2021年7月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

良い点

秋山紀郎

 ワクチン接種が遅れている日本で大規模接種会場での受け付けや接種が始まるなど、ようやく前進しつつある。しかし、集団接種会場シミュレーションでの混乱や、予約枠を優先確保するよう便宜を図った、冷蔵庫が壊れてワクチンが廃棄されたなど、重箱の隅をつつくような報道が多いのが残念だ。多くの人が、このようなネガティブなニュースに沸き立つのは事実かも知れない。ワクチンのシステムにおいて、虚偽番号で予約ができるなどは確かにお粗末だとは思うが、接種予約代行を装う不審電話の発生などに注意を促す内容や、再発防止に役立つニュースをもっと報じてほしいと思う。SNSについても、批判的な内容の投稿の方が目立つし、注目を浴びる。人の防衛本能のひとつである、「自分へのストレスを相手に向けることでかわす」ということと関係があるのだろうか。スポーツ選手や著名人に対して上から目線で批判する人は、その領域にチャレンジした経験がないのだと思う。

 ニュースもSNSも、もっとポジティブな気持ちになれるような情報の拡散に期待したい。例えば、なぜ山梨県で感染者が少ないのか、和歌山県のワクチン接種率が高いのかなど、成功事例を伝える内容はあまり取り上げられていない。ワクチン接種を担当する政府関係者だって、一生懸命やっているはずだ。悪い報道ばかり見聞きしたのでは疲弊してしまう。良い取り組みが次々と紹介されれば、みんな前向きに頑張れる。

 以前、私がコンサルティング会社に在籍していたとき、部下を評価するあるマネージャーの評価シートを読んでいた。評価シートには、良い点と課題を3つずつ記載する欄があるのだが、課題については情景が目に浮かぶほど具体的な例を含めて3つ記載があったが、良い点は、頑張っている、クライアントに対して誠実、の2点だけだった。課題の詳細さに対して良い点があまり書けていない。つまり、良い点を見つけることが不得手なマネージャーなのである。実は、このケースに限らず、良い点が十分に書けていない、良い点を見つけられない管理者は多い。部下のパフォーマンス評価においても、課題を見つけることは容易だが、良い点を見つけるのは難しいのである。

 似たようなことを多くのコンタクトセンターのスーパーバイザーが経験していると思うが、オペレータへのフィードバックも同じだ。良い点を見つけるのは難しい。良い点を見つけるには、その分野に能力を持っている必要があり、長く関わった経験がなければ、どのように良いのかを評価できないのである。例えば、私は野球の専門家ではないから、大谷翔平について、よく頑張っているとは言えるが、具体的な長所や褒めるポイントを見つけることはできない。

 良い点を見つけるには、自分がその領域に明るくなければならないのは前提だが、そのうえで評価する具体的な視点を数多く用意しておき、その中から部下の行動を照らしてみるとよい。管理者の役割は、部下の良い点を伸ばし増やすことだ。モニタリングシートのような画一的なものだけでは、良い点は発見できない。人格や性格面の評価は避け、具体的な行動に関する良い点を伝えることで、次に向けて前向きになれる。