2020年3月号 <特集>

特集扉

“人のスキル”に依存しないCX
ナレッジマネジメントの成果

Part.1 <提言>

コールリーズン分析から「鍛え方」まで
“使われるFAQ”を作る4つの要諦

迅速な問題解決と、同じような問い合わせに対応し続けるルーティンワークからの脱却。カスタマーエクスペリエンスとエンプロイーエクスペリエンスを両立する最強の手段が、「ナレッジマネジメントの強化」だ。顧客からの問い合わせ内容を可視化、分析し、適切な自己解決に導く。これがコンタクトセンターの新たな役割であり、マネジメントにとっての急務といえる。効果的な手法を検証する。

 ナレッジマネジメントのシステムやルールを見直す企業が増えている。背景には、問い合わせチャネルを電話からメールやチャットにシフトする「ノンボイス化」や、チャットボットに代表される顧客対応の自動化がある。いずれも、FAQをはじめとしたナレッジの強化が欠かせない。また、商品・サービスが複雑になると同時に人手不足が加わり、新人オペレータに対する「知識を詰め込む教育」に限界が生じ、知識や経験をカバーするナレッジシステムの強化が必要不可欠となっている。

 “使われる”ナレッジの要件は、(1)正確で新鮮、(2)必要十分な情報量、(3)見つけやすさ、(4)わかりやすさ──の4つだ()。(1)正確性と鮮度、および(2)情報量を保つためには、ナレッジを継続的に管理し改善する仕組みが不可欠だ。(3)見つけやすさや、(4)わかりやすさを追求するうえでポイントになるのが、「誰が何のために使うのか」を明確に定義しておくことだ。加えて、何を目的に閲覧するのか。つまり、コンタクトリーズン(問い合わせる理由)を捉えることも、必要な情報を精査するうえで必要となる。

 Part.1では、ナレッジマネジメントのフレームワークのひとつであるKCS(ナレッジセンターサポート)をはじめ、ナレッジの鮮度や見つけやすさ、わかりやすさを維持するための手法と課題を検証する。

図 “使われる”ナレッジの4大要件

図 “使われる”ナレッジの4大要件

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Part.2 <ケーススタディ>

『誰』が『何のために』使うのか
ナレッジ構築に不可欠なCXの検証

ナレッジは、正確なだけではなく「使いやすく」なくては意味がない。Part.2では、「見やすさ」「探しやすさ」のための工夫について事例をもとに検証する。HTMLでFAQを見やすく改善したみずほ銀行。FAQの利用範囲を全社に拡大したPGF生命。“顧客が使う言葉”でQを表現したベルトラ。3社に共通するのは、徹底した利用者視点に基づくコンテンツの作成と見せ方の工夫だ。

CASE STUDY 1:みずほ銀行

ポイントは検索精度だけではない!
HTML化で「見やすさ」を追求

 FAQの検索支援による効率化は、内容や検索の精度、見せ方の工夫によって効果が大きく変わる。IBMのAIソリューション「IBM Watson」を活用するみずほ銀行では、検索精度についてはIBMと二人三脚で、内容や見せ方については現場の恒常的な取り組みによって精度を維持している。具体的には、HTMLの機能を活用することで、見やすいFAQサイトを追求。他のページにリンクを貼ったり、ページ内ジャンプや折り畳み機能、タブによる切り替えといったさまざまな機能で見やすさを工夫している。

CASE STUDY 2:プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険

新米社員も自己解決できる!?
「ナレッジバンク」の全社活用の効果

 プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険(PGF生命)は、老朽化していたFAQシステムを刷新する際、コールセンターのみならず、全社で活用できる仕組みを目指し再構築した。同社は、顧客からの問い合わせに対応するコールセンターと、代理店に対し研修や販売促進のサポートを行うホールセラー(社員)向けのホールセラーデスクを運営している。従来のナレッジシステムは、コールセンターやホールセラーデスクの利用に限定し、ホールセラー本人が利用することはなかった。営業企画とシステム運用管理、コールセンターから担当者を集め、関連部署を巻き込んで、全社的に活用できるナレッジシステムを構築した。

 利用を推進するうえで最も重視したことは、「フィードバックの反映」だ。項目ごとに設定したアンケートのコメントをもとに、常にFAQを更新することで、「情報の変化の見直し」や「更新の漏れ」のないよう心掛けている。その努力が功を奏し、0件ヒット率は目標を維持。ホールセラー1人あたりの入電数は、24.6%も減少した。

CASE STUDY 3:ベルトラ

どういう状況で困っているのか
Qは「顧客の言葉」で表現する!

 オプショナルツアー(アクティビティ)の予約サイトを運営するベルトラ(東京都中央区、二木 渉社長兼CEO)では、(1)顧客が使う言葉でQやAを表現する、(2)よく調べられているにも関わらず、離脱が多い(解決していない)FAQの抽出と改善を徹底する、などに注力。結果、離脱率が半減し、問い合わせ件数を予約件数で割った「問い合わせ率」の低減を実現した。

 同社のFAQは、「支払い方法」「現金」「キャンセル」など関連キーワードでタグづけして管理しているのが特徴。QにもAにも含まれていないワードで検索したとしても、タグにヒットすれば表示される。タグは、コンタクトリーズンとも言い換えられる。

 関連するFAQを1ページにまとめて掲載する“まとめページ”も作成。「FAQは簡潔に表示するべき」という常識を覆す施策だが、好評だという。