2021年1月号 <特集>

特集扉

在宅コンタクトセンターを実現する
「ITの選び方」

Part.1 <現状と課題>

セキュリティだけがボトルネックではない
ITで解消できる「在宅シフト」の課題

国内コンタクトセンターの在宅化率は、約40%に留まる(編集部調べ、2020年7月段階)。実現した企業とそうでない企業に、業種や規模の偏りはさほどない。個人情報を扱う業務でも、必要なセキュリティ対策を講じれば、在宅シフトは可能だ。まずは、どの業務、チャネル、コールリーズンをリモートワークに移行するか定義することが重要。ITシステムの選定プロセスを検証する。

 コールセンターの在宅シフトを進める際、ボトルネックとしてよく挙がるのが、(1)従来の環境の維持、(2)セキュリティリスク──の2つだ。

 クラウドPBXを新たに追加利用する場合、既存センターの電話番号が利用できない。既存の番号を変えたくない場合は、既存のPBXに着信した通話を携帯電話へ転送するなどの方法がある。

 セキュリティリスクの抑制については、個人情報を扱うコールセンターの場合、仮想デスクトップ(VDI:Virtual Desktop Infrastructure )を採用し、各種システムにはVPN(Virtual Private Network)で接続する方法が一般的だ。この他、PC自体の設定でもリスクを軽減できる。例えば、USBメモリなど外部記憶媒体のアクセス制限は、拠点型運営においてももはや常識だ。Windowsを使っていれば、アクティブ・ディレクトリで各種操作を制限することも可能。パスワードだけではなく生体認証も加えられる多要素認証デバイスを用意することでもセキュリティを強化できる。

 通信インフラのクラウドシフトとセキュリティ確保が実現できれば、在宅シフトは可能だ。しかし、これはあくまでも“必要要件”に過ぎない。一時しのぎの在宅シフトであれば十分かもしれないが、品質を維持できる仕組みが整わなければ、恒常的に在宅センターを運用することは難しい(図1)。エスカレーション対応やトレーニング、メンタルケアなど、これまで当たり前に行ってきたマネジメントをリモートで実践できる環境が必要になる。

図1 恒常的な在宅は必要なITが増える

図1 恒常的な在宅は必要なITが増える

※画像をクリックして拡大できます


Part.2 <ケーススタディ>

「クラウドシフト」は必須条件!
3社に見る“スピード優先”の取り組み

在宅シフトのためのIT投資とソリューション選定に、全社共通の「正解」はない。東京個別指導学院、アシスト、ロイヤルカナン・ジャポンの3社は、いずれも他社に先駆けて迅速な在宅シフトに成功したが、共通点は「クラウド基盤の採用」という要素のみ。各社各様のソリューション選定と既存ツールの再利用など、その「使いこなし」を検証する。

CASE STUDY 1:東京個別指導学院

クラウド化とペーパーレスの推進で
オフィスと遜色ない環境を実現

 東京個別指導学院においてスムーズなクラウド化が可能になった要因は、従来より進めてきたペーパーレス化だ。マニュアルやキャンペーンチラシなどを電子化していたため、リモートでも情報の管理が容易になった。また、モニタリングシステムを活用することにより、オペレータのメンタル面やコミュニケーションと同時に、セキュリティをカバーする運用が功を奏した。

CASE STUDY 2:アシスト

顧客企業のビジネスを止めない!
迅速なクラウドシフトで在宅化を実現

 アシストは、「Amazon Connect」を活用することで、リモートでも有人による電話受付体制を維持した。現在はハイブリッドの運用で、感染状況によりいつでも体制を変更できるオペレーションを実現している。リモートにおける情報共有を自社でも取り扱う動画プラットフォーム「Panopto」で作成した動画で行うようになったきっかけから、顧客サポートに転用するなど、新たなビジネスを睨んでいる。

CASE STUDY 3:ロイヤルカナン・ジャポン

“従来のやり方”にこだわらない!
実装機能の「優先順位」を迅速に決断

 ペットフード大手のロイヤルカナン・ジャポンは、「対応窓口を止めないこと」を最優先事項とし、一時期は電話によるサービスをクローズし、メール対応に集中することで迅速なテレワーク移行を実現した。電話の再稼動を一刻も早く実施するため、導入したクラウドコンタクトセンターシステム(コムデザインの「CT-e1/SaaS」)は、CRMシステムを操作する仮想PCとは別のPCで操作することを決断した。これはグローバル本社の承認を得るのに相当な時間がかかることに起因する。優先事項を見極めて、何からどう対応するのか取捨選択することが重要と考えた。結果的に、現段階では在宅シフトのため導入した新たなツールやシステムは、もともと導入予定だったクラウドPBX以外にない。「Microsoft Teams」や「PowerPoint」など、既存のツールをうまく活用し、柔軟なルールやオペレーションの変更によって、情報共有やVOC活動なども問題なく実践できている。


Part.3 <ソリューション>

「その場しのぎ」の在宅化から脱却する!
柔軟な運営/働き方を永続するITの機能

音声品質の維持、情報セキュリティの確保、オペレータ業務のモニタリングや支援。在宅環境において、「従来とまったく同じ体制や手法」は、ほぼ通用しない。それでも、限りなく近づく、あるいは場合によっては従来型以上の効果を発揮するためのITソリューションは存在する。何を重視し、何を変えるべきか──主要ソリューションベンダーが提供する機能から在宅シフトを検証する。

 在宅コンタクトセンターを恒常的に運営するためには、SV、オペレータともに、「物理的に離れたうえに、ネットワーク品質をはじめ個々に異なる執務環境での業務」であることを踏まえたITソリューションの整備が不可欠だ。とくに電話応対は、通信環境における優先事項(音声品質など)と、電話番号の継続利用意向、アウトバウンドや転送の発生の有無によって、選ぶべき音声基盤が変わってくる。主要なコンタクトセンタープラットフォームの特徴とともに、セキュリティの担保、応対・マネジメントを支援するソリューションを紹介する。

図2 在宅コンタクトセンターの課題と主な解決策

図2 在宅コンタクトセンターの課題と主な解決策

※画像をクリックして拡大できます