2019年8月号 <CS戦略>

Sansan事業部サポート部 村松寿彦氏(左)と野口ゆふ氏(右)

<コーナー解説>
カスタマーサービスに注力し、コールセンターやWebサイト、アプリなどを有効活用し成長している企業のキーマンに戦略を聞きます。

Sansan

「問い合わせゼロ」のサービスを目指す

企業プロフィール

設立:2007年6月11日
資本金:28億1250万円
事業内容:クラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売

 クラウド名刺管理サービスという市場をイチから開拓し、急成長を遂げたSansan(東京都渋谷区、寺田親弘代表取締役社長)。撮影した名刺情報をクラウド上に保存し、組織横断的に管理できる「Sansan」のユーザーは契約件数にして約6000件、個人向けの「Eight」のアクティブユーザーは約230万人にも達している。

 Sansan事業部サポート部の村松寿彦氏は、「現在1カ月あたり約1000件の問い合わせを7人で対応しているのですが、この既存のお客様からの問い合わせを限りなくゼロに近づけることが目標です」と話す。

 顧客対応を担うサポート部門のミッションとしては一見、矛盾しているようだが、この根底には「サポートもSansanというプロダクトの一部」という、プロダクトファーストの考え方がある。プロダクトの完成度が高まれば、顧客に問い合わせという手間を強いることはない──つまり「エフォートレス」の完成形を目指すということだ。

 現段階では、目標に向けたステップとして適切なFAQの構築とチャットボットの完成度向上に取り組んでいる。具体的には、「FAQのページビュー数を常に確認し、見られていないものを精査、顧客が必要な情報に辿り着きやすい構造に改善しています」(Sansan事業部サポート部の野口ゆふ氏)と、日々の改善活動に余念がない。なお、サポート部門の担当領域は、対応の質を高めるという意味でも、あくまでも「製品の仕様に関するもの」で、契約や活用促進に関する問い合わせは速やかにカスタマーサクセス部に共有、連携している。

 問い合わせ対応のチャネルは、ほとんどがメール(Webフォーム)だ。内容は「ログインできない」「(名刺情報の)データ化に関すること」「名刺を読み取るためのスキャナーに関すること」などで、顧客が自己解決できるコンタクトリーズンが多い。

 そこで、2019年2月にチャットボットを導入した。対応範囲はFAQで公開しているものすべてで、現在の回答精度(正答率)は65%程度だ。同社の正答率は、顧客に対する「解決しましたか」というアンケートだけではなく、「チャットボットの回答が正しいFAQコンテンツなのか、目視でチェックする」(村松氏)というもので、この定義ならば正答率はかなり高いといえる。また、「チェック結果をチャットボットの教育に活かす」(野口氏)ためにも、理にかなった手法だ。

 顧客にとって問い合わせする必要のない環境──エフォートレス環境を整えることで、顧客満足度と生産性の向上を一挙に果たすことができる。日々、活用するBtoBのプロダクトであるがゆえに、ユーザーにとってサポートいらず、手間いらずのツールは解約する理由が限りなくゼロに近づく。結果、サポート手段としては「テックタッチ」の追求こそが、既存顧客のリテンション、つまりカスタマーサクセスにも貢献するといえそうだ。