2019年5月号 <事例研究>

事例研究

KDDI

『スキマ時間に受けるサポート』がCXを高める
チャットとSMSを軸としたチャネル戦略

問い合わせずに自己解決を望むユーザーが増えるなか、Webサポートの拡充は、効率化のみならず顧客体験(CX)の観点から重要性が高まっている。KDDIはKDDIエボルバと協働でチャットサポートを整備。よりパーソナルな問い合わせに対応すべくメッセージ機能も導入した。電話よりも高い顧客満足度を維持する同社のオムニチャネル戦略を検証する。

 スマートフォン(以下スマホ)の普及により、顧客はいつでもどこでも疑問に感じたことをすぐに検索できるようになった。

 KDDIがスマホユーザーの実態を独自に調査したところ、「7割以上の顧客が、何らかの疑問が生じた際、電話をかける前にWebで自己解決を試みている」ことが分かった。つまり、自己解決できる環境を整えることが、問い合わせという手間から顧客を解放させ、カスタマー・エクスペリエンスも向上するという仮説が成り立つと言える。そこで、同社は手始めに2015年、チャットセンターを開設しWebサポートの強化を図った。

 まず、2015年4月から試験的に有人チャットを開始し、2016年の10月からチャットボットも導入した。

 現在、1日あたりのチャットでの問い合わせ件数は約2000件にのぼるが、そのうちの半数はボットのみで完結している。KDDIのカスタマーサービス推進部 WEBコンタクトグループ リーダー 早瀬美樹氏は、「これが本来なら入電していた問い合わせだと考えると、かなりのコール削減につながったと実感します」と話す。

 有人対応の履歴を機械学習させるなど、ボットの育成も有人チャットの運営を受託しているKDDIエボルバが行っている。KDDIエボルバ au Engagement TEAM SVの遠藤夏実氏は「チャットの解決率をいかに可視化し、改善サイクルにつなげるかが今後の課題だと認識しています」と説明する。

 問い合わせの中には、個人情報を伴うパーソナルな問い合わせも多い。こうした問い合わせは“なりすまし”を防ぐためチャットでは対応していないが、より手軽な問い合わせ手段としてSMS(ショートメッセージ)での対応も開始した。顧客の状態や契約内容を理解したうえで寄り添った回答が可能になる。

 また、メッセージ対応の顧客満足度は電話対応よりも15%ほど高い。電話対応と違い、メッセージならいつでも問い合わせを送ることができ、スキマ時間で回答を確認することが可能だからだ。また、問い合わせ受け付け時の自動返信に、「回答時間の目安」を記載していることも待ち時間のストレス軽減に寄与している。

 さらにVOCを収集するうえでも、比較的高齢者層からの問い合わせが多い電話窓口と異なり、チャット窓口はコンタクトする顧客層がスマホユーザーの年齢層と類似しており、偏りがあまりないことから、より実態に即した分析が期待できる。早瀬氏は「チャット対応を通じて得られるVOCを、より最適なカスタマー・エクスペリエンスを生み出す資源にしたい」と、チャット導入に新たな意義を見出している。

(左)KDDIエボルバ au Engagement TEAM SV 遠藤夏実氏(右)KDDI カスタマーサービス推進部 WEBコンタクトグループ リーダー 早瀬美樹氏

(左)KDDIエボルバ au Engagement TEAM SV 遠藤夏実氏
(右)KDDI カスタマーサービス推進部 WEBコンタクトグループ リーダー 早瀬美樹氏

図 CX向上への取り組み

図 CX向上への取り組み

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Center Profile

センター

2014年、山形市(みはらしの丘)に約500席規模のセンターを開設。2015年から有人チャットセンター「au Engagement TEAM」として、運用を開始した。80席以上を有するチャットセンターとして、「AI+有人チャット」のハイブリッド型サポートを展開している。休憩用のカフェテリアも完備している。