2021年8月号 <特集>

特集扉

自動化の限界を突破する!
「ボイスボット」の成果

Part.1 <現状と課題>

デジタルシフトの「大本命」、登場!
電話を自動化する仕組みと運用のコツ

自己解決促進のためにチャットボットへ誘導するのは限界がある──デジタルシフトに取り組むセンター・マネジメントの多くが、この悩みを感じているはずだ。そこで大きな威力を発揮するのが、「ボイスボット」である。成否を分けるのは、導入後のチューニングと、自然かつシンプルに目的を達成できる応対フローにある。

 ボイスボット活用が、本格化している。昨年、多くのコールセンターが3密防止の一環で稼働席数を減らさざるを得なくなり、応答率が悪化したことを受け、ボイスボットの導入が一気に進んだ。顧客側も、企業のボイスボット活用にはポジティブな反応を見せている。ボイスボットを提供するAI Shiftの調査によれば、「解決するのであれば、必ずしも人の応対でなくていいと思う」という回答が68%を占めた。

 従来、「CS(顧客満足)を下げる」といわれ、導入に対して後ろ向きな企業も多かったIVRと異なり、ボイスボットはCSを下げるどころか、むしろオペレータの代わりに解決に導くことで満足を得られるツールになり得るようだ。コールリーズンにもよるが、多くのコールセンターで呼量の2〜5割はボイスボットで自動化できるといわれ、ROIが算出しやすいツールといえる()。もっとも、これはボイスボットがオペレータの代わりとして機能することが条件で、その成否は「対応完了率」次第ということだ。“使える”ボイスボットの設計や運用のポイントを検証する。

図 ボイスボット導入のROI試算(例)

図 ボイスボット導入のROI試算(例)

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Part.2 <ケーススタディ>

「コールリーズン分析」「会話設計」「チューニング」
エラー検証の反復で“エフォートレス”を図る

ボイスボットはすべてのコールに応答できる仕組みではない。自動化すべきコールリーズンを見定める作業が不可欠だ。そのうえで、CXを考慮した無理のないフロー設計を試みる。具体的には、顧客に自由に発話させるのではなく、認識率の高い言葉を促す設計がポイントとなる。資料請求や顧客情報の変更、注文、株価照会などにボイスボットを適用した先進4社の取り組みを検証する。

CASE STUDY 1:三井住友海上あいおい生命保険

「常に忙しいセンター」の救世主!
人手不足解消に導く自動化の成果

 給付金の請求手続きは、保険会社に入る問い合わせのなかでも、最も高い接続品質が要求される。ただし、個人特定さえしてしまえば、書類を送付する受付のプロセスそのものは定形フローのひとつだ。三井住友海上あいおい生命保険は、顧客に有人/自動対応を選択してもらったうえで、自動対応をボイスボットで完了している。採用したのはBEDOREの「BEDORE Voice Conversation」で、利用状況に応じたマメなチューニングで精度を向上。入電全体の15%の自動化に成功し、応答率とサービスレベルといった窓口全体の接続品質は大きく向上している。

CASE STUDY 2:損害保険ジャパン

顧客の発話を“コントロール”する!
完了率高める「クローズ質問」と「ルール」

 損害保険ジャパンは、2020年3月、伊藤忠テクノソリューションズが提供するコールセンター向け自動音声対応ソリューション「CTC-AICON(シーティーシーアイコン)」を導入し、自賠責保険の「お客さまサポートデスク」で運用を開始した。シナリオは、自動応答での完結率を高めるため、顧客が正確に発話できるよう質問の仕方に工夫を施した。原則、「はい/いいえ」などで回答できるクローズ質問で、認識に課題が残る顧客側のフリー発話を防止。また、電話番号の発話を促す際の音声ガイダンスを「7桁の数字でお答えください」とするなど、“発話のルール”を設けることで顧客の発する言葉をコントロールし、音声認識の精度向上を図った。

CASE STUDY 3:コープこうべ

「買い忘れ」対応を自動化
注文完了率70%を実現

 食品や日用品などの宅配サービスを展開するコープこうべ。情報デジタル推進部の川崎一裕氏は、「若い利用者の方を中心にWebでの注文も増えていますが、長年ご利用いただている組合員の多くは、慣れ親しんだOCR注文用紙もしくは電話注文センターでのご注文が大半です」とチャネルの利用状況について説明する。

 電話注文は、注文用紙提出後に「買い忘れ」に気が付いた組合員が利用するのに役立っている。ここで、ボイスボットによる「無人注文」を展開している。川崎氏は、「老朽化した旧システムはユーザビリティに課題があり、一週間平均2500件ある入電のうち、注文完了できた比率は35%程しかありませんでした」と振り返る。TACTが提供する「AIコンシェルジュ」の導入後、質問の仕方やカスタマージャーニーを意識したフローチャートなど工夫を重ね、現在は注文完了率が70%にまで向上している。

CASE STUDY 4:みずほ証券

月22万コールの5割を自動化
「黒電話」にも対応するデジタルシフト

 みずほ証券の顧客は60歳以上が中心で、スマートフォンを持っていない顧客も少なくない。なかには、「黒電話」から問い合わせるケースもある。「都会から離れた支店のお客さまの中にはWebには馴染めず、このサービスを利用していただいている方も一定数いらっしゃる」と、ダイレクトチャネル事業部 東京第二コンタクトセンター長の楠見潤一氏は、Webによる問い合わせ対応の自動化が難しい理由を説明する。

 同社では月に22万件(2021年5月)の入電数のうち約5割を占める「株価照会の問い合わせ」を、ネットサービスへの誘導ではなく、ボイスボットで対応することで自動化に成功している。

 実は、自動化の範囲を「投資信託の基準価格」にまで広げようとしてツールをリプレースしたこともあった。しかし、ボイスボットによる自動化には向いていないことが判明し、コールリーズンごとに使用ツールを使い分ける重要性に気付いたという。楠見氏は当時の状況を振り返って説明した。