2018年12月号 <インタビュー>

岡田 大士郎 氏

「育てる」よりも「育つ」環境づくり
“幸福働”の追求が人材育成の限界を超える

岡田経営戦略研究所 幸福価値創造コンサルタント
岡田 大士郎 氏

“働き方改革”の実現は、イノベーションを伴う。そのためには、“監視型”マネジメントから脱却し、「社員1人ひとりが自律的に働く環境を整えることが必要」と岡田大士郎氏は強調する。残業が慢性化していたゲーム会社の風土を変えた実績をもとに、“幸福働”を提唱する同氏に話を聞いた。

Profile

岡田 大士郎 氏(Daishiro Okada)

岡田経営戦略研究所 幸福価値創造コンサルタント

日本興業銀行(現・みずほ銀行)で投資銀行業務や国際税務業務を20年にわたり経験後、ドイツ銀行グループで国際税務統括の業務に従事。2005年にスクウェア・エニックスに入社し、2007年まで米国Square Enix, Incの社長(COO)として米国事業に携わった後、2007年に本社に帰任。2018年より現職。

──幸せを実感できる働き方、「幸福働」を提唱されるに至った背景を教えてください。

岡田 長い間、銀行やファイナンスの分野で働いてきたのですが、そこから離れ、ゲーム業界の総務部門に関わることになりました。ゲーム開発はスピード勝負のため、“超長時間労働”が当たり前の風土があり、メンタルヘルスを含む社員の健康管理が課題でした。そこで、総務部門としてとくに力を入れたのがストレスケアです。長時間労働の是正は簡単には進みませんから、たとえ緊張状態が長時間続いたとしても、すき間時間にうまくリラックスできる環境を構築しました。結果、ES(従業員満足)の向上や離職率の改善に加え、パフォーマンスも上がり業績向上にもつながりました。独立後は、この経験をもとに、社員が幸福感を感じながら自律的にワクワクして働くための環境を構築する支援を行っています。

──「自律的に働く環境」について、詳しく教えてください。

岡田 「仕事をやらされている」と労働に対しネガティブな感情を持つ社員よりも、自律的に働く社員の方が多くのアイデアを生み出し、パフォーマンスが高まる傾向があります。自律的に働ける社員を増やすには、監視するマネジメントではなく、働き方に裁量を持たせたり、集中とリラクゼーションを自身でコントロールできる環境が必要です。従来型の人材育成では、そうした社員を育てることはできません。新人研修は必要ですが、一定レベルを超える成長を促すには、社員を枠にはめるのではなく、個々人のスタイルを尊重する方が有効です。とくにゲーム業界のような技術が日進月歩する業界では、若い世代の方がリテラシーが高い傾向があります。年長者のやり方を押し付ける教育は、若い世代の成長を阻みかねません。「人を育てる」よりも「人が育つ」環境づくりが必要なのです。働き心地や働く意欲、働く喜び、働く楽しみは、空間の演出でも醸成することができます。

(聞き手・石川 ふみ)
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2024年01月31日 18時11分 公開

2018年11月20日 00時00分 更新

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