2022年2月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

提案依頼

秋山紀郎

 システムの新規導入や更改、コールセンター業務の外部委託など、さまざまな目的のために外部のベンダーに対して提案依頼が行われる。実現したい業務や必要なシステム要件などを記載して提案依頼書(RFP:Request for Proposal)として提示、見積もり金額とともに提案を受ける流れとなる。

 最近、RFPの作成や選定の支援をさせていただく機会が多い。それだけ、RFPに関して悩むユーザー企業が増えている。RFPには何を記載したらよいのか、どこまで深く記載すべきか。また、RFPを提示して回答を得た場合でも、ベンダー各社の提案内容や金額がバラバラで比較ができないなどの問題に直面している。なぜ、このようなことが起きているのか──。従来に比べて、コンタクトセンターのサービス、またそれを実現するソリューションも高度化、複雑化していることが背景にあると考えられる。つまり提案に必要となる要件を決めて書き記すのが難しいのである。その結果、音声認識システム、ボイスボットのように、単品買いのRFPを書くケースが見られる。しかし、これをやると本来の業務の目的を果たすことができなかったり、採用後に想定外の費用がかかったりする。これらは、もはや製品というよりはサービスであり、どのように活用するのか熟考する必要がある。導入目的や用途が不明瞭なまま、単品買いのRFPを提示してはならないのである。

 例えば4人で箱根に行くとしよう。このとき、いきなり箱根までの交通手段を見積もる人はいないはずだ。出張なら早く着く電車がいいが、家族旅行ならバスでもいいかも知れない。つまり、なぜ・どのように箱根に行きたいかに基づいて、交通手段というサービスを利用する方法を選ぶはずだ。

 RFPを適切に提示して回答を得たあとも、肝心な比較のプロセスがある。見極める目を持った担当者のいる部門が、実行可能な提案内容を選ぶのが理想だ。しかし、選定過程に私利私欲が入らぬよう、調達部門や経理部門などの別組織が選定プロセスに関わるケースがある。その結果、実行担当者の思惑と異なる提案が選ばれ、不幸を招く事象も見られる。価格が低すぎて、内容も悪いものが選ばれるパターンだ。実行責任を持つ部門が最終決定権を持たなければ、プロジェクトの成功は難しいと思う。過去には、経営層が自分の思惑で業者を選定して、実行責任を現場に押し付けるケースも見たことがある。こうなると、プロジェクトは成功しない。ほぼ確実に、稼働時期が遅れるか、品質低下や予算超過を引き起こす。私が見たケースでは、結局、担当者がプロジェクトの途中で転職してしまった。

 実行責任を持つ現場部門には、相応の知識も勉強も必要だ。そうでなければ、安易なものに手を出したり、成功事例の一局面を信じ込んで導入してしまうという問題も発生する。また、形式的な相見積もりでベンダーを振り回す行為もよくない。結局は信頼を失うことになり、自分に返ってくる。

 提案依頼という業務を軽く見てはいけない。プロジェクトが混乱する要因の多くが見積もりのミスにある。見積もりミスで始まると、抜本的な対策を打つのは極めて難しい。誰もが分かっているはずなのだが。