わたちゃんのかすたま~えくすぺりえんす 第99回

2023年5月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

<著者プロフィール>
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す
最近の悩み:昔は痩せの大食いだったのが、最近は小食の小太りになっていること

エフォートレスとエモーショナルの
ちょうどいい関係

ISラボ 代表 渡部弘毅

 「売上達成できないんなら、飛び込み100件まわってこんかい!」と冷徹に檄を飛ばす、懐かし昭和の営業経験のある、わたちゃんです。そんな上司に限って人情味があって涙もろかったりするのですよね。

 企業の競争力の源泉が、モノからコトにシフトし、企業と顧客のさまざまなタッチポイントにおいてカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上が重要になってきました。顧客満足やロイヤルティ向上には、CXを2つの視点で施策を講じていくことが効果的です。

 そのうちのひとつが、「エフォートレス体験」。顧客がストレスなくサービスを利用できる環境を整えることです。もうひとつが「エモーショナル体験」。顧客との感情的なつながりを構築し、ブランドへの忠誠心や満足度を高めることを目指すわけです。企業は、この2つの体験をバランスよく取り入れることで、顧客にとって魅力的なCXを提供できるのです。

 そして、この「バランスよく取り入れる」ためのサービス設計が重要となります。その指針にできるのが、顧客が期待するサービス品質です。サービス品質は、「好印象」「正確性」「迅速性」「共感性」「柔軟性」「安心感」の6つの品質に分けられます。そして、顧客の事前期待に合わせて6つのサービス品質を適切に発揮できれば高い満足が得られます。

 正確性、迅速性を重視すべきサービスとは、エフォートレス体験型サービスであり、着実に早く実行できなければ不満が高まるものです。コンピュータによる自動化などでエフォートレス体験向上を追求することで、顧客は満足が高まる類のものです。

 一方、共感性、柔軟性、安心感が重要なサービスは、エモーショナル体験型サービスであり、顧客の心に寄り添った対応ができると満足が高まるサービスです。そして人が得意とするサービス品質です。したがって、ヒューマンタッチなサービスを推し進め、エモーショナル体験を向上させると、顧客満足は高まります。

 このように、顧客が期待するサービス品質の視点で、エフォートレスとエモーショナルのバランスよい体験施策を設計していくことが効果的です。

 ということで、昔、お世話になったあの熱血営業部長は、決して二重人格ではなく、バランスよく冷徹さと涙もろさを発揮していたのだと、今になって分かりました。ただ、決して計算してやっているのではなく、人間としての素のままで、たまたま良い関係だったに違いありませんが。

図 6つのサービス品質を考慮したサービス設計

図 6つのサービス品質を考慮したサービス設計

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2024年01月31日 18時11分 公開

2023年04月20日 00時00分 更新

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