コラム
第153回
コンタクトセンターのベストプラクティスを発表する「Contact Center World」に参加した。登壇内容のうち、もっとも目立っていたインドネシアの発表を紹介したい。
インドネシアの人口は、2.8億人というから日本の2倍以上で、2030年まで人口が増え続けると予想されている。さらに特筆すべきことは、人口ピラミッドは壺のような形をしており、4人に1人がZ世代という点だ。その中で、インドネシアで最も総資産が多いとされる民間銀行BCA(Bank Central Asia)による事例発表がいくつもあった。
BCAのコンタクトセンターは4500席もあり、多言語でさまざまな宗教に対応している。当然ながら、銀行アプリとともにコンタクトセンターのデジタル化に力を入れているものの、ビジネスの成長とともにコール数も伸び続けている状況だ。課題のひとつは、Z世代の人材を採用することにある。そのため、SNSを利用してセンターで働く楽しそうな姿をショート動画で紹介している。ワーク・ライフ・バランスやキャリアパスにも触れており、センターの魅力をZ世代に伝わるように工夫していた。コンタクトセンター対応においても、SNSを重要なチャネルとして扱っており、資産形成層に銀行のサービスを丁寧に説明している。
このように海外においても、デジタル化の推進や生成AIの活用など日本と同じ課題があるようだ。また、顧客の行動に注目し、顧客との関係を強化・深化させるCX戦略を打ち出している。登壇したアジア諸国のコンタクトセンターの多くが、ここ5年程で大きくビジネスを成長させていた。日本のコンタクトセンター業界が20年かけて経験してきたことを一気に体験しているようだった。むしろ、応答率重視のマネジメントのもと、呼量削減に取り組む日本のセンターを追い抜いているほどの印象だ。そして、セルフサービス化は顧客のニーズに応えるための投資として必須であるものの、顧客サポートのための電話対応は必要不可欠であると言っている。電話番号を隠しているケースすらある日本のカスタマーサービスを恥ずかしく思った。それでも、彼らが共通して使っていた日本語がある。「カイゼン」である。コンタクトセンターで生じる日々の課題を解決しながら前進していくことの重要性のアピールである。プレゼンテーションの中に、この言葉が出てくると、日本を誇りに思った。
それぞれのマーケットに合った形でカスタマーサービスが存在している。諸外国では、多言語・多民族のもとセンターが形成されている。顧客ニーズの理解や期待値の把握など顧客対応の難しさもあるし、センター内のチームビルディングにも苦労があるだろう。多様性を尊重しながらセンター運営していくのは、大きな課題である。その点、日本の場合は、効率的な運営がしやすいと言える。ただし、SNS活用によるZ世代の取り込みについては、学ぶことが多い。飛びつきが早く、諦めも早いとされるZ世代をどのように顧客として、センターで働く仲間として魅了していくかが鍵であろう。2024年11月の兵庫県知事選においても、SNS上での支持が明暗を分けた。前知事の斎藤氏の街頭演説の動画が拡散し若年層の支持を集めたというニュースも記憶に新しい。
2024年12月20日 00時00分 公開
2024年12月20日 00時00分 更新