2019年4月号 <特集>

特集扉

「おもてなし」のカタチが変わる!
“エフォートレス体験”のススメ

Part.1 <現状と課題>

ベストサービスから「ジャストサービス」へ
“個別の期待値”に応えるチャネル戦略の要諦

丁寧な口調に基づいた「おもてなし」。その提供が体験価値を向上するシーンは確かに存在する。しかし顧客は、ときに「人を介さないで問題解決できる手段」も求めている。真の「おもてなし」とは、“いつでも、どこでも、正確かつ迅速に目的を達成できる手段を用意すること”であり、その実現には、最も顧客の「不快な体験」を理解しているコールセンターのリーダーシップは欠かせない。顧客に手間や不便をかけない接点──“エフォートレス体験”の提供を検証する。

 図1は、編集部が毎年、実施している「コールセンター利用者調査」において、「コールセンターに電話する前に、その会社のホームページで“よくある質問”などを調べましたか?(直近のケース)」という設問への回答をまとめたものだ。実に70%近い回答者が、企業のホームページを調べたうえで、解決できない/目的を達成できないから電話に手を伸ばしている。なお、同調査の回答者は、約63%が50歳以上が占める。

 顧客からの電話に対応することはコールセンターの最大の役割だが、顧客にとっては、電話をかけるという行為そのものがすでに“不快な体験”となっている可能性は高い。コールセンターは、その不快な体験を真っ先に把握でき、かつ共有の起点として位置付けるべき部署だ。

 従って、顧客に手間や面倒、つまり「苦労」をかけない“エフォートレス”な体験を提供するには、コールセンターが陣頭に立ち、すべての顧客接点の司令塔となる「マネジメントセンター」の役割が求められる。

図1 電話をかけるまでの「顧客体験」

図1 電話をかけるまでの「顧客体験」

※画像をクリックして拡大できます

Part.2 <ケーススタディ>

カスタマージャーニーを想定して築く
“手間をかけないサービス”の先進事例

かかってきた電話に過不足なく対応し、VOCを共有する──コールセンターで当たり前のように実践されている運営モデルだが、“カスタマー・エクスペリエンス”を重視するならば、「電話の前」、つまり電話以外の手段をより強化する必要がある。航空会社、運輸、証券といった比較的緊急性が高い問い合わせ比率が高い業種における“手間をかけない接点”の構築事例を検証する。

CASE STUDY 1:スターフライヤー

CXをアプリで向上
“最初の体験”を重視してホーム画面に残る!

 福岡県・北九州市に本社を置く航空会社、スターフライヤー。北九州/福岡空港の発着便を中心に、国内外の8つの空港を結んで就航している(2019年3月現在)。

 2018年9月、同社はマイレージ会員プログラム「STARLINK MEMBERS」を刷新するとともにスマホアプリを正式リリースした。予約から搭乗(空港、機内)、到着地に至るまでのすべてのカスタマー・エクスペリエンスにおいて、アプリを介したさまざまなサービスを提供している。

 構築にあたり重視したのは「シンプルな導線」だ。例えばログイン後のトップ画面で表示されるのは、IDとマイル、名前といった会員証のみで、タブ表示も搭乗予約(My Flight)、クーポン、フライト一覧だけ。数多く利用した顧客向けのプレミアム制度「ベガ会員」の画面には、これに「チャット」のタブが設置されている(画面)。

 アプリの開発に際しては、ユーザーインタビューを繰り返し実施した。ビジネスユーザーと帰省・レジャー目的、あるいはロイヤルティの高いユーザーと他社と併用しているユーザーなど、さまざまな顧客層を対象にした。

 顧客に手間をかけさせないという志向は、Webサイトやチャット対応などでも徹底されている。

ホーム画面はシンプルさにこだわった

ホーム画面はシンプルさにこだわった

CASE STUDY 2:ヤマト運輸

「受け取れない」「長く待つ」
マイナスのCXを減らすサービス設計

 ヤマト運輸では、クロネコメンバーズ会員向けの各種サービスで“エフォートレス体験”を追求している。クロネコメンバーズとは、あらかじめ住所や名前を登録しておくことで荷物が届く日時の通知を受けたりWebやLINEで再配達依頼ができるサービスだ。2007年から開始、登録ユーザー数は約2000万人におよぶ(2019年3月現在)。

 サービスの開発メンバーは7名でそのうち4名が女性だ。日中、仕事をしていて荷物が受け取れない、帰宅後のリラックスしたい時間帯に配達員を待たなければならないなど、自分たち自身の顧客体験を新サービスの設計や改善に活かしている。例えば、荷物を受け取るまでの体験には受け取るたびに時間指定や再配達依頼を行わなければならないというストレスもあることに気が付き、受け取りが可能な曜日や時間帯、受け取り方法をあらかじめ登録できる「Myカレンダーサービス」機能を提供開始した。

 荷物の受け取りという日常的なCXであるからこそ、より具体的なイメージが可能となる。同社のサービスは、そうしたきめ細やかなイメージや想定をベースに進化を続けている。

配達時間を視覚化しわかりやすさを追求

配達時間を視覚化しわかりやすさを追求

CASE STUDY 3:SMBC日興証券

LINE、Webチャットで正確・迅速に対応
電話を超える“手間いらず体験”を提供

 SMBC日興証券では2016年以降、LINEやアプリを使ったセルフサービスの活用を進めている。

 まずは1年間、有人対応で試行錯誤しながら運用し、チャットにはどのような問い合わせがあり、どうナビゲーションすれば解決に導けるかを分析したうえで、チャットボットの想定シナリオを作成。2017年から、口座開設やマイナンバー告知手続き問い合わせなど5つのコールリーズンに絞ってチャットボットのサポートを開始した。

 チャットサポートを充実させるとともに、照会機能の高度化も進めており、2017年には日経平均などの指数や株価などを照会できる機能をAPI化してLINEに実装。2018年にはリアルタイム株価照会も可能になった。

 LINEの友達登録数はすでに約5万人におよぶ。既存顧客がLINEやチャットにコミュニケーションチャネルをシフトするケースはまだ少ないが、新たなチャネルは新規顧客層の獲得に確実につながっている。今後は、プッシュ通知機能なども積極的に利用して、よりエフォートレスなCXを追求する方針だ。

図2 Web/LINEサポートサービスの進化の流れ

図2 Web/LINEサポートサービスの進化の流れ

※画像をクリックして拡大できます