元ファーストクラスCAの接客術“おもてなし力”の磨き方 第21回

2025年2月号 <元ファーストクラスCAの接客術 “おもてなし力”の磨き方>

江上 いずみ

コラム

第21回

安心感を与える「アクティブリスニング」

 お客様からのクレームは、どのような企業であっても起こり得る問題です。クレームの初期対応で大切なのは、まず相手の話を聴くことであり、その聴く態度によって、クレームの芽は大きくも小さくもなります。

 今回は、その話の聴き方として大切な「アクティブリスニング」をご紹介したいと思います。

 否定的に話を聴く「ネガティブリスニング」は、人の話を聴くときの態度としてもっとも避けなければなりません。一所懸命、話をしている相手と目をまったく合わさず、あいづちを打たずに黙ったまま無反応でいる、あるいは「ふーん」「へえ」などとあからさまに気のない合いの手を入れる聴き方です。このような態度で聴かれると、話し手は不安を覚え、時には憤りさえ感じるものです。

 「ポジティブリスニング」は、相手の話に興味を持ち、相手を受け入れていることを示しながら話を聴く態度です。相手がこうした態度を取ってくれると、話し手は安心するものです。

 そのポジティブリスニングをさらに一歩進めた態度で聴くのが「アクティブリスニング」です。視線をしっかりと合わせるだけでなく、身を乗り出すように相手の話に興味、関心があることを表現します。話の要所で的確な合いの手とあいづちを打ちます。あいづちは、言葉で反応するだけでなく、うなずいたり身を乗り出したり、時にはのけぞったりするなどのアクションを交え、笑顔を見せたり顔をしかめたりするなどさまざまな表情で反応します。

 さらに相手の気持ちに共感していることを示すため、相手の言葉を自分の言葉に置き換えて復唱します。「私はあなたの話をしっかりと聴いていますよ。そして、あなたの気持ちに寄り添っていますよ」というメッセージを相手に伝えるのが目的です。

 こんな態度で話をきいてもらえると、話し手はさらに話をしたいと思うものです。クレーム時だけではなく、普段の職場においても、人は、自分の話をきちんと聴いてくれる人に親近感と信頼感を持ち、たくさんの情報を与えてくれます。上司が部下の話を目も合わさずにネガティブリスニングで聴けば、部下はどのような気持ちになるでしょう。そういったことは本人はなかなか気づかないものです。しかし、一度そのような態度で話を聴かれてみると、話し手がどのような気持ちになるかよくわかるはずです。相手の言うことを誠実に、真剣に聴くことで言葉の裏にある本音を理解することができます。また、相手を尊重し理解しようとする姿勢により話しやすい雰囲気をつくることができます。心を傾けて積極的に聴くという行為は、相手の心を開き、信頼を得ることにつながるのです。

 クレーム対応のみならず、普段の職場でも、話し手に身体を向け、視線を合わせて、適度なうなづきと合いの手を入れるアクティブリスニングで、相手に気持ちよく話をしてもらう心づかいを発揮していただきたいと思います。

イメージ写真
PROFILE
江上 いずみ
筑波大学・神田外語大学客員教授。Global Manner Springs代表。慶應義塾大学卒業後、日本航空(JAL)の先任客室乗務員として30年間乗務。機内アナウンスに定評があり、JALの機内アナウンス指導クリニック創設者でもある。1987年、皇太子殿下・美智子妃殿下特別便に選出され乗務。現在、大学や医療機関、介護施設、官公庁や企業に講演や研修を行う。著書「JALファーストクラスのチーフCAを務めた『おもてなし達人』が教える“心づかい”の極意」(ディスカバー・トゥエンティワン)「幸せマナーとおもてなしの基本」(海竜社)

2025年01月20日 00時00分 公開

2025年01月20日 00時00分 更新

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