2019年5月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

わたちゃん

ブームを起こすだけではファンは創れない

ISラボ 代表 渡部弘毅

 10代の頃は桜田淳子なら一緒に青い鳥を見つけに行きたい、20代の頃はいくら若い子が好きでも森高千里ならオバサンになっても絶対ドライブに連れていきたいと熱狂的に思っていた、わたちゃんです。

 自社の商品やサービスでブームを起こすことは、一気に収益を向上することが期待できます。最近はSNSの浸透によりブームを起こしやすい環境が整い、マーケッターのミッションが「ブームを起こすヒット商品」の創造になっている企業も少なくありません。

 しかし、ブームによる熱狂顧客の冷め方が早いことは、過去の事例を見ればわかります。社会現象にもなり、テレビアニメなどとの相乗効果によって爆発的な売り上げを記録した「妖怪ウォッチ」は、ピークの2015年から2年間で5分の1まで売り上げが下降しました。米国から鳴り物入りで参入し、行列の絶えることのなかったドーナツ店はブームが去った後に大量の店舗を閉鎖せざるを得ませんでした。また健康ブームに乗じて一時的に爆発的に売れたトクホ関連飲料などは新たな健康関連の話題が登場するたびに、顧客離れの苦境を味わっています。売り上げに対応した設備投資が必要な事業ではこうしたブームは、むしろ致命傷にもなりかねません。

 このような事例があるにも関わらず、一発当てる魅力が忘れられないのか、「100発中1発大当てすれば回収できる」といったプロダクトアウト的な思考で事業展開している企業は少なくありません。しかし、こうした企業は長続きしないものです。

 「熱狂顧客」と「企業のファン」は異なります。熱狂顧客は一時的なブームで獲得できるかもしれませんが、ファンは長い時間をかけて、お客様との関係性を構築して創り上げるものです。

 もちろん、マーケティング手法も違ってきます。ブームによる熱狂顧客を獲得するためには、商品の価値を、新規も既存も関係ない新しい顧客と捉えてアプローチします。すなわち市場に大きな網を仕掛ける、狩猟型のマーケティング展開をするイメージです。

 これに対し、ファンを創るには、既存顧客の維持が重要です。絶え間ない対話を繰り返し、お客様と「お互いの価値の共創関係」を築き上げなくてはいけません。すなわち、長い年月をかけて育成していく農耕型マーケティングと言えるでしょう。このやり方は従来のマーケティング・マネジメントと一線を画した「ロイヤルティマネジメント」と言うべきです。言い換えれば、ブームを創り出そうという発想ではなく、たまたま市場のブームで獲得できた顧客を「本当のファンにするためにどうすればいいか」を考えることが重要なのです。

 ということで、最近の森高千里の復活に対して自分は若いころのブームに乗じただけなのか、それともファンなのか自問自答しています。ジュリーのファンも似たような気持ちなのかな。

図 熱狂顧客とファンの違い

図 熱狂顧客とファンの違い