コラム
第147回
かなり昔の話になるが、スマホがなかった時代、旅行に行くときも単なる待ち合わせのときも、事前に目的地や集合場所を詳細に決めていた。雨天や時間に遅れた場合なども想定して準備したものだ。今は何かあったらスマホで連絡して、その場で判断できるから、きちんとした計画や準備がなくても物事が進められる良い時代ではある。しかし、普段の生活の中で、計画を立てて実行するという機会が減っていると思う。
システム開発においても、クラウドサービスの場合、計画を立てなくても導入が簡単にできると思うかも知れない。契約すれば、すぐに使えるサービスも多い。こんなことが影響しているのか、ユーザー企業もベンダー側も、プロジェクト企画力や推進力というものが、以前に比べて弱くなっている気がする。顧客サービスのような競争力を持つもの、オリジナリティーがあるものは、標準機能と標準サービスだけでは成立しない。システム連携やカスタマイズなど自社の事情に合わせたプロジェクト企画と、その推進が必要になる。だが、その認識が不十分なケースが散見される。忙しさを理由にプロジェクトの企画を先送りしたり、必要な予算を取りに行かなかったり、期限切れになっても課題に手をつけなかったり、自分で調べて見識を深める努力をしなかったり──。プロジェクトが頓挫した、稼動後に大規模トラブルに見舞われた、というニュースの背景には、こんな事情があるのかも知れない。
外部からユーザー企業を見ていると、企画が一向に進まない状況に苛立ちを覚えることがある。しかし、どの企業にもそれぞれの社内事情というものが存在する。会社には社内規定、つまりルールがあり、その枠の中で工夫している。歴史のある大きな会社ではルールがより複雑で厳格な傾向がある。だが、それに従って仕事していれば必要なプロジェクトの企画ができて、成功するということではない。予算が足りないとき、どうすれば上司や経理部門を説得できるのか。初めてのクラウド利用において、どのようにセキュリティ基準を満たし、関係部署の合意を取り付けるのか、論理性に加えて知恵や情熱も必要だ。ルールを尊重しつつも周囲を巻き込むエネルギーを持ち、周囲からの信頼も得てリーダーシップを発揮している人は、外部から見てすぐに分かる。このように企画力のある人が必要だ。
これまでは、コンタクトセンターに関わる人にリーダーシップを発揮するタイプの人は少なかったと思う。決められたルールの中で、どう顧客対応するのかが主眼だったかも知れない。今は、もうそうではない。簡単な問い合わせは減り、業務も問い合わせ内容も複雑になっている。トークスクリプトを複雑に組めば、問題がすべて解決するということでもない。スクリプトが立派過ぎるとオペレータはルールに従うことだけを意識し、思考停止して顧客の声に耳を傾けなくなってしまう。目の前の対応に追われるだけでなく、決められたルールの中でもがきながらも、必要な声を挙げていく。これからは他部署や他人のせいにするのではなく、自ら企画し推進することが求められる。オペレータ、SV、マネージャー、それぞれの職位に合った企画力と推進力が必要だ。
会員限定2024年06月20日 00時00分 公開
2024年06月20日 00時00分 更新
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