auじぶん銀行 堀野 和明 氏

2026年10月号 <インタビュー>

堀野 和明 氏

auじぶん銀行
執行役員 CS本部長 兼 CS企画部長
堀野 和明

(Kazuaki horino)2000年よりCS業界に参画。品質管理・チームビルディングを軸に金融数社で、VOCを起点としたWebのUI/UX改善、問い合わせ削減、現場オペレーション高度化までを一貫して牽引し、企業ブランディングに貢献。ESからCSへ、そしてCX/LTV向上と業務効率化の両立を実現してきた実践知を強みとする。2020年、auじぶん銀行入社。

“受け皿”から“事業の起点”へと転換目指す
VOCを経営につなぐCS組織への変革

ネット銀行の利用者層は広がり、顧客接点のあり方も変化している。自己解決を促す一方、そこで生じる“つまずき”や潜在的な不満を捉え、事業改善につなげる役割がCSには求められる。「CSは企業の中核を担うべき」と強調するauじぶん銀行 堀野和明氏に、CSを事業活動の“起点”へ変える組織づくりについて聞いた。

──ネット銀行を取り巻く環境はどのような状況にありますか。

堀野 ネット銀行は、新たなフェーズに入っています。かつては、デジタルリテラシーが高く、オンラインで手続きを完結することに慣れたお客様の利用が中心でした。しかし、スマートフォンやキャッシュレス決済が生活に浸透し、ネット銀行を利用する層は拡大しています。そのため、デジタルへの習熟度や金融知識の格差も生じており、求めるサポートも多様化しています。そうなると、「ネット銀行だから、すべてデジタルで自己解決をしていただく」という発想だけでは、お客様の満足は得られないようになっています。

 だからといって、Webやアプリを充実させれば、それだけで顧客体験が良くなるわけでもない。電話、Web、アプリ、FAQ、チャットといったチャネルを一連の顧客体験として捉え、どこで迷い、なぜ自己解決ができずに問い合わせへ至ったのかを見ていく必要があります。

──カスタマーサポートの役割も変わっていますか。

堀野 ネット銀行は実店舗がないため、お客様と直に接することが基本的にはありません。だからこそ、お客様が何に困り、商品やサービスをどのように感じているのかを把握するカスタマーサポート(CS)の役割は非常に大きい。

 それゆえにCSは、企業の中核を担うべき組織だと常々考えきました。問い合わせに回答するだけではなく、お客様を理解し、その情報を事業に還元する組織になるべきです。コンタクトセンターでは、応答率や平均処理時間といったKPIがあります。重要な指標ではあるものの、そのままでは経営陣にはCSの価値は伝わりにくいでしょう。問い合わせの背景から課題を発見し、Webやアプリ、商品、業務プロセスの改善につなげる。そこまでを担えて初めて、企業価値に貢献する組織になると考えています。

顧客接点を一元化
「シフトレフト」を推進

──この考え方は、CS本部の組織設計にも表れていますね。

堀野 お客さまセンターを有するCS本部は、有人対応はもちろん、WebやアプリのUI/UX、VOC(顧客の声)収集や改善と、顧客接点に関わる事柄に網羅的に携わっています。これは、お客様から見れば、電話もWebもアプリもすべてが「auじぶん銀行」だからです。社内の担当が分かれていることで部分最適になっては、一貫した顧客体験は作れないと考えるためです。

 そこで重視しているのがシフトレフトです。早期に問題を解決し、エフォートレスな状態を作る。つまり、問い合わせが発生してから効率よく対応するのではなく、その手前で問題を解消する。Webが分かりにくければ改修し、手続きが複雑ならプロセスそのものを見直す。FAQで解決できるのであれば、そこへ誘導する。問い合わせを減らすことも、サポートの重要な成果だと考えています。定型的な問い合わせが減れば、そのぶん複雑な相談や、お客様1人ひとりのご事情をくみ取った応対に時間を充てられます。CSの仕事を、“電話を受けること”ではなく、“顧客体験を良くすること”と捉えることが重要です。

──改善の起点がVOCでしょうか。

堀野 VOC活動に注力してきたものの、人の手による運用には限界もありました。そこで生成AIを活用し、これまで見過ごされていた声も捉えられる仕組みを整えました。中でも“潜在的不満”を重視しています。「Webを見たが分かりにくく、すぐに手続きをしてほしかったので電話した」というお客様がいたとします。この場合、応対履歴には手続き内容のみが記録され、“Webが分かりにくかった”という重要な情報が落ちてしまうこともあります。しかし、そこにこそ、CXの観点で改善すべきペインポイントがあります。現在は、AIを使い、会話全体や文脈から、こうした小さいながらも重要な事象を抽出できるようになりました。VOCの分類だけではなく、Webページや業務フローのどこに課題があるのかを推定し、改善の示唆をAIから得ることも行っています。AIはあくまで気づきを与える存在にとどめ、最終的な判断は人が担います。

「顧客の声」を翻訳する意義
経営判断に使える情報へ変換

──全社でのVOC活動も特徴ですね。

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会員限定2026年09月20日 00時00分 公開

2026年09月20日 00時00分 更新

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