2022年12月号 <特集>

特集扉

採用難/CX/在宅シフトの行方
コールセンター実態調査2022

Part.1 <基礎データと人材採用>

コロナ以前よりも深刻化する人材不足
過半数が課題視する「採用・育成」

新型コロナ禍は、在宅シフト、ITソリューションのクラウド化、オペレーションやコミュニケーションの自動化など、さまざまな変化をコールセンター運営にもたらした。今年の「コールセンター実態調査」からも、そうした変化に対応しつつ「顧客満足」「ロイヤルティ」の向上に取り組む企業の姿が垣間見える。回答結果から「採用」「カスタマーエクスペリエンス」「在宅」の3テーマを抽出、検証する。

 今回の「コールセンター実態調査」は、2022年7月に郵送およびオンラインで実施。205社の回答が寄せられた。その主な傾向は図1の通りで、とくに「人手不足/採用難」の深刻化は、顧客満足やカスタマーエクスペリエンス向上というコールセンターの存在価値を示す取り組みにも大きな影を落としつつある。

 「コールセンターの運営課題」に関する回答をみると、昨年の回答から急増したのが「オペレータの採用・育成」で35.2%から55.2%、「スーパーバイザー(SV)の採用・育成」も40.8%が47.1%、「オペレータの定着率向上」は28.5%が41.4%となっている。

 回答各社の採用難対策は、その多くが「離職予防」と「自動化による呼量削減」に集約されているのも大きな特徴だが、具体策としては目新しい取り組みは少ないのが現状だ。

図1 今年の「実態調査」の回答傾向

図1 今年の「実態調査」の回答傾向

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Part.2 <カスタマーエクスペリエンス>

目的は「CS向上」「ファン作り」も
チグハグ感強い“KPI”の設定

カスタマーエクスペリエンス(CX)向上を目標とするコールセンターは増えている。一般的にCX向上の目的は、「リピーターやプロモーターを増やすロイヤルティ向上」であり、本調査の回答企業も多くは「ファン作り」を目的と掲げている。しかし、その実践度を示すKPIとしては「応答率」という回答が最多を占め、経営貢献を示すまでには至っていない可能性が高いことがわかった。

 図2は、実態調査の回答企業に「CXについて」聞いた結果だ。「経営からのミッション」が38%、「現場のスローガン」が35%と、認知率や取り組み比率はかなり高い。

 CX向上の目的は、81.8%が「顧客満足度の向上」を挙げている。以下、「自社や自社製品のファンづくり」が67.3%、「リピーター獲得」が50.9%と続いている。いずれの目的も、その達成度が可視化できれば大きな経営効果をもたらす部門と主張できるはずだ。しかし、その可視化の手段であるKPIは、「応答率」という回答が最多であり、カスタマーエクスペリエンス全般を可視化しているとはいえない結果といえる。

図2 カスタマーエクスペリエンスについて(n=168)

図2 カスタマーエクスペリエンスについて(n=168)

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Part.3 <在宅シフト>

約半数が「在宅シフト」を実践も
目立つ“有期契約社員はNG”

2000年代当初から、「技術的には可能」とされていた在宅センター。2010年代の官民をあげた「テレワーク普及」の活動でも採用企業は皆無に近かったが、パンデミックによってその重い腰がようやく上がったかに見える。しかし、実際は主力である有期契約社員の在宅化がなかなか進まず、業務委託先に至っては「ほぼ無視」に近いという実態が浮き彫りとなった。調査結果から現状と課題をまとめる。

 図3は、「(調査を実施した)2022年7月現在、在宅センターを運用しているか」と聞いた結果だ。52%が「運用している」、48%が「運用していない」で、まさに真っ二つに分かれている。なお、「在宅運用の可否」についても聞いているが、「可能」が56%、「可能だが実施したことはない」が13%となっている。

 一見、進んだかに見える在宅シフトだが、実態調査で詳細を見ると、多くの課題が浮かび上がる。それは、(1)在宅可能なスタッフの属性に偏りがある。具体的には有期契約社員の多くは在宅できていない、(2)情報セキュリティを不安視する傾向は依然として強い、(3)「働きやすさ」に対する取り組みがあまり考えられていない──などだ。

 (1)の採用難対策として在宅化が有効なのは、人事や採用の専門家が指摘し、それは求人に対する応募でも実証されている。CX向上には、優秀な人材の確保は欠かせない。その意味でも在宅シフトは積極的に進めるべきだ。

図3 2022年7月現在、在宅センターを運用しているか(n=193)

図3 2022年7月現在、在宅センターを運用しているか(n=193)

 

 

Column

Suggestion 1:採用

全業種で必要な「安心・安全・安定」の訴求
“求職者を軸とした働き方“が成功のカギ

WaGaGoToプランニング代表 神宅 謙一郎 氏

Suggestion 2:カスタマーエクスペリエンス

CSの延長線上にCXはない
最適な「KPI」設定に大きな課題

デロイト トーマツ グループ パートナー 住川 誠史 氏

Suggestion 3:在宅センター

「セキュリティ」は十分に対処できる!
センターの「存亡」を左右する在宅制度

プライムフォース 代表取締役 澤田 哲理 氏

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年11月20日 00時00分 更新

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