2019年6月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

カスタマーサクセスは本質を理解して取り組もう

ISラボ 代表 渡部弘毅

 コンサルティングで支援しているお客様が出世することに大きな喜びを感じる、わたちゃんです。ご支援するクライアントの業績が上がると、より達成感を感じます。

 SaaSなどのサブスクリプションモデルのクラウドサービスを提供している企業を中心に、「カスタマーサクセス」というキーワードが盛んに使われるようになりました。また、「カスタマーサクセスマネージャー」という職種がシリコンバレーあたりでは花形職種になっているようです。

 こうした考えや職種が登場した背景には、従来の売り切り型ビジネスモデルと違い、サブスクリプションモデルでは離反防止が収益上、最も重要成功要因であり、従来のアフターサービスという域を超えた離反防止を目的とした活動を展開していこうという考えがあります。いわばロイヤルティ向上活動の一環と言えるでしょう。そんな中で、SaaS事業者にとっての本質的な離反防止策とは、SaaSを使っていただいている企業が機能を十分に使いこなして、その顧客の事業価値の向上を支援することです。すなわち顧客の成功を支援する──よってカスタマーサクセスという言葉に、その行動や理念が集約されてきました。

 そして、カスタマーサクセスを実行するには、従来のカスタマーサポートのようにインバウンド対応でお客様のお困りごとを解決するだけではなく、能動的にSaaSの使い方を提案し、使いこなすための技術視点やコンサルテーションを実施する部隊を作ることが重要で、その役職がカスタマーサクセスマネージャーということになります。結果的に、お客様が成功(サクセス)し、SaaSの離反率低減やリピート率向上など、アップセルが奏功して収益貢献できるという考えです。

 しかしながら、こうした素晴らしい考えも、間違った解釈で導入されるケースが見られます。収益面の目標である離反率低減やリピート率、アップセルというKPIや、能動的にお客様に対応するという言葉だけにとらわれてしまい、カスタマーサポート部隊をリテンション営業部隊に変更してしまう事例です。結果、今までの「応答時間」や「満足度」といったサービス品質のKPIが消え去り、「提案率」「オーダー率」「アップセル率」といった営業系指標が多くを占めるようになります。これでは「カスタマーサクセス」ではなく「自社のサクセス」だけを狙った押し売り営業部隊の強化にすぎません。結果、カスタマサポートの品質が下がり、離反率が上がることが予想できます。

 最近ではSaaSベンダーだけでなくコンシューマ相手のビジネスでもカスタマーサクセスというワードが使われ始めていますが、本質を見極めた導入や組織作りに注意が必要です。

 ということで、わがコンサルビジネスにおいても、しっかりとカスタマーサクセスの意義を定義してお客様の成功の結果、自分の事業の成功もあるということを肝に銘じたいと思います。

図 カスタマーサクセスを実現する組織運営とは

図 カスタマーサクセスを実現する組織運営とは

(出典:「カスタマーサクセス」英知出版)