は、マルチモーダル化の進展だ。佐藤氏は、「チャットボットとボイスボットの両方を提供しているベンダーを中心として、テキストと音声の統合が進み、相乗的に市場が拡大すると見込んでいます」と説明する。

チャットボットとボイスボット、各市場の推移をみる。
2023年度のチャットボット市場は、前年比21.8%増の145億円。社外向けと社内向けに分類すると、「7:3」で社外向けでの利用が多く、とくにカスタマーサポート用途の利用が目立った。
ただし、近年トレンド化の兆しを見せている生成AIを利用した対話機能については、社内向けでの利用に限定されていることがわかった。佐藤氏は、「生成AIとRAG(検索拡張生成)を組み合わせて、ナレッジ検索として提供しているケースが主流です。今後、ハルシネーション対策が進むことで社外向けでの利用が増え、市場成長につながるでしょう」と予測する。具体的には、生成AIを「質問の意図(用件)の特定」のみに限定して利用し、回答はルールベース(シナリオ)で行うハイブリッド型の対話や、生成AIの出力内容にフィルタをかけて確認・制御する手法が挙げられる。
加えて、新たなトレンドとして台頭している「AIエージェント」が機能として組み込まれていけば、チャットボットの適用領域が拡大し、さらに市場規模を押し上げると考えられる。
これらを踏まえると、今後のチャッボット市場はCAGR22.9%で成長し、2029年度に現在の約3倍の市場規模となる445億円に達する見込みという。
2023年度のボイスボット市場は、前年比85.0%増の37憶円で、市場規模はチャットボットと比較すると小さいが、大幅に成長した。コンタクトセンターの電話対応の一次受け付けや、イレギュラーが発生しにくい定型的な問い合わせといった用途を中心に導入が拡大。コンタクトセンターにおいては、人手不足の深刻化に伴う自動化ニーズが増えており、今後も導入が増えると予測されている。
また、自治体における災害情報通知やサービス業(店舗)における予約受付・リマインドなどへの採用も増える見込みだ。この背景には、定型的な用途向けに機能を絞った低価格帯のプロダクトの増加がある。「用途に応じて、ボイスボットの選択肢の幅が広がっています」(佐藤氏)。今後は、問い合わせの完結を見据えた高価格帯と用途を絞った低価格帯の二極化が進み、それぞれ導入が拡大するとみられる。
さらにチャットボットと同様、AIエージェント機能の組み込みによる適用範囲の拡大が予測される。ボイスボット市場は、今後CAGR38.0%で推移し、2029年度には2023年度の5倍超の191億円規模と予測されている。
会員限定2025年06月20日 00時00分 公開
2025年06月20日 00時00分 更新