米ジェネシス、最新のCXソリューション戦略を発表

ジェネシスクラウドサービス(東京都港区、ポール・伊藤・リッチー代表取締役社長)は、米本社会長兼最高経営責任者のトニー・ベイツ氏、プロダクト最高責任者のオリビエ・ジューヴ氏の来日に合わせ、最新のCX動向とともに、CCaaS(Contact Center as a Service)ソリューション『Genesys Cloud』の戦略を発表した。

冒頭は、リッチー代表取締役社長が挨拶するとともに、直近(2024年2月~2025年1月)の日本市場におけるGenesys Cloudのビジネス状況を説明した。

  

ポール・伊藤・リッチー代表取締役社長
ポール・伊藤・リッチー代表取締役社長

 

売上高は前年比40%弱の成長、ユーザー数も20%弱増加しており、多様な業種のコンタクトセンターでクラウドシフトが堅調に推移している状況を示した。「マイグレーションするだけでなく、(Genesys Cloudが追求している)AI エクスペリエンス・オーケストレーションのニーズが拡大しています」(リッチー氏)。とくに金融業(保険、クレジットカードなど)は、リプレースサイクルを迎えるタイミングで新たなCX(顧客体験)を構築したいという意向が強く、売上高は前年比70%伸長したという。リッチー氏は、「音声のみのコンタクトセンター向けの価格プランであるGC1のユーザー企業が、デジタルチャネルなどの機能をアドオンして利用し始めています」と強調する。日本市場の成長に合わせ、同社の規模も拡大。伴走支援を行うカスタマーサクセス部隊など、増員を図っており、まもなく100人規模に達する見込みだ。

  

日本のビジネス状況
日本のビジネス状況

 

続けて、米本社が発表した最新の調査レポート「The State of Customer Experience(顧客体験の現状)」より「アジア太平洋地域におけるカスタマーエクスペリエンスの現状」を引用。CXにおいて日本の消費者が重視しているのは、「自分の声に耳を傾け、問い合わせの目的を理解している(ワン・トゥ・ワン対応)」という世界共通の項目に加え、「自分の意図を予測し、先回りして最適なソリューションを提案してくれる」というプロアクティブな対応に価値を感じていることを示唆した。リッチー氏は、「AIを活用した支援機能により、これら2つを実現していきます」と述べ、ベイツ氏にマイクを譲った。

  

「消費者が好ましいブランドとのやり取りで最も重視する要素(アジア太平洋地域におけるカスタマーエクスペリエンスの現状より)」
「消費者が好ましいブランドとのやり取りで最も重視する要素(アジア太平洋地域におけるカスタマーエクスペリエンスの現状より)」

 

ベイツ氏は、グローバルにおけるビジネス状況を説明したうえで、今後の開発戦略に言及した。現在、Genesys Cloudは、6500社超の企業に導入されており、2025年度のARR(年間経常収益)は19億ドル。NRR(売上継続率)も120%超と高い成長性を示した。導入企業のうち、45%がAIを活用しており、労働コストを20%以上削減したうえで、2.5倍の収益成長につながっていることを明かし、最新のAIとエクスペリエンス・エコノミーを提供するGenesys Cloudの優位性を強調。「2028年までに400万人のエージェント(オペレータ)がクラウドに移行するとみており、現在オンプレミスシステムを利用している企業が多く、戦略的なプラットフォームへの移行ニーズが高い日本市場は、とくに商機を感じています」(ベイツ氏)。

  

米ジェネシス 最高経営責任者 トニー・ベイツ氏
米ジェネシス 最高経営責任者 トニー・ベイツ氏

 

さらに、エクスペリエンス・オーケストレーションを企業の成長に欠かせないものとして、レベル0からレベル5の6段階を示し、企業の現状とGenesys Cloudの位置づけと将来的に目指すものを図示。今後のアーキテクチャの柱として「自動化」「支援」「パーソナライズ」「最適化」の4領域を挙げた。

 

エクスペリエンス・オーケストレーションのレベル
エクスペリエンス・オーケストレーションのレベル

 

ジューヴ氏は、Genesys Cloudの利用状況に基づいた顧客コミュニケーションの状況の振り返りと4つの柱に紐づく技術面の進捗を共有した。顧客コミュニケーションは、デジタルカンバセーションの成長率が157%と高成長なことに加え、チャットボットやボイスボットの利用拡大、AI機能の活用に触れ、「音声からデジタルへと移行が顕著です。日本市場もトラステッドデジタル、トラステッドAIの方向に進んでいます」(ジューヴ氏)と指摘。

  

米ジェネシス プロダクト最高責任者のオリビエ・ジューヴ氏
米ジェネシス プロダクト最高責任者のオリビエ・ジューヴ氏

 

2025年度のハイライトから見えたデジタルコミュニケーションへの移行
2025年度のハイライトから見えたデジタルコミュニケーションへの移行

 

続いて、4領域における機能と活用によってコンタクトセンターが得られる効果を紹介。ジューヴ氏は、「企業ごとに適したソリューションを提供し、問題解決時間の短縮だけでなく、1件1件の問い合わせに最適な顧客体験を提供し顧客満足度の向上を支援したい」と強調した。さらに新たにリリース予定の機能として「AIスタジオ」「ガイド」を提示。AIスタジオは、自然言語による指示によるバーチャルエージェントのフロー構築やAIモデルのカスタマイズの一元管理、テストなど、「オーケストレーションを支えるもの」(ジューヴ氏)。現場ニーズに合わせたバーチャルエージェントの迅速な活用を実現する。ガイドは、自然言語による指示とビジネス文書やナレッジ、応対履歴に基づいて生成AIエージェントを作成できる。

  

アーキテクチャ戦略の4本柱
アーキテクチャ戦略の4本柱

 

LLMについては、同社独自のモデルやAWS「Amazon Bedrock 」など、タスクに合わせて最適なパフォーマンスかつ最適なコストのモデルを選択できるよう、日本語特化型のモデルも含め、パートナーシップを結んでいく方針。これと並行して、非決定型(自律型)の複数のAIエージェントが協業しながら業務を遂行していける環境の実現を目指す。「Genesys Cloudというプラットフォームを通して、イノベーションを迅速に提供していきたい」(ジューヴ氏)。

会場では、AIスタジオとともにAIエージェント(チャットボット)、バーチャルスーパーバイザー(応対の自動評価)のデモンストレーションも披露された。
 

2025年05月20日 12時00分 公開

2025年05月20日 12時00分 更新

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