「コールセンター大好き人間」のつくり方 第3回

2026年5月号 <「コールセンター大好き人間」のつくり方 ──人と組織が自然に強くなるマネジメント術>

池田浩一

実践編

第3回

苦情・トラブル対応が苦にならない!
感情を「察する・整える」スキルの育成術

コールセンターの電話応対は、顧客への共感とホスピタリティを表現し続ける「感情労働」という、特殊なお仕事です。感情労働の性質を正しく理解し、そのためのスキルを磨くことができれば、クレームなどの難しい電話応対が得意になり、楽しくなっていきます。今回は、オペレータの感情労働に関する能力を向上させるためのトレーニングについて見ていきましょう。

PROFILE
ブランニューデイ 代表取締役
池田浩一
コールセンター専門のコンサルタントとして、350社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。コールセンター従事者のためのeラーニングサービス「BIZTEL shouin」、無料ビジネススクール「BIZTEL大学」の講師としても活躍する。

 「感情労働」は米国の社会学者によって提唱された概念で、もともとは客室乗務員(CA)が常に笑顔で接客し、丁寧な対応を行うことが求められている点に着目して生まれた言葉です。感情労働を行う代表的な職業として、ホテルスタッフや看護師などとともに、コールセンターのオペレータも挙げられます。ただし、声だけでお客さまの感情を察したり、共感を示さなくてはならない点で、他の職業と比べても特異な仕事といえるでしょう。

 さて、感情労働には2つの側面があると私は考えています。1つは「お客さまの感情」、もう1つが電話を受ける「自分の感情」です。

 コールセンターでは「お客さまの感情」を察知し、寄り添う対応が求められます。このスキルを高めることによって、苦情を上手に対処できることはもちろん、感じの良い接客ができるようになり、顧客満足度も向上します。

 また、こうした対応をするためには、大前提として「自分の感情」が整っていることが不可欠です。自身がイライラしてしまっていたら、とても相手の気持ちを落ち着かせることはできないでしょう。

 お客さまの感情と、自分の感情。この両方を整えられるようになるためのトレーニングについて紹介したいと思います。

図 感情労働スキルを高める3つのポイント
図 感情労働スキルを高める3つのポイント

お客さまになりきるロープレで
感情を理解する

 1つめは、お客さまになりきるロールプレイ(ロープレ)です。

 2人1組となり、苦情電話のお客さま役とオペレータ役を交代で行います。ロープレをやる前は、「こんなの意味ないよね」と半信半疑の人もいるのですが、実際にお客さまになりきると、なぜ怒っているのか、どうしてほしいと思っているのか、その感情を理解できるようになります。相手の感情が分かれば、次にどういう言葉をかけたらいいのか、どう接すればお客さまが落ち着くのか、その道筋が見えてきます。

 アルバイトでオペレータの仕事をしている役者さんや声優さんは、苦情対応が上手なケースが多いのですが、それは彼らが相手の立場になりかわり、感情を理解できる能力を持っているからです。ぜひ皆さんもお客さまになりきって、感情を察知する力を高めてください。

お客さまをイメージする力と
メタ認知能力を高めるワーク

 ロープレと同様に、クライアント先で私がよく行っているのが「想像力ワークショップ」です。3人1組で苦情電話の録音を聴き、お客さまの表情や年齢、好みなどを自由に想像して言い合います。正解はありませんので、当てずっぽうで構いません。それでも相手のことを想像し、理解しようとすることで、感情察知能力を鍛えることができます。

 このワークショップを実施すると、相手のことがまったく思い浮かばないという人が一定数でてきます。そうした方は、得てして苦情対応が苦手なことが多いです。しかし、それは相手の状況や心境をイメージする脳を働かせてこなかっただけのこと。ワークショップで刺激を与え、回答を褒めてもらうことで、どんどん活性化していきます。他の人が10個挙げている中で、その人が1〜2個しか言えなかったとしても、それで十分です。徐々に相手の感情を察知できるようになり、苦情対応も上達していきます。中には、このワークでコツをつかみ、直後に受けた苦情にうまく対処して、お客さまから「ありがとう」とお礼まで言われた方もいたほどです。

 このワークショップにはもう1つ、感情労働をするうえで大切なある能力を高める効果があります。それは「メタ認知能力」です。

 メタ認知とは、自分の思考や心情を客観的に把握することを指します。この能力を高めると、例えば、お客さまに電話口で怒鳴られた際に、一歩引いた位置から自分の感情を俯瞰できるようになります。すると、気持ちに余裕が生まれ、ワークショップの要領で相手を想像・分析し、「きっと嫌なことがあったから、機嫌が悪いんだな」などと思いを巡らせて、ダメージを和らげることができます。苦情対応によるストレス軽減はもちろん、自分自身の感情を整えて適切な対応をするうえでも、重要なスキルといえるでしょう。

感情労働の基礎固めは
eラーニングを活用して効率化

 コールセンターにおける感情労働には、音声だけのコミュニケーション特有のさまざまなスキルが求められます。話をしっかり聴き、想いを受け止めていることが相手に伝わるような相槌のうち方。お客さまの気持ちに寄り添った声のトーン、間の取り方。お客さまの意に沿わない話をする際に、こちらの心苦しさを伝えるクッション言葉などなど。管理者やSVは、電話で感情労働をするための基礎をオペレータに指導しなくてはなりません。

 『BIZTEL shouin』といったコールセンター向けのeラーニングでは、こうした電話応対のテクニックを網羅的に学習することができます。日々の顧客対応に追われ、オペレータに基礎的な研修をする時間がとれないセンターも多いと思いますので、ぜひ便利なツールを有効活用しましょう。

 感情労働のコツを掴んで大きく化けたオペレータを、これまでたくさん見てきました。オペレータが相手の心も自分の心も整えられるスキルを身につけ、イキイキと働ける環境をつくっていきましょう。

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会員限定2026年04月20日 00時00分 公開

2026年04月20日 00時00分 更新

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